第44話 倭京へ、到着
それから、うっそうとした森に入って様々な動植物を見る。その中でとでも珍しいパンダという動物に出会った。
「すごいじゃない!」
「噂では聞いたことがありますが、本当に笹を食べるんですね──」
コルルが目を大きくしてみている先。白と黒の大きな体の動物。
それが、笹と言われるこの地域特有の形をした草を食べているのだ。
「へぇ~~かわいいじゃない」
そこから、2日ほど進むと、重陽と呼ばれる、大きな港町に到着。漢字という、複雑そうな文字を使う異文化。シューマイと肉まんという豚肉を使ったご飯もごちそうになった。
「いいですね。レシピとか教えてください」
「うんうん。よかったら貿易とかできるといいな」
この料理、何とかブリタニカでも作れそうだし再現してみたい。
馬車の旅はここまでで、ここからは大きな船に乗った旅になる。
ちなみに重陽ではアヘンを密輸入している国があるそうで、厳しいボディチェックを受けた。どこの国でしょうね? 困っちゃうわっ!
何とか身体検査を乗り越えた後、大きな海へと出ていく。大きな帆船。ジャンク帆という竹を使った独特の形をした船。
快晴の海。風は強いけど、眺めは素敵。潮の香りも素敵。
そんな地平線まで見渡す大海原の旅を続けること数日。とうとう私たちは倭京へと到着した。
「ようこそ、ここが倭京でござる」
「へぇ~~ナニコレ」
「まったく違う世界に来たみたいです」
見たことがない服装、建物、景色が一面に広がっている。初めて見る世界に目を丸くして驚く。木を使った建物がズラリと並んでいた。
「あれ知ってる、着物ってやつでしょ? かわいいわね」
ヒータが目を輝かせて指さす。白を基調とした、青の柄が入った服。確か、この国のこと知ってるんだっけ。
「とりあえず、城まで行くでござる」
「城って、こっちで言う宮殿みたいの者よね。見てみたいわ」
確かに興味あるわ。そして淀姫の部下らしき着物を着た女の人がやってきて一緒に歩き始めた。
それから、繁華街らしき賑やかな街並みを歩く。道を歩く人は、物珍しそうに私達を見ている。
木でできた小さい店。露店では、透明なスープに入った灰色で細い麵が売っていた。興味津々そうに見つめていると、女の人が話しかけてきた。
「そばっていうんです。こうして屋台で売られていて、小腹が空いたら食べるんです」
「へぇ~~」
「ちょうど小腹が空いたし、ちょっと食べてみるでござるか?」
「いいですね。どんな味をしているか楽しみです」
コルルもそう思っているんだ。初めて食べる味にワクワクして心がとても踊る。
美味しそう。どんな味なのかな? 淀姫が屋台の白い料理の服を着たおじさんに話しかける。
「大丈夫か?」
「おう、具は売り切れてるから『かけそば』しかないがいいか?」
「問題無いでござる。そば4人前お願いじゃ」
「了解!」
威勢のいい言葉におじさんは後ろにあった1人前の麺の塊を4つ茹で始めた。茶色の細い麺が湯気が上がっているお湯の中へ。
数十秒ほどたつと、茹で上がった蕎麦を網で取った。随分早くできるのね、気軽に食べられそうだわ。
漆器と呼ばれる、外側は赤、内側が黒色の木でできた容器に黒いつゆと茶色い麺が注がれた。
「ヘイお待ち、そば4人分」
「うん、美味しそう」
黄緑と白の小さい野菜、ネギというらしいんだけどそれと蕎麦が真っ黒な汁の中に入ってる。
そして、そばの上にある二つの木の棒。フォークみたいにそばを食べるのに適した物はない。これで食べろって事なのかな?
きょとんとしていると、淀姫が意図に気づいたのか話しかけてきた。
「ああ、これは『箸』でござるよ。これが、使い方でござる」
そう言って、淀姫は箸をつかんで自由自在に動かして見せた。私も見よう見まねで真似してみる。ペンを持つ形をイメージして、親指と人差し指、中指で箸をやさしく持つ。
人差し指と親指を使って、下の段の箸は固定し動かさない。上の段の箸だけを動かす。
ちょっと難しそうだったけど、みんな使えるようになった。そして、蕎麦をいただく。箸で蕎麦をつかんで、少しずつ口に入れていく。
ちゅるちゅるして、コシがあっておいしい。
「はい、いいですねこれ。香りも効いてますし」
「いいじゃない」
この真っ黒のつゆも、見た目ほど濃くなくてあっさりしていていい味。独特な香りもアクセントになっている。
食べやすいし、あっという間に食べ終わった。食べ終わって食器をご主人の方へ。
「ごちそうさまです、とてもおいしかったです」
「ありがとよ、異国の姉ちゃん」
「美味しかったでござるよ」
うん、真っ黒い汁のわりにあっさりテイストの味。魚介系の出汁が聞いていてとても美味しい。また、どこかで食べてみたいと言える美味しさね。
そして、私達は目的地へ。
お城という、石を積み重ねて作った土台に白い造りをした建物に入る。
下部分は灰色の石垣。上は真っ白の壁に大きい天守の建物。5階建てはあってこの街で1番大きい。天守の一番上に誰かいて城下町を見下ろしている。
「初めて見た、なにあれ?」
「あれは、お城というものです。あそこが私たちの住処です」
「聞いたことがあります。あれに『お殿様』ということにを支配している人が住んでるんですよね?」
「その通りでござる」
見るもの見るもの、初めてのものばかりで本当に驚かされる。
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