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まさかこんなことで悩むことになるとは思いもしなかった。
ひとり抱え込むのがつらい。
サブローしかいない。
話しやすい静かなバーに行った。
彼女がライブで遅くなる日だ。
静かなバーだからカウンターに座るとマスターに丸聞こえになる。一番隅の座ったことのないテーブルに座った。
サブローもこれは何かあるなと察している。
ぼそぼそ小さな声でしゃべった。
サブローはしっかりと受け止めて、笑ったりしなかった。
しばらく考えている。
ロックグラスの大きな氷がころんと転がった。
「ふたりだけで会うのは難しそうだね。」
俺はうなづくだけだ。
「やっぱりあこちゃんかな。」
俺もそれしか突破口はないと思っている。
ただ、知られてしまうのだ。
「知られたくないのか?」
またうなづく。
「咲丘さんは?」
そうか、咲丘さんも生徒だった。
「なるほど。彼女だったら」なんとなくいいような気もする。
でも、「あこちゃんがあとで怒らないかな。」
「確かに」
また考えている。
「レッスン仲間は?」
「まだ全然仲良くなれてないよ。」まだプライベートな話すらしていない。
1杯目がなくなり、別のウィスキーを頼む。
まだ結論は出てないが、サブローに話しただけで気持ちがすっきりしてきた。
やっぱり話してよかった。
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