第24話 絶景と絶品
エフェリーネが思いっきりフラミリアの頭をたたく、フラミリアはげんこつされた場所を押さえてうずくまってしまった。
「ごめんね~~、この子好きなものを見ると自分を見失って暴走しちゃうのよ。今から準備するから、待ってて」
そしてフラミリアの服を引っ張って、引きずるようにしてこの場を去っていった。意外と、ぶっ飛んだところがある子なのね……。びっくりしちゃった。
2人が料理に入ってから、私たちはテラス越しに景色を見る。
この景色を見ながらの食事っていうのが、最高にムードをそそる。目を輝かせながら見ていると、店員の人が話しかけてきた。
「単純な食事の味も当然ですが──私のモットーとして、目の前にある景色も食事の一環ということになっておりますです。
我が国が誇る、絶景と評判の景色を見ながら、最高級の料理をどうぞお召し上がりくださいです!」
「そうね、最高の景色。これでみんなで食べるのも悪くないわ」
ヒータは肘をつきながら、コルルは手を太ももに当てて景色を見ている。
2人とも、興味津々に眺めていた。そりゃそうだよね……絶景なんだもん。
景色という発想そのものがなかった。ブリタニカでは工場を大量に稼働させたあたりから景観が悪くなった。
大気が汚れて、うっすらと灰色に濁った空。川は汚れていて異臭がしていて、今国を挙げて対策中になっているくらいだ。本当に何とかしないと……。
だから、こんな光景がとても新鮮に見える。近くには国王が住んでいる王都でもあるのに、自然豊かでひっそりとした場所。シチュエーションも悪くないわ。
ほどなくして、料理が出てきた。エフェリーネはわたしとコルルの分を、フラミリアはヒータの分を持ってくる。
頼んだのは、シーフードピザとトマトソースのパスタ、そし白ワイン。そして、付近のクラダリの森で採れた山菜を似たスープ。フラミリアが、ヒータに投げキッスをしておすすめをしてきたやつだ。
「これ、ヒータ様やみんなに食べて欲しいんですぅ」
「わ、わかったわよ。そこまで言うなら頼んであげるわよ」
「なんだかんだフラミリアにいい顔してるじゃない」
「やめてよ。おすすめだっていうから頼んであげる。それだけなんだからねっ、勘違いしないでよっ!!」
顔をぷくっと膨らませるヒータに、うっとりとした表情のフラミリア。もし付き合ったら──仲の良い恋人同士になりそう。やり取りを思い出すだけでニヤニヤと笑みを浮かべてしまった。
シーフードピザとトマトソースのパスタを前に、銀色のフォークを手に取った。ゆっくりとフォークでパスタとトマトソースを絡めてくるくるとフォークに巻き付ける。
香り漂うパスタを口に入れていく。トマトソースのパスタにはほんのりとしたアクセントの酸味と濃厚なトマトの甘さが込められていた。そのほかの食材も、相当こだわっているのがわかる。玉ねぎは、甘みがあってよく煮込まれているせいかとても柔らかい。そして、その味に加えてソースの味がしみ込んでいる。
マッシュルームは弾力があっていいアクセントになっていた。
「これ、おいしいじゃない!」
「はい、初めて食べました。味が濃くて、まろやかで──絶品ですねぇ」
コルルとヒータも美味しそうにパスタを食べている。
ワインも、香り豊かで味わい深くて、さすが本場の物といった感じだ。
渋みが抑えられていて、甘みと酸味のバランスが良く整えられている。
「ワインは、初めての人でも飲めるような人でも美味しく飲めるようなものを選んでいます」
「提供する人によって、考えているのよ。初めてワインを飲む人なんかは、癖が少なくてオーソドックスなものを用意して、何度も飲んでいる常連や身分の高い人なんかはその人の趣向にあった味のワインを提供しているの」
フラミリアの言葉に、大きくうなずいた。とても感心しちゃう。
なるほどね。単純な料理の腕だけじゃなくって食べる人の特徴とかを考えているってことね。すごいじゃない。
流石は、王族に仕える料理人ってやつね。フラミリアが、エッヘンと言わんばかりに腰に手を当て、偉そうに話始める。
「当たり前じゃない。私たちが作った、王族たちも食べるものなのよ。絶品に、決まってるわ」
さらに、シーフードピザに手を加えた。こっちは、どんな味なのかな?? 楽しみ。ナイフで切って、一口食べてみる。
「ううん、今までにないくらい素晴らしいわ」
シチリナ王国は、味わい深いチーズやオリーブオイル、トマトソースから作られるピザも絶品そのものだと聞いていたが、この味は予想をはるかに超えている。驚愕しちゃった。
1つずつ丁寧に食べ進め、手応えのある生地が喉を通り、心地よい感覚に浸る。しっとりとしたピザ生地を噛みしめると、濃厚な黄金色に光るチーズをゆっくりと溶かして食べている。
チーズと、オリーブオイル、トマトソースの組み合わせは絶妙で、それに調和されるように、エメラルドエビ、ルビーイカ、タコなどのこの地特有の新鮮な海の食材が、口の中で調和しあっていた。
シーフードピザとトマトソースのパスタが調和する、至高の味わい。
「素晴らしいの一言、最高よ!」
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