第18話【孤独①】
〖たくとの過去へと〗
深夜、たくとは地下室で戦闘記録の整理しようとPCのファイルをみていた。
「え〜っと、前のscpとの戦闘記録は〜っと」
「あったあった!」
たくとはやっと見つけたファイルを開こうとしたとき何やら見覚えのないファイルがあることに気づいた。
「何だこのファイル」
「こんなファイルあったっけ?」
そんな独り言をぶつぶつ言っていると地下室の扉が開き、けいぶんとまるしぃが入ってきた。
「まだ寝ないのか?」
けいぶんが眠そうに目をこすりながら話し掛ける。
「そうだよ、また寝不足になるよ〜」
まるしぃも寝るように促してくる。
「君たちこそ寝なよ、俺はやることがまだ残ってるから寝れない.....寝たいけど」
「たくと、そのファイルなに?」
まるしぃが質問を投げかけてきた。
「俺にもわからんのよな〜」
「だから、いまから開こうかなって思ってたところに君たちが来たのだ」
「なら見ようぜ!」
興味をもったのかさっきまで眠そうにしていたけいぶんがそんなことを言い出した。
「じゃあ、開くぞ」
そして、ファイルを開くとそこにあったのは。
「これって写真?」
「そうみたいだな」
「そういえば昔、俺がよく撮ってたな思い出として」
「いつの間に撮ってたの!?」
まるしぃは驚いたように言ってきた。
「いや〜、覚えてないな〜」
たくとは惚けるように言った。
「たくと、惚けても無駄だからね、ちゃんと説明してもらうから(圧)」
まるしぃが拳を握りしめながら言ってきた。
「まるしぃさんちょっと怖いですよ」
「なんとかしてくれない、けいぶん」
けいぶんにそう言うと
「やだよ、面倒くさいもん」
思った通りの返答が返ってきた。
「後で説明するから写真みよ気になるし」
たくとがそのように提案するとまるしぃはこくりと頷いた。
そして、PCの画面を見た時に真っ先に目に飛び込んできたのは。
「けいぶん、懐かしいのがあったぞ」
「うわ、懐かし」
それはけいぶんとたくとが初めて出会った時の写真だった。
「そういえば、俺たちそれぞれ違う世界にいたもんな」
そしてたくとは己の手を見つめてふと、捨てたくても捨てられない心に残る、苦しくて今でも曖昧な記憶が流れたのだった。
外からの音すら聞こえないこの研究所の監獄の中、黒髪の青年が部屋の隅で踞っていた。髪はボサボサで服はボロボロ…おまけに足には足枷が付いていた。少しして、太い男の声が檻の外から聞こえた。
ガンガンッ!!
「おい!!起きてるか!!実験体No.96!!」
「助手君、静かにしたまえ」
たくとが頭を上げると男の隣で冷静かつ腕を後ろに組ませたたくとより幼い小学生くらいの少年が袖から手が出ないほどの大きいサイズの研究服を着て、怪しく輝く紫色の瞳でこちらをじっと見ていた。
「助手君、しっかりご飯はあげてるかい?実験体"モルモット"君が痩せているよ?」
「それがですよ。全く飯をここ1週間食ってなくて…」
「この後、実験があるんだから、殺さない程度にご飯はあげなよ?」
「了解しました!!」
「じゃ、頑張ってね」
そう言い残し、研究服を着ていた少年は去っていった。
「おい、No.96…飯を食っておかないと次の殺し合いで生き残れないぞ」
「…」
たくとは再び下を向き、男の言葉を無視した。
ガチャン…
「此処に飯置いとくから、適当に食っとけ」
そう言って男もこの場を去っていった。檻の前にはジャムパンに水、ヨーグルトが置いてあった。最低限のエネルギーが得られる献立だが朝と夜にしかないこの2回しかないさ配布だが、毎日この献立な為、流石に飽きていた。それでもたくとは食の近くまで歩み寄って全部ではないが半分を口に入れて後は残した。
ー30分後ー
再び、また別の監視員らしき人物の男が2人、檻の鍵を開けて入って来るとたくとを無理矢理立たせて歩かないと鉄の棒で叩かれた。何故、抵抗しないかは少し前に目の前で脱走しようとした人物がいたが、すぐに取り押さえられて注射器を首元に刺されたのだ。そしてその人物は苦しんで踠いていたがすぐに白目になって口から大量の血液が流れた。それを見てたくとはあの注射器に入っている薬剤を一瞬で毒だと見破り、死なない為にこうやって抵抗しないのだ。監獄の中を歩いて数分、たくとは実験室らしき場所に連れて来られた。そこでは研究者達が実験体の供達を謎の液体の入ったカプセルに無理矢理入れていた。たくともそこを歩かされて誰も使っていないカプセルに入れられるとガラスの蓋が閉まり、中の液体に浸かりながら謎のガスが瞬時にカプセルの中に充満した。
シュゥゥゥゥゥ…
ドックン!!
「!!?」
ガタンッ!!!
謎のガスを吸ってしまったたくとは突如、苦しくなり、頭と手足が痛くなって目眩が起こった。
ガンガンガン!!!
