第43話 異国の地へ

「さっき、偶然立ち寄って食べたんですよ。照り焼きのタレがかかったチキンと、うどんという汁の中に太い麵が入った食べ物。独特な味がして、話してみたらかなり遠くの場所から来たそうで」


「そうなんだ」


「何でも、ここから東にずっと進むと倭京わきょうという異国があるらしいです。この人たちは、そこから来たとか」


「あ、うわさには聞いたことがあるわ。この大陸の果てからさらに海を越えるんでしょ? そんなところから来たんだ。すごいじゃない」


「そうなのじゃ。山や緑が豊富でいい土地でござるよ」


 そんなところから来たんだ、すごいわね。本当に別世界みたいな、私の想像をはるかに超えた場所なんだと思う。

 それにしても相当な長旅になったはず。文化も違う中で、それを乗り越えて素敵な料理を提供するってすごいと思うわ。


「ありがとでござる。でも自国の文化を伝える役目を担っていて、今回はその一環なのじゃ。よかったら来てみるか? 私達の故郷。馬車だって手配するでござるよ」


「え、いいの?」


「もちろんじゃ。ここから東に、ずっと行った場所にあるから、何週間かの長旅になるでござるかどうじゃ?」



 いきなりの話に戸惑う私。まあ、遠征の期限は決まってないしいろいろな文化を学べるならそれに越したことはない。国自体も安定していてしばらく離れていても問題はないだろう。

 何より、国交が全くない国。新しいつながりを作ることになれば、ブリタニカにだってメリットはあるはず。これは、十分行く価値はある。


 一回コルルに目を合わせてウィンクする。コルルは意図を理解したのか優しい笑みを作ってコクリと頷いた。


「ベネルクス地方から外に出るということですね──私初めてです」


「行ってみたいかも。和の雰囲気ってやつでしょ。倭京、聞いたことああるわ。行けるなんて本当に楽しみ!」


 ヒータも賛同してくれた。これで答えは決まりね。



「じゃあ、連れて行ってもらっていい?」


 信じる神様も、文化もまったく違う──あくまで噂だけど大仏って言われる大きな人が胡坐みたいな座り方をしている像とか、刀を持った「侍」という人がいるとか、未知の世界といってもいい。


 ワクワクする気持ちがある半面、うまく交流できるのかなという気持ちもある。

 このベネルクス地方は、国が違うといっても同じ文化圏で信じる神様や食文化や考え方は似通っていて交流もそれなりにある。



 しかし、今回行く場所はそこを超えた未知の場所。これまで以上に考え方や文化が異なる場所への遠征。どんな場所なんだろう。


「まったく違う文化だが──行く価値はあると思うぞい」


 初めて行く場所か──どんな場所だろう? すっごいドキドキする。


「そうね──一緒に行きましょう。とっても楽しみです!」


「ありがとう、じゃあ行きましょ!」



 ここでのパーティー、本当に楽しかった。みんなで料理の腕を競い合って、たたえあって。おかげで新たな発見やつながりだって作ることができた。


 苦労したけど、その甲斐は十分にあったと思う。エフェリーネやフラミリア、そして国王様にもまた会ってみたいな。本当に、素晴らしい時間だったって誇りに思う。

 また、こんな風にみんなに出会えたらいいな。

 そして、私たちは倭京へと向かっていく。


 まったく違う文化、どんな風景が待っているかとっても楽しみ!




 私達は、みんなに見送られる中倭京へと旅立つ。最後、店の前でエフェリーネとフラミリアと別れの挨拶をした。


「アスキス様。皆さんたちといた日は何物にも代えられない日々でした、みんなで作った料理も最高ですし、会えてよかったです」


「こちらこそ、エフェリーネさんの店も繁盛するといいですね」


 今度はフラミリア。ヒータにうっとりとした目ですり寄ってきた。


「ヒータ、また来てね! 今度来たらデートしたり、その先のことも──いっぱいしましょ!」


 そして、ほっぺをすりすりしてきた。ヒータはフラミリアを引きはがして言葉を返す。


「もう、やめなさいよそれ!」


「スキンシップスキンシップ~~」


 なんだかんだ、仲がよさそう。また、どこかで会えるといいわね。2人とも本当にいい人だった。こうして一緒に料理を作る機会が作れるといいな。色々な料理が作れて、素晴らしい時間だった。それに、2人の料理も食べて見たいし。


 そして、握手をして互いに手を振って別れた。







 シチリナ王国から馬車の旅が続く。1か月ほどの長旅。


 コルル達と一緒に、馬で数週間ほど「シルキロード」と言われる道を行く。


 大陸を縦断する交易路として栄えた道。過酷な砂漠地方など、様々な気候を超えるため、ターバンという服を着た案内する人が先頭に立って馬で道を行く。どれもいい光景。途中いただいたヤギの乳などは格別においしかった。


 森林地帯を抜けると、今度は山々が連なる山岳地帯。山を抜ければ今度は植物が全く生えない荒野。そんな道を、ひたすら進んでいく。永遠と砂の道が進んでいく道。



 それを抜けると、ステップ気候と呼ばれる道を行く。

 乾燥した砂の大地に、短草や低木が生えている独特な光景に目を輝かせる。


「壮大で、素敵な眺めよね」


「はい。とてもきれいです」


 初めて見る広大な土地に、思わず見入ってしまう。

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