第26話 エルフの人たち
冒険者たちが、森を見てささやく。
風が、森の奥深くから沸き上がり、葉っぱがなびく音が聞こえる。自然特有の音で、空気を鮮やかにする。日の光がこぼれる深い森。
「でも、この森──いい果実が取れるのよ。もうすぐ、たどり着くわ」
エフェリーネさんの言葉通り、しばらく薄暗い森を進んでいくと、森の奥深くに果樹があった。果樹は豊かで、様々な果実が実を結ぶ。その近くではエルフの一団が果樹の下で食事を摂っていた。彼らは果物や干し肉を美味しそうに食べている。エルフたちはこの森で、長い時間を過ごしてきた。彼らの雰囲気が森に混ざり合い、自然共生して過ごしているのらしい。
「こんにちは」
「ああ、エフェリーネさん。どうしたんですか?」
「ああエルフの皆さん。実はですね……」
エフェリーネはエルフの人たちに私達やミノタウロスのことを話す。気さくに話しているところを見ると、顔なじみなのかな? エルフの髪が長いお姉さんらしき人は、話を聞くなりとても驚いた表情で言葉を返した。
「まぁっ、あの強くて凶暴なミノタウロスですか?? すごいですね」
「はい、みんなで倒しに来ました」
エルフの人は、こっちに視線を向けると心配そうな表情になった。
「私たちもミノタウロスに果樹を荒らされたりしているのでそれはうれしいです。しかし、無理はなさらないでくださいね」
「大丈夫よっ! このヒータ様がいるんですもの!」
「まあ、頼もしいお仲間ですわね。ミノタウロスはあっちの方にいると思います。頑張ってくださいね」
そう言って、私たちはさらに森の方へ。エルフのお姉さんはにっこりとした笑顔で手を振ってくれた。いつか、この人たちとも色々とお話とかしてみたいな。
「素敵な森ね。あとエルフの人って、美しいわね」
「思った。みんなきれい~~彼女にしたい!!」
若い男の人が、目を輝かせて言う。驚いちゃったけど、それくらい素敵そうな人だったな。
さらさらそうな金髪。白っぽくていつくしい肌の色。横に長い耳、すらっとした高い背丈。うわさでは聞いていたけど、美男美女の集まりって感じでびっくりしちゃう。
すごいなぁ──。それから、さらに森を進む。
静けさによって、森の中にいる動物の鳴き声が鮮明に聞こえた。森について研究したことがあるんだけど、森の奥深くに住む動物たちは、共生して互いに生活を守っていることが多い。
それからエフェリーネがこの森について話始めた。話によると、ここでは、森に住む生命全体が、魔法を発していて、その力によって美味しい果樹や木の実が育っているのだとか。以前から存在していたわずかな魔法が、森全体からうっすらと感じられる。これによって、この森全体が豊かさに包まれているらしい。興味深いな……確かにこの森美味しそうな果物や木の実が多いもん。
「このあたりではないでしょうか? 例の動物というのは」
「そうですね。確かに、かすかに足音が聞こえています」
エフェリーネの返す言葉が、小声になる。そろそろか──。
コルルの言葉に耳を澄ますと、遠くから小さいけど明らかに誰か歩いてるって感じの音。その通りだ。
わずかに地面が揺れる、足音だなこれ。そしてズシン──ズシン──と音が聞こえ少しずる大きくなっていく。
周囲に視線を送ると、コルルとヒータは真剣な表情でコクリとうなづいた。そして、各々の武器を手に取る。戦う準備が、できたということだろう。
エフェリーネがこっちを振り向いて、小さい声で話してくる。
「ミノタウロスは近くにいます。逃げないうちに早めに処理しましょう、こっちです」
「わかりました」
自然と早歩きになり、草をかぎ分けて森の奥へ。時折、シチリナサルやツノシカなど初めて見る動物に遭遇。ばったり会った時はびっくりしちゃったけど、握手したりして触れ合うとかわいく感じた。初めて会う動物に関しては、どこかかわいく感じる。
そんな深い森をしばらく煤で行くとフラミリアが指をさした先に、その姿はあった。
「あれよ──」
「あれね。とっても強そう」
5~6メートルともいえる筋肉質の怪物。大きな角が2本生えていて、褐色な肌。武骨で怖そうな表情をしている。
牛の怪物、ミノタウロスだ。とうとう見つけた。
「戦闘準備、オーケー??」
私はウィンクをして、笑顔で言葉を返した。剣を取り出し、切っ先をミノタウロスに向かって向ける。
「オーケー」
「大丈夫に、決まってるじゃない。ちゃっちゃと倒しましょう」
「はい、ヒータと私が力を合わせれば瞬殺だわ」
「ちょっと、こんな時にほっぺをくっつけないでよフラミリア」
じゃれあっている2人。いいコンビになりそう。他の人たちも大丈夫だと言わんばかりにコクリとうなづいていた。なら、行くしかないでしょ!
そして、戦闘が始まった。
グォォォォォォォォォォォォォォォォッッ──!!!!
大きな咆哮を上げるミノタウロス。この大声だけで、大地が大きく揺れる。
そして、叫ぶのをやめると向かってくるミノタウロス。
私たちもコルルとアイコンタクトをしてミノタウロスへと向かっていく。
「相手は強いです。無理をしないでください!」
「大丈夫。負けるつもりなんてないから」
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