第8話【嫌いな姉】

〖本能を研ぎ澄ませ…〗

 渋谷駅付近、けいぶんは煙草を吸いながら一人、ぶらぶらとそこら辺を歩いていた。けいぶんの顔はやけに落ち込み、好きな煙草も楽しめない。

「…暇だし、寂しい」

 ふと夜空を見上げ、煙草の煙をじーっと見つめる。すると、静かで温かい風が吹いた。人の気配を感じ、振り向けばポケットに手を突っ込んで立っているやるっきーがいた。

「お、やるっきーじゃん。どした?」

「いや、たまたまケイブンが居たから話し掛けただけさ。それより、こっちにはscp居たか?」

「いや、居ないね」

 やるっきーの質問に一切迷う必要なく答える。とりあえず渋谷駅に向かおうとやるっきーが提案するから、駅に入ろうとした瞬間だった。後ろで大爆発が起こり、ビルが倒壊した。

「「!!?」」

 そして土煙が巻き上がり、周りが晴れていくと気絶したはむとボロボロのさかながいた。

「あれ、サカナにハムが…どうして?」

 やるっきーがさかなに近付いて話し掛けた時だった。

「危ねぇ!!」

 ビュンッ!!

 謎の彫刻が素早く土煙の中から現れ、やるっきー目掛けて近付いた。そのスピードに気付いたけいぶんが稲妻を纏って彫刻がやるっきーを殺る前に殴り飛ばす。

 彫刻の顔面がへこみ、瓦礫に倒れ込む。

「コイツは…」

 けいぶんはふとスマートウォッチで彫刻をスキャンする。するとすぐに情報が表れ、どうやら『scp-173』

 名は『彫刻オリジナル』奴は目を合わせてないとその対象の首を素早く織る。まず、何があったかさかなに聞くとさかなは頭をポリポリと掻きながら言った。

 ー数分前ー

 さかなとはむがウロウロと歩いていると目の前で車が燃えていて、周りに首が折られていた自衛隊達がいた。さかなとはむは武器を構えて辺りを見回すと、不気味な彫刻が立っているのをはむが見つける。反対側を見回すさかなに声を掛けた瞬間だった。ゴキッ!!と鈍い音が鳴ると共にはむの首は折られていた。

 と今の現状となる。逃げて来たらたまたまけいぶんとやるっきーと合流した訳だ。だが再び、過去の話をしていると彫刻が立ち上がっていた。さかなは抱えていたはむを地面に寝かせ、けいぶんとやるっきーも武器を取り出す。彫刻を睨みつけ、いざ体勢を屈めた瞬間。

 ドォォ~~~~ン♪

 駅から不吉な音が聞こえ、けいぶんが振り向けば謎の少年が剣を持って歩いて来ていた。少年の格好は高貴高き何処かの城に住む貴族のような服装をしていた。

「賢き者は、武体を盾とし、時に矛として使う」

 そして、少年は剣を構えて印を唱える。

「『我が万物に力と栄光を…』」

『紅蓮華!!』"ぐれんばな"

 すると剣は赤く染まり、少年の周りに3つの赤い光が浮かぶ。

「アイツは、俺が相手する。やるっきーとさかなは、彫刻を頼んだ」

「応!」

「任せろ!」

 けいぶんはやるっきーとさかなの背を守るように振り向き、少年に刀を向ける。

「お前の相手は、俺だ」

「清く正しく!!」


 ー渋谷スクランブル交差点ー

「はぁはぁ…はぁ」

 血だらけでボロボロなまるしぃは膝が上がらず、立てない状態であった。すると、大剣を持った女がまるしぃを蹴り飛ばす。そしてそんなまるしぃを嘲笑う。

「ほら、どうしたの?もっと頑張りなさい」

 ジャキン!

