第29話 最高の味

「グレープフルーツです。おいしいですよ──苦さと甘さが良く合わさっていて絶品なの」


「いいわね。交換お願い」


 グレープフルーツかぁ~~、まずはこれにしましょう。ヒータやコルルも興味津々みたい。

 結局、エフェリーネや冒険者達全員が手を挙げ、持ってきたグレープフルーツすべてと交換することとなった。


 まだまだ交換用の肉はある。他にも色々食べてみたいし、交換してみよう。エルフの人はさらにフルーツを見せてくる。


「それから、スターフルーツに──真っ青な色のサファイアメロンなんかどう。普通のメロンより、甘くて香りがあるわ」


 サファイアメロン──エフェリーネさんが荷車から取り出す。手に抱えられるくらいの、大きなメロン。本当に青い。それも、明るくて真っ青。普通メロンって緑色よね……不思議な光景に思わずキョトンとなる。


 どんな味なんだろう。


「以前見たことあるけど、いつみても見っちゃうわね」


「フラミリアの言うとおりです。でも、とろけるような甘さは一度食べたら病みつきになるんですよね。交換お願いします」


 フラミリアは、食べたことがあるみたい。安心したような表情をしている。あの表情から言って、味は大丈夫だと思っていいわね。


「はい! そうだ、ドライフルーツにしたのがあるのでちょっと食べてみませんか?」


「あー私初めて、食べてみたい!」


 ヒータをこの場に、うんうんとうなづく。そして、エルフの人は肩にかけていたポーチを外すと、中から布袋を取り出した。中には一口分のドライフルーツ。


 親指くらいのサイズ。みんな受け取って、ぱくりと口に入れる。


 確かに、メロンっぽい味だけど噛みしめただけで甘い香りとメロン特有の香りが口の中全体に漂ってきた。

 それでいてくどさがない。これを新鮮な状態で食べたら──って考えるだけで唾液が出てくる。

 これはおいしい。大きいから、みんなで分けて食べよう。

 ということで交換。エフェリーネが言うには、1年に数個しか王都に出回らないくらい貴重なものらしい。現に、ここには一つしかない。


 それを交換した。他にも虹色に光る、丸い柑橘。今までも美味しそうな果物ばかりだったけど、これは格別に食べてみたい。


 フラミリアが目を丸くして質問する。


「これ、どんな味なの? 他は見たり聞いたことがあるけど、これは初めて見たわ」


「糖度が高いですね。そのまま食べてもいいですし──ジャムにしても美味しいですよ」


「甘くて、とろけそうです」


「へぇ~~珍しいわね、交換して後で食べ見ましょう」


 ヒータも、珍しい果物の数々に興味津々だ。


 他にも、興味がありそうな果物をいくつか提示され──全部交換。


「ありがとうございました。こんなに果物が手に入るなんて思っていなかったので、驚いています」


「エフェリーネさんこそありがとうございます。こちらこそ久しぶりに美味しそうな肉が食べられます。またお店に行かせていただきますので、その時はよろしくお願いいたしますね」


「ぜひいらしてください」



 交換完了。どれも初めて見るしどれも美味しそう。オレンジのパイナップルに、ピンクのレモン。中には、独特な調理法もあるらしい。

 ジャムにするとおいしいとか──ドライフルーツに最適とか──。


 結局すべての肉を交換した。冷凍された肉をエルフの方の荷車へ。触ってみたがカチンコチンに固く、触っただけで手がくっついちゃいそう。


 しばらくは大丈夫そうだし、エルフの方にも冷凍魔法が使える人がいるとのことだ。それなら大丈夫そう。


「また会ったら、果物とかご馳走しますね。もてなしますよ!」


「ありがとうございます。エルフの皆さんも、お元気で──」


「皆さんも、ご無事でいてくださいね!」


 そして別れの挨拶をして、私たちは街に戻っていく。帰り道、時折蛇やトラなど動物に遭遇しながらも、何とか乗り越える。獣道を行く中、冒険者の人とも楽しく話をする。

 この辺りの文化とか風習とかいろいろ。


「へぇ~~この辺の男の人ってそんなに女性を口説いてくるんだ~~」


「海岸に行くと、毎回ナンパされるのよ。困っちゃって~~」


 確かに、この辺りの男の人って筋肉質で、海沿いで体を焼いたりしながら陽気に女の子をナンパしているって印象。他の国の人も、そんなことを話していたし。


 ナンパしてくる男ねぇ。


「アスキスなら、スタイルもルックスもいいし絶対モテモテよ」


「ありがとフラミリア。ただそれは嬉しいけど……」


 私、これでも王族だから簡単に結婚とかできないし……反応に困っちゃう。

 とりあえず、苦笑いして言葉を返す。するとフラミリアは今度はヒータに近寄る。


「そうよ、こんな風にボディタッチ~~」


 フラミリアは、うっとりとした表情でヒータの右腕を抱きしめ始めた。顔をほんのりと赤くして、ほっぺをヒータの二の腕にこすりつける。すりすり。


「ちょ、ちょっと。やめなさいよねっ! ひっぱたくわよ!!」


「ヒータ様にひっぱたかれる、それもいいわぁ~~さあ私をひっぱたいてぇ~~」


「もぉ──っ! 誰か助けて~~」


 仲がいいっていうのかな? あれ……と考えているとエフェリーネが2人の中に割って入る。


「こらこら、そこまでにしなさい。嫌がっているでしょう」


「もぉ、しょうがないわね。ジャングルの中だし、続きはこのあとね」


 ウィンクして言葉を返した。この後がとっても楽しみかな──。そして私たちはジャングルを抜ける。

 美味しい料理、絶対作る。そう強く意気込んだ。

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