第23話 アドリナ海の絶景

 この辺でしか生息しない、オレンジと白の牛。カラー牛の一種──面白そう。


「ちなみに、別の地方では青や黄色の牛も発見されていて様々な味や香りが堪能できるそうです」


「へぇ~~面白い。ちょっと見てみたいかも」


 味もこの地でしか味わえない独特なものがあるらしく、試しにミルクとチーズを買ってみた。

 3人同時にミルクの味を味わってみる。味わって、そのすごさを舌で感じる。


 ミルクは、生臭さがなく口の中に濃厚なミルク特有の香りが広がり、絶品ともいえる味。

 チーズも、しっかりと臭みをしっかりととっていてチーズの美味しさが口いっぱいに広がっている。それに、口に入れたときにとろけるような食感が本当にたまらない。

 さらに、まろやかで体を癒すような香りが口の中全体に漂ってくる。


「いい品種ね。本国に帰ったら、種牛を買えるか頼み込んでみるわ」


「わかったじゃ。楽しみにしてるんじゃ」



 ちょっと変な口癖のおじさんは喜んでコクリとうなづいた。

 山に隔てられていたおかげで他の国と違った独自な文化を形成しているせいか、この辺りは独自な食べ物が手に入る。どれも、使い方しだいによってはおいしい料理に化けそうなものばかりだ。


 こういった個性のある食品についても、手に入れられるようにしていきたい。


 色々な食品を食べ、楽しい気分になり馬車は進む。アノプス山脈を越えて、荒野が広がる地帯へ。

 いくつかの村を通って、私たちは海沿いの王国、シチリナ王国へと到着した。


「この海、絶景ですね!」


「わかるコルル!」



 キラキラと照り付ける太陽、海の香りが漂う潮風が吹きつける――アドリナ海の海岸は素晴らしい光景で溢れていた。水平線に向かって広がる青の深淵は、心を奪うほどの美しさ。


 私達はとも、思わず声を出して感激の声を上げる。


「すごいキレイ!!」


「いいじゃないですか!」


 ここは海がきれいなリゾート地とも知られていたけど、こんなキラキラできれいな海は初めて。今回はそこまで滞在できないけど、いつかリゾート目的でいてみたいな。


 大きな広場で馬車を下りた。この国は海岸沿いは坂が多く、目的の場所まで狭い道が続くためここから先は歩きとなる。



 石の階段を降りていくと、そこから見える海の光景は、深く青く澄み切った海が広がる幻想的な一帯だった。砂浜に広がるキラキラと輝く砂の中に散りばめられた貝殻や小石たち。そして、海が太陽でにキラキラと反射して、周りの景色を煌びやかにしている。





 石畳の細い路地を進むと、目的のお店はあった。裏路地にある、こぢんまりとした雰囲気のランチのお店。


「ここ道ですね」


「ありがとうコルル」


 人通りの少ない、ひっそりとした雰囲気のお店。中では、ひげを生やした筋肉質の男の人が女性を口説きながらパスタを食べている。他には、賑やかそうな家族連れの人。他には海で遊んだ後なのか、海パンで食事劣っている人もいる。

 一般層向けのレストランだというのがわかる。

 そして、遠目から見るパスタ。真っ赤でおいしそうなトマトソース、香り高くて店の外までにおいが伝わってきた。


 この香りは、トマトの中でも甘みや香りが高いって有名な「ダイヤモンド・トマト」ね。

 コンコンとドアをノックして、中へ。これは期待できそう。





 見惚れてしまうほどの美しい景色に見とれながら、色々な思いが頭の中に浮かぶ――絶景ともいえるこのアリドナ海と海岸線。


 そんな絶景を、海辺にある屋外のテラス席から眺める。

 ここが、シチリナ王国で料理を食べることになっていた小さな街のレストラン。「ジェノバ」であった。


 中では、数人の人が調理をしていて──私たちに気づくなり、2人の人物がやってくる。


 2人とも、エメラルド色の髪色。白いコックの姿に帽子をかぶっている。

 1人は私より頭半分くらい背が高く。腰までかかったサラサラそうなロングヘア―をしている。

 もう1人は、小柄で同じ髪色、花飾りをつけていて髪を結んでいる。姉妹みたい。


「すっごいキレイ」


「ようこそおいでくださいましたです。私がシチリナ王国で王家のシェフをしておりますアンドレア=エフェリーネ。そして、隣にいるのが 妹のアンドレア=フラミリア。この店の店長をしております」


「私はアスキス。こっちはコルルとヒータ、よろしくね」


 互いに頭を下げて、握手をする。この2人は以前も面識があった。ヒータもそうらしく、2回目とも会ってどこか砕けた感じになったのだが──。

「……ヒータ様。逢いたかった。逢って抱きしめて温もりを感じたかったわぁ~~」


「ちょ、ちょっと何よいきなり……」


 フラミリアはヒータを視界入れるなり、うっとりとした表情になった。顔を真っ赤にして、もじもじしている。


「もう我慢できませんわぁ!!」


 そして、飛びつくように抱き着き始めた。

 頬をすりすりしている。いいな……。


「好き、好き~~ヒータ様。逢えてよかったわぁ~~」


「暑苦しいっつの!!」


 何とか引きはがそうとするヒータ。しかしフラミリアはまとわりつくようにヒータから離れない。

 2人のやり取りに、周囲の視線が集中する。それに気づいたのかエフェリーネはため息をついて2人に接近。


「フラミリア──いい加減にしなさい!!」

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