42
感のいいあこちゃんに悟られた。
あとでサブローに聞きに行ったそうだ。
サブローが教えてくれた。
”モルト君おかしくない?"
その通りだ。
おかしくなっちまったんだ。
自分では手に負えない何かに突き動かされている。
このもどかしい気持ちが青田にもあこちゃんにも見えるのだろう。
サブローはあこちゃんに真相を伝えていない。
俺に気を使ってくれている。
それでもあこちゃんは察してしまったかもしれない。
まさか俺が生徒のおばちゃんのうち一人にとかは思わないだろうから。
先生か!となるだろう。
あこちゃんは何かアクションを起こすだろうか。
次のレッスンまで何事も起こらず、
先生も今までと変わらなかった。
あこちゃんは静観していたようだ。
今日はいつもよりラフな恰好をしている。
言い訳するように今日はこのあと何もないからとトレーナーとジーンズ姿の先生が
服装のことをしゃべった。
おばちゃんたちがえー可愛いと言って褒める。
髪も後ろでまとめていてこれまでと印象が違った。
白いスニーカーをはいている。
そのどれもがまぶしかった。
今日は前回難しかった楽譜の復習から始まった。
それから新しい楽譜に移った。
5人がそれぞれちょっとづつソロを取る構成になっていて、
自分の声だけになる時声が震えた。
「北条さんリラックスリラックス」と先生は、子供を励ますように言った。
声をかけられてますます緊張した。
先生に恋した小学生みたいだ。
耳が赤くなるのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます