第45話 3人の語り
そして、変わった甲冑を着た刀を持った人。(淀姫が言うには刀は和刀、人は侍というらしい)が門に立っていて、頭を下げると中へ通してくれた。
「おかえりなさいませ、淀姫様」
「おう、くるしゅうないぞ」
場内に入る。和服を着た人と何度かすれ違っては頭を下げてあいさつ。かんざしを挿していて、独特な格好。きれいで珍しいな。
そこから、大きい部屋に案内される。ここが私たちに割り振られた部屋らしい。畳と呼ばれる、黄緑色のイグサを使った特殊な床の部屋。着物を着た女の人が「緑茶」と呼ばれるこの地方でよく飲まれている飲み物を出してきた。
休憩の時間になったようなので、緑茶という濃い緑の飲み物をいただく。
「緑茶と言われる、この地方特有のお茶でござるよ」
「へぇ~~いい香り、どんな味なのかしら?」
淀姫たちから勧められ、3人で互いに見合ってコクリと頷いて緑茶を飲んでみた。
渋くて、独特の香りがしていい味を出している。
「あ、これいいですね」
「そうね、渋くていい味だわ」
同じく用意された小豆という名前の甘い餡が付いた団子と一緒に食べる。うん、やっぱり甘いものと食べると美味しい。
苦くて渋みのあるお茶ととても甘い餡子、そしてお団子が良く似合う。
ヒータとコルルも、美味しそうに食べていた。
あっという間に、団子も緑茶も食べ終わった。
「美味しかったです。ごちそうさまでした」
「素敵な料理だったわ」
「ありがとな」
いったん休憩、ここまでの事を思い出す。
後街を歩いていて思ったけど、みんな見たことがない服を着ている。花柄だったり、地味な色だったりどれも個性てきた。どんな服だろう。興味津々に見ていると、淀姫の警備をしている人がやってきて話しかけてきた。
「着物ってやつ、この地方では一般的な服よ」
「なんだか、物珍しくて素敵ね」
「そうでござる。この国特有の服じゃ」
「いいですね。こういうのを見ると、異国に来たんだなって感じがします。青と基調としたものとか、花柄っぽいものとか、個性があってどれも素敵ですね」
コルルの言葉通り。独特の文化、面白いわね。これが異国の地への旅の醍醐味よね。
それから、淀姫たちは去っていき、3人になった。これから殿様やほかの城に住んでいる人たちへの食事の準備に取り掛かるらしい。いい料理、期待してるわね。
3人になる。コルルもヒータも長旅の疲れが出てきたのか急に静かになり横になった。ふぁぁ~あ、あくびが出てくる。
畳という独特な感触の床、寝っ転がるととっても気持ちいい。2人を見ると、ゴロゴロしたりして、眠っているわけではないみたい。せっかく3人になったんだし、これまでの事とか色々話してみようか。聞いてみたいこととかあるし。
隣で寝てるヒータの手に、ちょんと触れる。冷たくて滑らかな手。ヒータは気が付いたようで、目をこすりながら気怠そうに言葉を返してきた。にっこりと笑顔を作る。
「な、何よ……」
「いや……これまで、色々なものがあったわねって。楽しい思い出、ヒータ。最初はいい顔をしてなかったけど、次第に笑顔が増えてきてさ。連れってきてよかったってホントに」
「い、い、いきなりなんなのよ! 褒めたって、何も出てこないんだからねっ!」
顔をぷくっと膨らませてかわいい。一見不満そうだけど、本当は私のことをとても思ってくれている優しい子。だから、応援したくなるし一緒にいたいって心から思える。
やっぱり、素直になり切れていないみたい。
「別にそんなんじゃないから。最初はいい顔をしてなかったのに、最後までついてきてくれて。やっぱりヒータはやさしくて周囲のことを想いやれるいい子よね」
「だから、変なお世辞はいらないわよっ。あんたが心配なだけなんだからねっ!」
「ありがと。これからもよろしくね」
「これからも、よろしくお願いいたしますね」
ヒータに満面の笑みを向ける。すると、コルルが反応してこっちを向いてきた。コルルもどこか疲れてそう。今度は、コルルに視線を向けて話しかける。
「コルルも、ずっと私についてきてくれて本当にありがとね」
「いいえ。私の方こそこんな素敵なたびに連れて行ってもらえてありがとうございます。皆さんと一緒にいた日々は、何物にも代えがたいものでした」
「それはこっちのセリフよ。コルルはいつも、周囲の事を考えてくれていて、一生懸命で。もっと欲を出してもいいのに、いつも私のことを考えてくれていて」
「いいえ、私の方こそアスキス様と一緒にいれてとても幸せです。だって、素敵な旅だったじゃないですか? いろいろな文化に触れて、素敵な料理を作って」
そう言ってくれるのが、コルルのいいところだ。これからも、コルルのことを大切にしていきたい。できれば、コルルももっと楽しんでほしい。もっとコルルのことを知って、コルルの好きなこととか、させて上げれればいいな。
「やっぱりいい旅だった?」
「はい、どれも美味しくて──素晴らしいものばかりでした」
「そうよね。あとは、その経験を生かすだけ。できそう?」
ヒータがこっちを見ながら言った。そうよね、倭京を抜けたら私たちはブリタニカへ戻ることになっている。そして、この長旅で生かしたことをみんなに発表しなきゃいけないんだ。
みんなから教わった料理で。
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