涼宮ハルヒの誕生

豊多磨イナリ

涼宮ハルヒの誕生

 その日、俺はいつにも増して最悪な目覚めをした。ぐるぐる視界が回るような眩暈と嘔気をもよおし覚醒した。昨日夜遅くまでテレビを親に隠れて見ていたからだろうか。今後は目に刺激を与えるような行動をしてから就寝するのはよそう、そう思った刹那妙な感覚が稲妻の様に体中を巡った。


「俺は…神的な力を得たらしい」


 どうやらアニメやら漫画やらの見すぎでとうとう俺の頭が狂っちまったらしい。今度に高校受験を控えてるというのに、こんなんじゃ滑り止めにも受かりそうもないな…心を入れ替えないと。

 その後、俺はいつも通り朝飯をかっ喰らい、制服を急いで着て学校へ向かった。頭も目もすっかり覚醒したと神にさえ自信をもって言える程度には目が醒めたにも拘らず、神的な力を得たという俺の直感は揺るぐことはなかった。いや、寧ろよりその直感は強くなるばかりであった。

 いつも通りすぎて体中に寒気をを感じる1日を過ごし、放課後、俺は自宅に急ぎ帰った。

 「さて、この直感どうするか…」

 一人しかいない俺の部屋、兄弟も姉妹もペットもいないこの静まり返った自室で溜息をした後でそう小声で呟いた。あまりに馬鹿げた直感であることは他人に指摘されるまでもなく自分が最もよく理解っているつもりではあったが、どうも何でも出来そうな気がしてならない。いや、一層のこと遊び半分で試してみるか。そう心の中でつぶやきながら立ち上がるととあることをやってみることにした。


 最近のアニメの妹はどうも兄になつき、兄に干渉してきてかつ顔面が可愛いのが多すぎる。他方俺には依然として春がくる兆しはアップクォークの半径ほどもなく、妹も姉もいない。一番近い女性の存在と言ったら母くらいだが不運にも俺の母には萌えない、というか母に萌える息子なんぞ天の川銀河の隅から隅まで探したって片手に数えられる程度しかいないだろう。俺は妹が欲しい、そう可愛くて俺に干渉してくるようなそんな妹が欲しい。試しに妹がいたことにしてみよう。しかし神的な力を得たという直感が降ってきたまでは良かったのだが、その力の使い方は知らない…いや、知っている。何故か知っている。この感覚をどう表現したら良いのか全く分からないし、今の俺の気持ちを上手に表現することが可能な語彙は何千年、はたまた何万年もかけて進化してきた世界中のいかなる語族のいかなる言語を参照しても発見できないだろうが、神的な力とともに俺に使い方まで降ってきたとしか言いようがなかった。半信半疑でその力を使ってみる。


まずは、目を瞑り俺に妹がいた世界線を想像しながら、その日常をイメージする。顔は可愛く年齢よりも幼めで、年齢は俺より5歳程した。家に返ってくると大抵俺の部屋に無断で立ち入っており、面倒くさそうに俺が妹を部屋の外に締め出す…なんていう想像というか妄想を数分かけて錬成する。イメージが判然とした所で、妹の顔の形や背恰好、声、髪色などをイメージする。そして、最後に心の奥に力を込めた後に手を上に向け強く念じる。




何も起こらない。


まぁ、だろうな。

下らん。


妙に疲れてしまったので、制服のままベッドの上で仮眠をとった。


寝たことにも気づかずに睡眠すること数時間、誰かが俺を起こしにきた。


「キョンくん〜ご飯できたよ〜」


うるさいなもう少し寝かせろ。目を開くとそこには、見知らぬ幼女がいた。


「どうしたのキョンくん〜」


知らん、俺はこんなやつ知らん。まさか、俺の妹…?いや、そんな馬鹿な…俺に妹はいない…

「お前は誰だ?」

俺はそう幼女に質問をすると、怪訝そうな表情とともにこう言い放った。


「何寝ぼけてるの〜?キョンくんの妹だよ〜?ご飯さめちゃうってお母さん呼んでるよ〜」


ば、馬鹿な…そんな…妹………?