 女は瀕死のまるしぃに留めを指す瞬間だった。

「危なァァァイ!!」

 突如、まるしぃを庇った男。だが、攻撃を諸に喰らい、肩から腹まで裂かれた。だが、彼は悲鳴一つすら上げず、それどころか決め顔をして女に喋り掛ける。

「君、可愛いね。良かったら今からお茶しない?」

「「!!?」」

 まるしぃと女は冷たい眼差しを彼に向けるとそれに気付けば彼は怒りながら女を弾き飛ばした。そして女に指差しながら言った。

「居るんだよ!!そうゆう誘いにYASかNOすら言わずに冷たい顔しやがる女がッ!!」

(何この人…)

 だが、そんな彼の傷を見れば、ゲームキャラのバグのようなホログラムに傷は包まれ、気付けば治っていた。そして、振り返ってまるしぃの頭を優しく叩く。

「大丈夫か少女よ。だが、安心しろ。この東雲斿貴(しののめ ゆうき)が助太刀するぜ!!」

「何よ…アンタ。私とまるしぃの邪魔をせるなんてッ!!」

 大剣を構えて突進して来る女を糸も簡単に斿貴は片手で弾き返したが、その一瞬をまるしぃは見逃さなかった。彼の手は分身するかのように一撃が連打に変わっていた。

「ねぇ、貴方は何者ナノ?」

 人と話すのが苦手なまるしぃが恐る恐る尋ねれば、斿貴は笑顔で返す。

「俺は自由気ままに生きる28独身だ。そして俺の能力は…」

 斿貴の後ろで飛び上がり大剣を振りかざす女。その一撃を瞬時に避けて言った。

「『魂魄』源郷『バグ』さ!!」

 そしてまた、女を軽く押すとその威力絶大で近くのビルへと吹っ飛ばす。すると忘れてたかのように斿貴は振り返って尋ねきた。

「ところで、彼女は誰だい?」

「私の…姉です」

 その答えに少し考え事を始めたが、ひらめいたような表情をすると共にまるしぃの肩を叩いて言った。

「もしかして、姉妹喧嘩か?(笑)」

(殴りたい…この人!)


〖様々な場所で起こり入り交じる〗


(おまけ)

〖買い出し中食料組〗

 ある日の午後のこと、食料組は買い出しに行っていた。それは、家の分と喫茶店で出す新メニューの食材である。それにしても今日はやけにショッピングモールの中は混んでいた。そんなことは気にせず、食材コーナーを見るはむとやるっきー。

「こっちが良いかな?」

「そだね」

「なぁなぁ、お菓子買ってくれよ~♪」

 さかながお菓子コーナーから菓子を持ってきた。はむは勿論、「駄目だ」と答え、さかなはしょぼんとした顔になりお菓子を戻しに行った。

「ハムも優しくないねぇ」

「今日は材料だけだ」

 やるっきーは腕を組んで苦笑いをした。その後は本屋やゲーセンに寄って暇を潰して過ごした。そろそろ帰ろうと外に出れば、雨が降り始めていた。

 ザーッ…

「…傘あるか?」

 はむがやるっきーに聞くとやるっきーが折り畳み傘を取り出す。だが、さかなは入らなくても大丈夫だ。なぜなら…というよりかは『なぜか濡れない』からが正解だろう。そして、はむとやるっきーは傘の中に入り、さかなは雨空を見上げながら堂々と歩いていた。それにしてもやはり不思議だ。さかなの着てる服は至って普通の服なのになぜか水を弾いている。

「なんでアイツは濡れないんだろう…」

「それは俺も同感だ」

 はむとやるっきーの脳内でさかなはどうして濡れないのか何となくわかってはいるのだがそれでも不思議なものは不思議のままだ。少しして荷物を持って歩いていると道端にずぶ濡れの段ボールがあり、そこから猫の鳴き声が聞こえた。さかなはふと段ボールの中を覗くと、汚れた黒い子猫が踞っていた。

「…なぁはむ。コイツ拾うわ」

 さかなの意見も十分わかっていたが誰が飼うんだと考え込む。するとふとるるが言ってたことを思い出す。

(ねぇはむ~、僕小さな猫が欲しいんだけどちょっとペットショップ見てきてくれる?)

「…いいじゃん」

 その後、家に帰宅しるるに黒猫を渡す。そして皆がお腹を空かせていた為新メニューを振る舞ったのだった。


〖楽しく生きて〗


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