第22話 最高の別れ
「本当のことじゃない! ヒータ、とっても素敵よ。いつもはつんつんしてとんがってるけど、本当は思いやりがあって──人に優しくて──こんなにいい人だなって思った」
「そんなことないわ。あんたの方がいい人よ。褒めたって、なんも出ないんだからね!」
顔を真っ赤にして、手をあわあわと降って否定してる。こういう素直じゃないけど、本当は思いやりがあっていい子なのはヒータにしかない魅力なのよね。
「私もそう思います」
コルル、起きたみたいだ。横になりながらこっちを見ながら優しい笑みを浮かべて言う。
まるで女神みたいな、柔らかい微笑み。こっちも見ているだけでドキッとしちゃう。
「ヒータさん、本当は優しい性格なのは理解しています。とっても魅力的で、そういう所が好かれるんだなって私は思ってます」
「コルルの言うとおり、ヒータはもっと自信もっていいと思うわ」
「わ、わかったわよ」
「これからも、よろしくね」
にこっと笑ってウィンクをする。ヒータは、顔を真っ赤にしておどおどしていた。
「しょ、しょうがないわねぇ。そこまで言うなら、力になってあげるわよっ。私の優しさに感謝しなさいよねっ」
でも、ヒータなりに好意を示しているというのがわかる。ちょっと素直になれないけど、根はやさしくていい子だと思う。
「とりあえず、明日もやることがあるので寝ましょう」
「そうね」
そして、私たちは会話をやめて再び眠りについた。今日はいろいろあったけど、うまくいって良かった。私ひとりじゃ絶対に出来なかった──コルルとヒータが力を貸してくれたから大成功になったのだ。
2人のおかげということを胸に刻んで、これからもこんな旅路を続けていきたい。
数日間、色々な人と話したり──街を観光したり。いろいろなものを食べたりした。
ティラミスとか、ワインとか 特有のものはどれも美味しい。ブリタニカに帰ったら、ぜひ再現したい味ね。レシピももらった。ヒータとコルルは周りの人たちに食べさせてみたいって、意気込んでいたわ。私も、どこかで作ってみたい。
そして、私たちはこの土地を去ることになった。次は、シチリナ国ね。大きな半島に、様々な都市国家の王国が乱立している国家の中の一つ。
先日はライバルとして私たちに立ちはだかってきた彼。その後は、悔しくて夜も眠れなかったらしい。
今も悔しそうな表情ではあるが、どこかすがすがしさを感じていた。
「先日の負けは認めてやるよ」
「あらっ、随分素直なのねっ」
「あんたと違ってね」
「アスキス、な、何よいきなり!!」
ムキになるヒータ。レイノーも、意外とあっさり負けを認めてくれた。もっと意地汚くごねると思ってから以外ね。
「いい心意気だな。私も食べてみたいぞ。今度会った時はよろしく頼むな」
そして、彼だけじゃない。国王のウェイガンまで見送りに来てくれていたのだ。
以前のような厭味ったらしい素振りはすでになく、普通に国王として私たちを見送ってくれているのがわかる。
「よく変わったな。この前のくそまずい料理が嘘だったかのようだ」
「ありがとう、今度ウェイガンにも何かしらおもてなししてあげるわね」
「よろしくな、楽しみにしてるぞ」
嬉しそうなウェイガンの表情。いつかは、この人たちとも紅茶とか飲みながら楽しく話してみたいな。
「そろそろ出発します!」
「了解!」
そして、私たちは馬車へと乗り込んでいった。ほどなくしてゆっくりと馬車が動いていく。
「じゃあね~~」
「また会いましょうね」
「次は俺が勝つからな!」
笑顔で大きく手を振って、別れを告げていく。
最初はどうなることかと思ったけど、結果的にうまくいって良かった。最初はどうなること最終的にうまくいって良かった。
またフランソワ王国の人たちとも、カビール家の人たちとも、こんな風に再開して楽しい時間を過ごせたらいいな。そんな風に思える素敵な時間になった。
小麦畑が広がる平原を抜けて、高い山々がそびえるアノプス山脈へ。峠付近に差し掛かると肌寒さを感じ、周囲は真っ白でうっすらと雪が積もってる。
「雪、初めて見た。きれいじゃない?」
「そうですね」
「子供じゃないんだから、はしゃぎすぎよ」
ヒータに冷静に突っ込まれる。でも、初めて見る景色の数々に、思わず目を輝かせる。
さらに馬車は進む。峠に差し掛かったあたりで、いくつかの集落に遭遇。
「パールベリー?」
農家のおばさんが、試しに食べてみてとブドウの実を渡してくる。紫色だけど、皮がきらりと光っている珍しい実。
試しに一口食べてみると──甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
「何これ、甘くておいしいじゃない」
「それに、香りが口の中いっぱいに広がります」
甘みが強くて、でも酸味だってそれに負けないくらいしっかりと味を出していた。実を噛むと、爽やかな香りが口の中に広がって独特の風味を感じさせている。
これがパールベリーの特徴らしい。これは本国でも栽培可能ということで、種をいくつか購入。みんなをびっくりさせちゃえ。
こんなブドウがあったなんて知らなかった。
さらに、別の農家ではミルクをいただく。
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