もしかして本当に妹が…いや……いやいやいや………

うん…違う親戚の子か何かに違いない…うん…


そう胸に語りかけながら、食卓に向かい母親に質問した。

「なあ、この娘誰だ?親戚にこんな女子いたか?」


「何馬鹿なこと言ってんの?あんたの妹でしょ!ご飯冷めちゃうから早く食べちゃいなさい!」



妹…本当に妹ができちまった……それも最初からいたことになってるじゃねぇか。一体何だこれ…夢か……エデンの園か……はたまた幻覚に幻聴………


しかし何度頬をつまもうが頭を殴ろうがその夢は覚めようとしない。どうやら現実らしい。現実に俺に妹ができちまったらしい。どうやら俺の力は本物らしい。どうやら…どうやら…嬉しいやら苦しいやら、何とも表現しがたい感覚に包まれながら俺は夕飯を食べ終わると急ぎ自室に戻り、いつもの数倍早い時間に就寝した。頼む夢なら冷めてくれよ。



翌日、目覚ましを止めたかどうかも記憶してない中ノックもせずに何者かが自室に侵入し、俺の上に馬乗りになった。やばい強盗だったとしたら俺は死んだな。母、父、ありがとう。そして妹…妹…?


「キョンくん起きて〜朝だよ〜」


この声には聞き覚えがある。俺の妹を名乗る謎の幼女の声だ。目を開くと丁度昨日見たばかりのその顔が目の前に見えた。どうやら夢ではなかったらしい、うん夢ではなかったらしい。


その日、俺は学校へ行く通学途中少し考え事に耽っていた。この力を使えば自分の思い通りの世界に改変できてしまうのではないかと。考えただけで顔がニヤつきそうになる、というか現にニヤついていたらしくその顔を見て何者かが話しかけてきた。


「おい、人間」


誰だ。あたりを見渡すが特に該当しそうな人間は一人もいない。というか人間を人間と呼ぶ無礼な奴がいるのだろうか。というか無礼かどうかも分からん。


「ここだよここ」


どうも、声が下からするような気がする。一応下に目をやってみるとそこにはオスの三毛猫が一匹こちらを向いている。猫にしては可愛げのない顔だ。


「人間」


猫が喋った。何だよこいつ喋るのかよ。喋る猫とか、こりゃテレビに出れるな。明日あたり新宿にでも行ってテレビ会社かなんかに押し入ってみるか。


「そんな馬鹿なことはよせ、お前にしか私の声は聞こえん」


そうなのか。そりゃ残念だ……というか、すでに猫が喋っている時点で腰を抜かしそうなんだが、お前は誰だ。


「そうだな、シャミセンとでも名乗っておくか」


変な名前だな。ま、俺の友達の猫に阪本って奴がいるからそれに比べたら普通の名前かもな。所でお喋り猫さんが俺に何か用か?生憎俺は今学校に向かう真っ最中だから急用ならとっととしてほしいし、別に今じゃなければ放課後か休日にして欲しいのだが。


「今日のこの時間でなくてはならない」


んな馬鹿な。


「私が猫の体を乗っ取れるのには時間に限りがあるからな」


この猫も隨分と可哀想だな。訳のわからないやつに憑依されちまって。まるで寄生虫に脳みそ支配されたカタツムリじゃねえか。


「人聞きの悪いことを言うな、ともかく私の言う通りにしろ」


何でだ。俺は全くもって意味が分からなかった。野良猫に憑依した顔も何もかもわからないやつの指示通りに動く必要がなさすぎる。第一俺にメリットがあるかも分からないしな。申し訳ないが猫さん、名前はシャミセンって言ったかな、俺は何でも自分の思い通りに出来るんだ。自分の命が惜しかったらさっさと帰りな。


「お前にその力をやったのは私だ」


シャミセンとかいう猫は問題を起こした大手企業の記者会見のような真面目かつ切羽詰まったような声で俺にそう言ってきた。だが、これも俺を振り向かせるための冗談に過ぎないだろうな。悪いがその面白くも何ともない冗談に付き合うほど俺は真面目でもないし、時間に余裕もない。そう呟くと刹那、突然気味が悪いほどの沈黙が訪れた。人の声、車の音、鳥の囀り、風の音、靴の音、飛行機の音…全てが消え去った。そして、あろうことかカラスが空中で止まっていた。何もホバリングを行っているのではない、羽も止まっている、まるで時間が止まっているように。いや、時間が止まった…?


