最終回 最高の時間を、これからも

「すごいのう。パスタ自体はわしの国でもあるが、それをこんな風にテイストするとは──さすがだぞい」


「ありがとうございます」


 シチリナの国王様もとても喜んでくれた。とっても作った甲斐がある。とても、誇らしい気分になった。


 それから、数種類の肉をごちそうしてからデザートとなる。

 待っててね、デザートもとても美味しいものを用意したつもりだから。



 そして、キッチンで最後の味付けをして──完成したものを客人たちのところへ持っていく。


「おおっ、デザートはシフォンケーキか。これも何か、アレンジしてるのか?」


「それはたべてみればすぐにわかります」


 そう、デザートは生クリームがのっているシフォンケーキだ。シフォンも生クリームも甘さのバランスを考えて3人で研究を重ねて作った。

 基本にしたのはどこにでもあるシフォンケーキ──なのだが。



「この、焦げ茶色の塊は何だ?」


 ミッテランが不思議そうに尋ねてきたので、笑顔で答えた。やっぱり、すぐに気が付いちゃうよね。


「これは、小豆という倭京で食べられているお菓子です」


 にっこりとした笑顔で言葉を返した。そう、これが最後の私たちが出した工夫。


 甘い小豆と、脂ののった生クリームの相性がぴったりだということに気が付いた。そして、こってり系のクリームを作っておいしくなるように味を合わせたのだ。初めての食材でうまくできるか不安だったが、しっかり作れて本当に良かった。


 後は、こっちの人たちの舌に合うかね──ちょっとドキドキ。


「うん、相性抜群ね」


「最高の味じゃ」


「甘い小豆と冷たいアイスが最高にマッチしているな」



 みんなが美味しいって言ってくれた。

 周囲の反応も抜群。みんな、美味しそうに食べている。初めての味に大丈夫かなって思ったけど、喜んでくれて本当に良かった。


 やっぱりみんなが美味しく召し上がってくれると、こっちも頑張って作った甲斐があったなって感じる。これからもこんな風にたまには素敵な料理を作っていきたい。


 そして、時間がたって食事の時間が終了。みんなが食事を終えたことを確認してから笑顔でパンと手を叩いた。



「これにて食事は終了となります。皆さん、ありがとうございました」


 そう言って、コルルとヒータと目を合わせてからアイコンタクトをとる、そして3人同じタイミングで頭を下げた。


 どうだったかな……色々と冒険してしまった所もあって、舌に合わなかった人がいたことも十分にあり得る。


 みんなが美味しく食べてもらえたらいいな。

 そう考えていると──。


 パチパチパチパチパチパチパチパチ──。


 この場一帯に響き渡る拍手の音。予想もしなかった拍手の量に、思わずきょとんとなる。


「ど、ど、どういうこと???」


 状況が読み込めないでいると、ミッテランが話しかけてきた。


「どうもこうも、素晴らしいの一言だったよ」


「そ、そう?」


「その通りだアスキス」


 お父様も、ご機嫌な様子で行った。それじゃあ成功ってこと?


「美味しかったぞ。この間とはお違いだな」



「私も思いました。よくこんな料理が出来ましたね。とても素晴らしいの一言です」


 それ以外にも称賛の言葉の数々。あまりに嬉しくて、目頭が熱くなった。

 私の苦労──報われたんだ。よかった──。


 そのまま、ヒータとコルルに抱き着く。


「な、な、なんな何なのよいきなり」


「だって、嬉しいんだもん!! みんなの努力が報われて!!」


「まあ、今はいいですよ──心から喜びましょう」


 嬉しそうに抱き合う私たちを、周囲の人たちは喜んで見ている。中には「あら~~^」なんて言ったりする人も。何の意味なのかな?? コルルは微笑をうかべて、こっちを見ている。ヒータも、最初は慌てていたけどちょっとまんざらでもない感じになっている。


「わ、わかったわよ」


「まあ、今日くらいはみんなで喜びましょう。せっかくこうしてみんなから喜ばれたんだし」


 あまりの嬉しさに、周囲の目を忘れてはしゃぐ。周囲の要人たちはそれをニヤリとした表情を浮かべていた。


「まあ、このヒータ様がいるんだから当たり前よねっ!」


「苦労しましたが、その甲斐はありましたね。色々と──作った甲斐はあると思います」


 ヒータとコルルも誇らしげな表情。やり切ったっていう気持ちがとても強い。



 しばらくじゃれあってから、再び並んで要人たちと向き合った。そして、要人たちと向き合って頭を下げる。


「私たちの料理の料理を召し上がっていただいて、ありがとうございました」


 苦労はいっぱいしたけど、作って本当に良かった。

 要人たちも、とても嬉しそうな表情。


 それを代表してか、お父さんが話始める。


「アスキス」


「ここまでよく素晴らしいものを作ったな。素晴らしかった」



「本当に、ありがとうございます」


 心からの言葉に、目頭が熱くなった。もう一度、今度は深々と頭を下げた。

 これからも、こんな素敵な料理を提供してきたい。


「それでは──次の場所へと向かう。アスキス達──今日はありがとな」


「こちらこそ、またこちらにいらしてください」


 そして、要人たちは立ち上がって世間話をしながらこの場所を出ていく。


「次は、盗品保管庫に行くんだって?」


「世界中から集めた盗品を自慢げに見せつけているあれだろ?」


「バカ言うな、中には紛争中の国もあってだな──それを保管して次世代に残しておくという意味合いだってある。すべてが略奪品というわけではない」


「わかりましたよ」


 冗談? も交えてどこか楽しそう。それくらい、いい雰囲気になってるってことかな?

 さて、こっちは片付けが待ってる。みんなで、最後まで頑張ろう。


 そして、片付けが終わって、私たちは部屋へと戻った。



「疲れたぁぁぁぁぁ──」


「はい、私もです。ちょっと横になりましょうか」


「疲れちゃったし、お昼寝タイムにしましょ」



 3人ともベッドに飛び込んで寝っ転がる。真ん中に私。

 そして右のコルルと左のヒータの手をぎゅっと握った。


「今まで私についてきてありがとう」


「いえいえ、こちらこそアスキス様と一緒にいることができて、とても充実してました。これからもよろしくお願いいたします」


「こ、こっちこそあんたと一緒にいてとても楽しかったわ。これからも、よろしくねっ。か、勘違いしないでよねっ。あんたがあまりも心配だからついて言ってるだけよっ!」


 顔を膨らませているけど、ほんのりと顔が赤くてどこか嬉しそう。

 ヒータらしい。

 陽光が私の身体に当たる。眩しくて、思わず目を覆う。お父様は、私に様々な来客対応をしてほしいと頼んできた。


 今日みたいなおもてなしを、他の場面でもしてほしいと。


 私は、快く「大丈夫」と言葉を返す。こんな素敵な時間を、他の人たちにも味わってほしいから。

 王国の素晴らしさを、みんなに知ってほしいから。


 大変そうだけど、私は首を縦に振った。これから、大変な日が続くだろう。

 時には試練のような困ったこともあったり、みんなで悩むことだってあるだろう。

 それでも私は、素敵な料理を提供していきたい。それだけじゃなく──いろんな文化を学んで、それを生かして素敵なものを提供して、発明してきたい。


 そんな私の大変で、ドキドキの冒険は──これから始まるんだ!!

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~~メシマズ国家の公爵令嬢~~ 食文化を失った国家のお姫様は、おいしい料理を作るために世界中を旅するようです 静内(しずない)@~~異世界帰りのダンジ @yuuzuru

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