第49話 帰国、それからおもてなし

「帰ってきた──!!!!」


 本当に帰ってきたのだ。


 倭京から、船で長時間の旅路。大海原で保存食中心の食事。途中、時折うちの海外領土に立ち寄る。カレーという初めて見た食べ物を頂く。

 辛みの中に独特の味。ナンという白くて長細いパンと一緒に食べるみたい。こういうのもあるんだ──。何とか、ブリタニカでも再現したい。

 それからさらに、砂漠の国などを越えて帰ってきたのだ。街並みを馬車から見るなり、思わず大声で叫んだ。両手を思いっきり伸ばして、うーーーーと力を入れた。

 灰色の空。工場の煙突からもくもくと排出されている煙。


 レンガでできた建造物。いつもは見慣れている光景だったけど、久しぶりに見るととても新鮮に感じる。


「故郷の景色って、特別な感覚があります


 王都への城門をくぐって、街中へ。様々な食品や道具が売っている活気ある繁華街を抜け、宮殿へ。



「皆さん、ただいま──」


「おうアスキス、帰ってきたか」


 お父さんは、大きく喜んで抱き着いてきた。それほど逢いたかったのだろうか──。

 そして、私たちは一度自分たちの部屋に戻った。

 一旦休んだら、すぐに準備しなきゃ。


 今までいろいろな国を旅して得たこと。学んだことを生かした──料理と絶対に作る。

 強くこぶしを握って、決意した。



「さあ、みんなで素敵な料理──作りましょう!!」


「「おー!!」」


 コルルとヒータも、喜んで賛同してくれた。さあ、行こう!!




 数日後。

 快晴の空、暖かい空気が全身を包む昼間。

 優雅な雰囲気。


 国王であるお父様の他に、我が国の主要貴族たちが集まっている。

 場所は──宮殿の最上階にある見晴らしのいい大広間。


 そう、以前各国の要人たちにまずい料理を提供して周囲からさらし者にされ、笑いものになったあの場所。

 今回は、同じ場所で再び料理を提供するということだ。それも前回のように各国の客人に対して。


 厨房に立って振り返る。両手を腰に当て、後ろにいたコルルとヒータに視線を向けた。


「今までありがとう──2人とも。これから、世界中を旅してまわった成果を見せつけてやるんだから!」


「そうですね」


「見せてやりましょう」


 コルルはやさしそうな表情で、ヒータは余裕そうに自分の髪をさらりと撫でながら答えた。そして、国王様がこっちにやってくる。


「さあアスキス、私たちに今までの旅の成果を見せてくれ。期待している」


「わかったわ」


 元気よく、自信たっぷりに笑顔を振りまいて返事をした。

 大丈夫、不思議と不安な感情はなかった。


 今までたくさんの成果を手に入れたんだもの。


 そしてコルルとヒータ。コルルはずっと私のことを想ってくれていて、ずっと隣りにいてくれた。

 ヒータは最初は私たちの事に懐疑的だったけれど、少しずつ心を開いてくれて──今ではすっかり私の理解者になった。


「じゃあ行くわよ、準備はいい?」


「はい、大丈夫です」


「彼らに、目にものを見せてやるんだから!!」


 2人ともコクリと頷いた。とても、自信たっぷりな表情。この2人となら自信を持って言える。絶対に出来るって。


 そして、あらかじめ下ごしらえしていた料理に最後の仕上げをする。





 快晴の空。王都を見渡せる大広間。

 各国の国王や外交官たちが集まる時間となった。みんながこの場に集まる。


 食事時で、みんなお腹を空かせているであろう中──大きく息を吸って「やってやるぞ」

 と意気込む。そんな時、誰かが私の肩を叩いてきた。


 誰かを想い、後ろを振り向くと──」


「お久しぶりだなアスキス」


「あっ、レイノー。あんたも来たの?」


「そう悪く言うなよ。お前には期待している」


 長身で、黒いタキシードを着た男。ミッテラン=ウェイガン。前回は散々な言われようだったが、今回はどこか機嫌がよさそう。


「この前お前たちが作った料理の評判は聞いてる。今回は期待してるぜ」


 ウェイガンはニコッと笑って、ウィンクをして言葉を返す。しっかりと期待に応えていきたい。


「ありがと、たっぷり期待しておいてね」


 それだけじゃない──シチリナ王国、バスク王国。色々な人から声を掛けられる。


「楽しみにしてるぞ」


「頑張れよ」



 中には皮肉を込めた言葉もあるかもしれない。しかし、そんなことはどうでもよかった。


 それは、しっかりと結果で返せばいいのだから。


 シチリナ王国の人とは、久しぶりの再会。「期待していてね」と一言言って強く握手。


 待っててね、もうすぐだから!


 そして、食事の時間となった。キッチンにいた私は、席に着いた要人たちを見て大きく深呼吸をして後ろを振り向く。


「コルル、ヒータ。行くわよ」


「はい」


「行きましょ」


 3人で、強く意気込んで料理を出し始める。待ってて、素敵な料理をごちそうするから。


 まず最初──数人の侍女とともに料理を出す。


 コトっと料理を置くと、人々は興味津々そうに料理に興味を示している。


「これは、サンドイッチという食べ物です」


「おおっ、確か聞いたことがあるな」


 表向きはただのサンドイッチ。

 しかし、しっかりと仕掛けは施してある。普通のサンドイッチではないのだ。


「とりあえず、召し上がってください」

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