「そう、今私が止めたのさ」

「今宇宙の中で動いているのは私とお前だけさ」


何だと。こいつが俺と猫以外のあらゆるものの時間を停止させたのか。


「何ならお前の心臓だって止められるさ」


やめてくれ。


「ならば私の話を聞け」


5分だけなら良いのだがな、どうもそれよりも長くなりそうな予感しかしない。しかし心臓を止められちゃ困るからな、ここは大人しく話を聞くことにしよう。俺は項垂れたように手を眉間に当てシャミセンとかいうオス三毛猫の話を聞くことに同意した。すると突然音が復活した。街の喧騒、その全てが恐ろしいほどの沈黙を破り鼓膜を刺激しだしので思わず耳を塞がずにはいられない。


「いいか、お前は好きに宇宙を改変できる」


まだ準備も整っていないのにシャミセンが一方的に喋りだした。せめてこの喧騒に耳が慣れるのを待ってから話してほしいもんだね。「それで、俺は何をすれば良いんだ」俺は面倒臭そうに、いや現に面倒臭くそうシャミセンに尋ねた。会話がどうも噛み合っていないが、如何せんよく聞こえなかったもんでどうか許してほしい。


「ふむ、話が早いな。そう、私はお前に是非ともやってほしいことがあるのだよ」


そうかい。


「お前は非現実的な日常を目下求めているな?」


言うまでもない。この完全ルーチンワーク化した日常とかいうやつに飽き飽きしていたところだ。入試、定期考査、授業、塾…現実逃避したい要素だけならば日本の誰にも負けない自信があるぜ。


「なら、そうしろ」


は?


「私がお前にやってほしいことはただ一つ。お前の思う非現実を、現実逃避的な日常を、実現させろ」


意図が分からん


「それは禁則事項だ」


それは許さん。是非とも教えてほしい。


「無理だと言っている。どうしてもと言うのならば教えて刹那、お前を殺す」


それは嫌だな。俺の人生がぱっとするものではないことは自明だが、まだまだやり残したことは人間の掌にいる細菌の数ほどもある。こんな能力を得ちまったときたら尚更だ。で、その現実逃避的な日常ってのはどういうものだ。俺は何を実現させれば良い。ハーレムか?


「それはお前が考えろ。ハーレムでも、世界征服でも、宇宙征服でも、核戦争でも好きにしろ」


核戦争だけは避けたいね。でも、自分で考えろとはこりゃ迷うな。何か候補を指し示してほしいね。その禁則とかいう謎の言葉ではぐらかすのはなしで頼むぜ。


「そうだな。お前の能力を見かけ上人に譲って、お前が振り回される、なんてのはどうだ」


何だそれ。分かり辛いな。もっと分かりやすく言え。


「ニャア」


あ?


「フニャア」


俺がもっと分かりやすく言うことをシャミセンに希望したが、もうその猫はニャアとしか喋らなかった。いや、鳴かなかった、か。都合が悪くなったら猫に戻るなんて隨分と自分勝手な奴だな。是非ともこの様な行為は謹んでほしいね。特にこんなシチュエーションでは尚更だ。

 俺はその後、とっくに始業を告げるウェストミンスターの鐘が鳴り終わってから教室に侵入することとなった。それでも高校受験のために内申には気を付けているんだから、あの猫にはどう責任をとってもらおうか。

 その後、どう宇宙を改変すれば良いだろうかと考えあぐねている間に気がついたら放課後になっていた。まぁ、いざとなりゃこの能力でどこの高校だろうが入学できるだろうから良いけどな。


放課後、どうすれば良いかと心ここにあらずという感じで歩いていると一人の可憐な少女を見かけた。長く黒い髪を伸ばし、カチューシャをした、笑顔が素敵な少女。自分と同じくらいの年齢だろうか。その隣には何ともムカつくような、しかしながら女子にはモテそうなハンサムスマイルを有する男子中学生。二人は友人同士か、或いは恋人同士か?兄妹ではあるまいな。可愛い、あの少女を俺の友人に、いや恋人にしたい。俺の能力を使えば…いや…そこでシャミセンに言われたあの言葉を思い出す。


『『お前の能力を見かけ上人に譲って、お前が振り回される、なんてのはどうだ』』


あの少女なら、あの少女ならこの能力を見かけ上譲っても構わないし、いくらでも振り回されたっていい。俺はそう思い、あいつの名前を調べることにした。いや、調べるまでもない、俺の能力を使えば名前を知ることなど赤子の手をひねるようなものだ。

