第32話 みんなで、料理

「トマト、チーズ、それとさっき取ってきたミノタウロスの肉もいいですね。


「まずはステーキに使って、余ったり細かい部分をミンチにしてミートソースの具材にしてもいいかもしれないわ」


 なるほどね、話を聞いた限りミノタウロスの肉は貴重品。使えるところは全部使うってことね。


「そういう食材を無駄なくするの、素敵だと思うわ」


「ヒータの言うとおりです。確かに──食料は限られてますからね」



「ちなみに、可食部以外の内臓や皮膚の部分なども専門の職人さんに売却します。

 内臓や脳などの部分は刻んで乾燥させてから家畜たちの餌、皮膚の部分は衣類なんかに使います」


 しっかりと、そういうシステムができているのね。採れたものを、無駄にしないシステム。


 話が本題に戻って、使い食材が確定した。


 まずトマト、トマトは甘みが強い地元で採れた奴を使用。その他も先ほど、フラミリアとヒータ、コルルが市場へ行って買い付けてきてくれたやつだ。


「どれも、高級で質が高そうなものを買ってきました」


「そうよ。私とヒータで! おいしく作るわ。ね?」


「だから、ほっぺをくっつけてすりすりするのはやめなさいよ~~」



 相変わらずだ。嫌がるヒータをよそに、料理に取り掛かる。

 作るのは、エフェリーネとフラミリアがメイン。私たちは、この辺りの料理や趣向を聞きながらいろいろと手伝う。


「基本は、このオリーブオイルを使います」


「オリーブオイル……これがですか……」


 瓶に入っている、黄色に透き通ったさらさらとした油。それをコルルが興味津々そうに見つめる。確か、オリーブの果実から得られるんだっけ。オリーブオイル──この辺りで使われてるのは知ってたけど、ブリタニカにはたまにしか出回らないからとても珍しく感じる。


 それから麺。


「生麺の方が味がいいですが──高いので試食の時は乾麺にします」


「生麺は本番用。味の感覚はわかってるし」


 まあ、私たちも味自体はなんとなくわかる。本番の生麺、楽しみだな。

 さらに用意した麺を使い、別の料理を作っていく。


 カルボナーラ。クリームに、とろ~~りと伸びるチーズ。一口食べてみたが、コクがあっておいしい。いいかも!


 お肉にはミノタウロスの肉を使ったミート、これも加えてみる。

 肉自体の味もそうだけど、肉の風味がソース全体に滲んできて美味そう。


「脂がのっていて、いい味してると思う。試食が楽しみだわ」


 さらにチーズとトマトソースのパスタ、これも美味しそう。

 一応作り方も教えてもらった。食糧事情が違うけどブリタニカでも少しでも味を再現して作ってみたい。


「いけますかね?」


「おいしいに決まってるじゃない! 私たちが作るのよ!」


 ステーキをの下ごしらえをしているフラミリアが自信満々に言う。そういう自信を持っているっていうのは、嫌いじゃないわ。


 そして、パスタを煮始める。こっちは完成しそうだ。

 一方ステーキ。こっちはフラミリアとヒータが中心となって、調理に取り掛かっている。


「ミノタウロスの肉はどうする?」



「いろいろ試してみたいから、サイコロステーキみたいにしてくれる? それで、甘辛だったり塩コショウだったりいろいろ作ってみて──これだって思ったものを採用にしましょう?」


「なるほどね。じゃあみんな、腕によりをかけてつくるわっ! 私のヒータ。まずは味付け」


 フラミリアも、味付けの仕方を見ているかぎりかなりの腕前だとわかる。塩コショウやタレの加減具合を何度も細かく指示してきた。


 さっきまでのじゃれあっている時とは異なる、かなり真剣な表情。食材を使った実験は、日が暮れた後も続いた。エフェリーネも合流し、何度も細かい味の調整を2人でしているのを見る。


「この塩加減、もう少し控えめにした方がいいわね」


「わかったわ。チーズはどう? もう少し味を濃くした方がいい?」


「いや──チーズはこれくらいにして、素材や調味料の味を強調する作りにした方がいいわ」


 流石は料理人という感じ。繊細な味付けを相談しているのがわかる。そして、しばらく試行錯誤を繰り返して料理たちが完成。もう夜になっちゃった。

 2人が味の調節をしたりパスタをゆでている間、私たちは食器の用意や食事の準備を行っていた。


 最後にバジルつけて外見をよくして──出来上がり。エフェリーネが額の汗をぬぐって言った。


「完成です。みんなで食べてみましょう」


「そうね、どれもおいしそうでとっても楽しみ!!」


 目の前には、試作用として作った色とりどりの料理。

 パスタは、小盛りにしていろいろな種類を食べる形式になった。料理は、小盛りにしていろいろな種類を食べる形式になった。これなら多くの種類を食べ比べできる。


 カルボナーラ、ペペロンチーノ、チーズが乗っかっているトマトソースのパスタ。

 色々な味付けのステーキにパン──それにサラダ。


 私達で小さいお皿にちょっとずつ盛る。


「いただきます」


 みんなで一斉にフォークを取る。まず食べたのはパスタだった、パスタの上に、チーズとトマトソースを基調。そこにバジルや玉ねぎを刻んだものなどをトッピングされた奴。


「うん、美味しい!」

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