「だ…せ…」
そしてたくとの目はゆっくりと閉じていった。
次に目が覚めた場所は眩しい蛍光灯があるまるで体育館のように広い空間だった。壁は白くペイントされていて更にそこでは20人近くの実験体達が殺し合っていた。
「おらぁ!!死ねェェェェ!!!」
「お前こそ死ね!!!」
「殺してやるっ!!」
「や、やめろ、うわぁぁぁぁぁぁ!!?」
周りでは特殊能力を持った実験体達が無差別に殺し合って暴言と血が飛び交っていた。
『そろそろ終わりかな~。皆、生き残れるのは5人だけだから死なないよう頑張ってね!』
アナウンスが流れ、その声はあの研究者の少年と一致していた。それを聞いた瞬間にたくとは理解して部屋の隅で壁にもたれ掛かった。
殺戮の嵐は段々と死人の連なる山へとなっていき、遂に後たくと含め6人となっていた。
「あ?何だテメェ…偉そうにこっち向きやがって、丁度いいわ。お前殺して生き残ってやる」
「助けないと…」
「辞めとけ。アイツが死ぬのはあれだが、生き残れるなら別にいいだろ」
柄の悪い奴の後ろで喋る青年の男子と女子が話していたがたくとの目線では更に反対側の壁に2人の男が話していた。
コツコツ…
柄の悪い同級生らしき奴はたくとの目の前まで来るとそいつは手に針を生やしてたくとの頭を掴み上げて殴り掛かろうとした瞬間だった。
(死にたくない…)そうたくとは思いながら冷たい眼差しで奴を見た。
「テメェみたいな影薄い奴が生き残れるとでも思ってんのかァ!!」
「うるせぇよ…」
バシュウ!!!
「「「「!!!?」」」」
その瞬間、たくとの体は燃え上がりその炎は柄悪い男へと燃え移った。
「な、何なんだよ!!?消えろ!!消えろ!!消えろ!!ウガァァァァァァァ!!!」
ボボッ…シュゥゥゥゥゥ…
燃え尽きた男は灰になって散っていった。気付けばたくとの髪色の瞳は美しい茜色となっていて腕からは炎が燃え盛っていた。
「わわっ!消えろ!」
ブンブン!!
たくとは自分の腕が燃えていることに気付き、腕を振り回したが普通に消えていった炎を見てふと思った。
(そういや、全然熱くなかった…)
ダァァン!!!
「どう言うことだ!?奴には何も能力の数値が表れなかった…それなのに、あんな"自然災害級"の能力を手にしていたなんて…」
モニター越しで観察していた少年の研究者は机を叩き、椅子から立ち上がってはモニターを更に近くで見た。
「だが、丁度良いデータが見れた…」
ジジッ…
『よくぞ生き残ってくれたえらばれし実験体"モルモット"達よ。今夜はさぞ疲れたぢろうから、特別な部屋で君たち全員で過ごして貰おうか』
「ハァ!?冗談じゃねぇ!!元の場所に帰せよ!!」
1人が立ち上がってカメラ目線で意見を尊重したが、何も言われず研究者達によってたくと達は檻より広く、快適な部屋に連れて来られた。全員を入れた後に重い音を立てながら扉は閉まっていった。
ボフッ!
「はぁ~檻の中のボロいベッドよりこっちの綺麗なベッドのほうが快適だわぁ」
「だな!」
そこでは全員分のベッドもしっかりとあり、おまけに風呂やトイレがあった。たくと以外の全員はくつろぎ始めたがたくとだけは床に座り込んだ。その姿を見てあのたくとを助けようとしていた女子が近付いて来た。すると、たくとの側まで行くと隣に腰掛けた。
「どうしたの?君のベッドはあるよ?」
「…」
黙ったままのたくとに少し口を尖らせる黒髪のショートヘアにピンクの髪飾りをした女子がたくとの頬を指でつついた。
ツンツン…
「ねぇ、何か言ってよ~」
「…やめて。ウザイ…」
たくとは茜色の瞳を女子に向けると黄色の瞳を輝やかせながらこっちを見てきた。
「やっと喋ってくれたぁ~。案外良い声してるね。惚れちゃった(照)」
少し照れながらも小悪魔みたいな顔をしてたくとに更に話しを続ける。
「じゃさ、好きな物は?」
「無い…」
「好きなタイプは?」
「無い」
「じゃあ、ここから出たら何したい?」
「無…」
たくとは少し黙り込む。「ここから出たら何をする」…その質問にはまるで此処から出れるとでも言うような言い方であった。ここで目を覚ましたたくとは元々この場所からはもう出れないと思っていた。でも僅かな希望の光が心に浮かんだ。
「出れるのか?」
「勿論だよ。元々ここにいるメンバー全員ね…」
すると、その言葉に全員は立ち上がりこっちに向かって来た。そして、女子が手を差しのべて来たからたくとは迷いながらもその手を取って立ち上がった。
「此処から脱出する集団だよ」
「此処から脱出する集団だ」
「此処から脱出する集団さ」
「此処から脱出する集団って奴さ」
その皆の言葉からは絶大な期待を持ってしまう自分がいた。それに乗るようにたくとは呟いた。
「そうか…だったら脱出しようぜ。皆でな!」
「「「「オォー!!!」」」」
「ところでどうやって脱出すんのさ?」
たくとの質問に女子はにやりとにやけてポケットから鍵をチャリンと音を立てて取り出した。
「まず、此処にいる全員を救おうか。人手が必要なんでね」
〖完璧な作戦を仲間と共に〗
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