 俺は目を瞑り、あいつらの名前を俺に授けるように願った。






涼宮ハルヒ



古泉一樹






いい名前だ。古泉とか言うのはどうでも良いが。

しかしながら、どうすれば良い。何をどうすれば良いのだろうか。あの涼宮ハルヒとかいうのに譲ったとして、その後の物語をどう進めれば良い。俺が小説家なら、いや著名な小説家ならこの後の物語をどう進めていくだろう。そう考えていると、いつぞやのシャミセンの声がどこからともなく聞こえてきた。猫は周りにいないし、その他該当する人間や動物も近くにはいないようだ。人間の脳内に直接話しかけることができるなら、三毛猫の外見を借りるのではなく、初めからこうしてほしかったね。


「皆同じ高校生に進めれば良いだろう」


は?


「同じ高校に進むことにして、そこで出会うことにすれば良い」


それだけ言うと声は聞こえなくなった。なるほど、でもそれならごく自然に出逢うことができるだろう。しかしどこの高校にするべきか、まぁ、これはそのうち決めれば良いか。その後俺は我が家に帰宅し、自称妹の幼女の相手をしながら考えていた。


「キョンくん〜何考えてるの〜?」


いや、こっちの話だ。お前には関係ない。そう言い、俺はどうすれば良いか考えていた。どうやって出逢うか、どこの高校で出逢うか、夕飯の途中や入浴中、就寝前、ずっと考えていた。

 翌日、とうとう俺は良い案がまったく浮かばずいつの間にか夢の中にいた。しかし、非常に妙な夢を見たことを確かに覚えている。それは、俺がどこかの高校の狭い部屋であの涼宮ハルヒさんと古泉一樹さん、そして見知らぬ女子高生二人と駄弁っている夢であった。いつもであれば確実に夢から覚醒すると同時に頭の中にある引き出しの奥底にぎゅうぎゅうに押し込められるような夢だろうが、この状況である、鮮明に覚えている。残念なのが残りの二名の女子高生の顔や名前を記憶していないことである。まぁ、しかたない。そんなことを思いながら、夢うつつか頭がはっきりしてるのかわからない、はたから見たら寝ぼけているだけのような足取りと表情で制服に着替え、朝飯を脳死で喰い、学校へと向かった。その通学途中実に美しい女性を見つけた。あれは、制服から判断して北高校だが、実に高校生に見えないほど幼くしかし実に育つところは育っている美少女だ。一年生だろうか。一緒に行動している複数人の女性もとても美しく見とれるほどだった。

 以前行ったものと同じ方法で、目を瞑りその女性たちの名前を得た。





朝比奈みくる

喜緑江美里

鶴屋...





なるほど、あの人たちも俺と一緒に行動することにしてもらおう。そう俺は勝手に決心し、目を少しばかりきりっとさせ学校方面へ歩き始めた。

 その後、いつも通り聞いているのか聞いていないのか、いや聞かなきゃまずいんだが、授業を淡々とこなしていき放課後、今日は妙な宿題が出題されたせいでその日は近所の市立図書館へ赴くこととなった。全く、受験を控えているというのに図書館へ行くことがほぼ確定するような宿題を出すなんてあの教師はさぞかし頭がおかしくなっちまったに違いない。俺は放課後、特にすることもないので足取り重く、真夏の昼を散歩させられている犬のような足取りで図書館へ向かった。これも内申のためだ。いや、まぁ内申とかどうでもよくなってきたのだがな。

 図書館へ入ると一人の女子中学生、恐らく俺と同学年と思しき方が落ち着きもなく貸出カウンターの前で挙動不審にそわそわしていた。はっきり言って不審だ。あれが中年の男性であれば十中八九Gメンに目を付けられるだろう。果たしてとこんな田舎の市立図書館にGメンがいるのか不明だが。そもそも図書館にはGメンがいたりするのだろうか。そんなどうでもいいことを考えていたのだが、周囲の人は大人も含めその女性に声をかけようとしない。そんな大人たちに腹が立ったのか、あるいはその女子中学生が容姿端麗だったか俺はその女子中学生に声をかけてみた。

「何かお困りですか」


「あ、えと...は、はい、いや」


随分と焦っているらしい。どうした、トイレの場所がわからないのだろうか。


「いや、くだらないことなので...いい、です.......はい」


彼女はこちらに目を合わせることもなく、かと言ってこちらに嫌悪感を抱いている感じでもない表情で頬と耳を少々赤らめて見せた。いやいや、大丈夫ですよ。お困りのことがあれば何でも伺います。


