第28話 美味しいフルーツ

 私やコルルも手伝って、ミノタウロスの肉を切る。みんなで協力しあったものだから、あっという間に肉は切断される。


 肉の切断をしながら、冒険者の人やエフェリーネと話す。

 普段の生活のこととか、どんな食事を作っているかとか。この後どうするかとか──。



「帰ったら、海を見ながらワインとチーズだな。この国にの定番だよ」


「ああ~~ん、おいしそう。私もいただいてみたい」


「昼もいいですが、夜もお勧めです。夜の海や、海沿いの夜景を見ながらのワインはまた格別です」


「いいじゃない! ここを去る前に絶対やりたいそれ!」


 珍しくノリノリなヒータ。でも、あの景色をワインを飲みながらなんて、ロマンチックで素敵じゃない。私だって絶対やりたい。ぐっと拳を握る。

 それから、遠征に関すること。ひげを生やした筋肉質なおじさんが自慢げに言う。この間砂漠でパスタをゆでていたら、思いのほか道に迷って水不足になったこととか。この冒険者の人、がははと笑っていたがもう少しで死ぬところだったんじゃないかな?

 でも、楽観的で明るくて話していて楽しい人だった。


 そんなことを話していると、茂みをかき分けるような音が聞こえだす。


 ザザザザザ──。


 耳が横に長い人たちの集団。確か──エルフだっけ。3人程いる。心配で様子を見に来たのかな?

 出てきたエルフたちは、こっちを見るなり口を押えて驚いていた。


「本当にミノタウロスを倒したんですか? すごいですね!! さすがはアスキスさんです」


「いえいえ、みんなの力あってこそですよ」


「それでもすごいです。こいつら、力は強いし私たちの縄張りにある果物を食べつくしたりしていて厄介だったんです。どうしようかと悩んでいたところでした」


「それは好都合です。また、戦力を整えて狩りに出るように手配しておきますよ」


「それは助かります」


 気さくに話しているのを見る限り、エフェリーネとエルフの人たちは面識があるのだろう。

 話を聞いていると、また店に招待するって言ってた。嬉しそうなエルフの人。



 エフェリーネと仲がいいというのがわかる。今ででも、あんな感じでおいしい料理をごちそうになっていたんだな。常連みたいな感じ。


 お店でも、色々談笑とかしているのかな? 楽しく話しているのが想像できていい雰囲気になっているのがわかる。私も加わってみたい。



 それから、けがをした人の手当てをした後残りの肉を運搬して一度エルフの人たちが住んでいる集落へ。木でできた簡易的な家屋が連なる場所。


 エルフのほかの人たちは、私たちの成果を見るなり興味津々に肉の塊に視線を移した。


「流石人間たち──私たちが困っていたミノタウロスをこうも簡単に──さすがでございます」


 エルフのお姉さんが頭を下げる。


「皆さん、この度はありがとうございました」


「いえいえ、私達だって目的があって狩りをしているわけだから。あ、よかったらミノタウロスの肉と、ここにある果物を交換とかどうですか?」


「いいんですか? それはこっちも好都合です。この肉はしばらく食べてませんからね、こちらも──精一杯何か埋め合わせをさせていきたいと思います」



「それなら、この森特有の果物を用意させていただきます。どれも個性があって、素晴らしいものなのでぜひ交換していってください」


 にっこりとした笑顔で話すエルフのお姉さん。確か、ここに来るまでにカラフルだったり珍しい形の果物に何度もであった。食べれるかどうかわからなかったけれど、エルフの人たちなら大丈夫なのだろう。おいしそうな果実。


 それも生かした料理──作ってみたい。すっごい楽しみ。



「それでは、果物の方を持ってきます。少々お待ちください」


 そう言ってエルフの人たちがいっせいに頭を下げる。果物かぁ──どんなものかわからないけれどせっかくだから食べてみよう。ワクワクするわ。


 私達だけになった中で、どんなものが食べられるか話したりしていた。コルルもヒータも、あんなものが食べたいとか、こんな風に調理してみたいとかいろいろ。


「ジャムとか、作ってみたいです」


「私は、レモネードとかにして、ビーチで飲んでみたいわ」


 ヒータがノリノリで言う。確かに、そんなバカンスとかいいかもね。

 想像しただけでよだれが出てきそう。

 他の人たちも、エルフの人たちから何をもらえるのかで持ち切りだった。



 そして、しばらく時間がたつとエルフの人が荷車に果物を目いっぱい乗っけてやってくる。


「こんな感じです。色々と持ってきました。初めて見るようなものも多いので、色々と説明しますね」



 目いっぱいの果実。ほとんどが今まで見たことがない果物ばかりだ。中には、レインボーに彩られたり、甘酸っぱい香りを醸し出していたり。


 どれもとっても美味しそう。想像するだけでほっぺたが落っこちてきそう。

 黄色い丸い果実。中を割ってみるとルビー色に輝いていた。ルビー色に光る、瑞々しい果肉。


「何これ、おいしそう」


「どんな味がするのか、すごい興味あります」


 そして、エルフの人が丁寧に果肉を切って親指サイズの果肉を渡してくれた。食べてみると、ちょっぴり苦いけど甘酸っぱくてみずみずしい。へぇ~~こんな独特な味なんだ~~。

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