「あぅ。あの、、、、、券が」


券がどうした。


「券が作れないんですぅ」


券とは貸出カードのことか。そんな訳あるか。俺はそういうとその辺で見た目慌ただしそうにしていた職員をとっつかまえ貸出カードはつくれないのか聞いてみた。


「いえ、作れますよ~なんだったら今作りましょうか?」


作れるじゃねえか。その女子中学生は自分から行動しようともしないので名前を聞き出し俺が代わりに貸出カードを作ってやった。名前は





長門有希






可愛い。なにより少し照れているのか困惑しているのか、頬を赤らめる姿は異常なまでに可愛かった。あの涼宮ハルヒさんと比較してもそうとうだ。眼鏡をかけてなければもっといいのにな。こいつも一緒にいたいと思わせる何かがあるな。

 その後、その女子生徒と別れ、俺は借りる本だけ借りて帰宅した。しかしながら宿題には全く手がでない。というのも、これで夢で見たその俺を含めた5人が揃ったからだ。あとはどういうシチュエーションでどう出会うことにするか。それだけだ。


「やぁ人間」


家の中でもお前の声を聴くことになるとはな。というか、いつでも俺の脳内に話しかけられるならもっと前に話しかけてほしかったがな。


「設定にお困りかな」


あぁ。


「なら、未来人とか宇宙人とか過去人とか超能力者とか適当に決めてみてはどうかな?」


何も思いつかなかったらそうさせてもらうよ。ただ、そんな小学生レベルの設定しか思いつかないへなちょこ神にはようはない。とっとと帰りやがれ。俺は設定を考えつかないといけないんだ。


「分かったよ。あと俺はへなちょこ神ではない」


そうだったな。確か沖縄の楽器みたいな名前だったな。


「あぁ、でもそれはコードネームみたいなものだ、俺は神ではない」


神以外が神を誕生させられるのか。


「私は



情報統合思念体









なんだそりゃ。そのナントカ体について教えろ。


....


あぁ、俺が帰れといったから帰ったのか。全く気になることだけいって帰っちまうんだから嫌な奴だな。あんな変な呪文は気にせず設定を考えよう。そして数時間、夕飯も風呂も終え、ついに何も思いつかなかった。これは甚だ不服ではあるが、あのシャミセンとかいうやつの案を借りることにしよう。

 それから一時間ほどかけて次のような設定を考えついた。




・涼宮ハルヒ

 俺の能力を見かけ上この女性に移した上で、北高校に進学させる。


・長門有希

 ナントカ体によって作られた宇宙人。なんでもできる。眼鏡は外させる。北高校に進学させる


・朝比奈みくる

 未来人。未来からきたというのに何も知らせれていなく、頼りなく、守ってあげたくなる存在。北高校に進学させる


・古泉一樹

 ずっと怪しいハンサムスマイルをきめている超能力者。いつも超能力を使われては困るので、限定的な条件下でのみすごい。北高校に進学させる


・俺

 普通の高校生。北高校に進学する。


......





我ながらいい設定を思いついた気もするし、非常に幼稚な設定な気もする。


「いい感じじゃないか人間」


いつの間にか。ほんとにその脳内に話しかけるの気持ち悪いからやめてほしい。


「無理だ」


はいはい。


「あとの細かい設定は私が行っておく。そして、お前からはその能力を一時的に凍結させ、涼宮ハルヒにその能力を発現させる。」


ほう。


「そして、お前のこれまでの記憶も一時的に凍結させてもらう。」


なぜだ。


「禁則事項だ」


はいはい。


「それでは、時空と歴史の大規模な改変を行う」


いやいや、ちょっと待てこっちにも心の準備があるんだ。すこしばかりまってはくれない。俺はそういったが、既にシャミセンの声はしなかった。

 それから五分程度経過しただろうか、俺は突然強い眩暈に襲われ一時的に意識を失った。











 俺が意識を消失してからどれほどの時間がたっていただろうか、いやただ眠っていただけか。んぁ?今日は何日だ。今日は、いや、4月も頭、俺が合格した北高校の入学式じゃねえか。急がねえと。

 そして、俺はその日、見たことあるようなないような、いやない、見たことがない謎の少女に出逢い、驚愕をせざるを得ない自己紹介を聞かされることとなった。





ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。









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