Case File 1:アルドマティ地下礼装事件

第2話 1章:Case File 1: Aldomati Underground Attire Incident

ーーー魔術探偵事務所。

普段は人も寄り付かないこの場所に、1人の依頼人が訪れる。

「あ、あの〜ここはあの魔術探偵さんであってます

 かね……」

その問いに静寂が返ってくる。

「あれ……いないのか?」

その時

「なにか御用ですか?」

後ろからいきなり声をかけられる。

「え、う、うわぁァァァ!?」

気配もなくいきなり話しかけられ、依頼人は転倒する。

「……あ、すいません。大丈夫ですか?」

「は、はい……すいませんでした……」

「いえ」

声と差し伸べてきた手の大きさで女だと分かった。

「それで、なにか御用でしたか?」

「あ、はい……依頼を、したくて。」

「男の人がいませんでしたか?」

「い、いいえ?」

「……わかりました。少々お待ち下さいね」

最後の方は女の声に若干の怒りを感じた。

そして、事務所の奥に女が消え、激しめの物音と怒りを込めた罵声が聞こえた後、紳士服に身を包んだ男が現れた。

「いやいや、すみません。依頼だったかな」

「は、はい……」

「入って内容を聞きましょうか、どうぞ中へ。」

中に入ると、そこは事務所というよりは、汚部屋だった。

あちらこちらに散乱した紙、乱雑に高く積まれた本、そして棚に綺麗に並ばれた場違いな骨董品。

「うわぁ……」

魔術探偵同業者は初めてで?」

男は1人用のソファに腰掛け、足を組む。

「は、はい。……因みにこれって」

依頼人が棚の骨董品に近づく。

「あー……それは近づかないほうが良いかと。魔術

 がかけられている代物ですからね。」

「えっ!」

慌てて依頼人は体を引っ込める。

「まぁ、立ち話も失礼なので、どうぞソファに」

依頼人は男が促す通りに多人数用のソファに腰を下ろす。

「先ずお名前を」

「レーンハルト・アルドマティと言います」

「ほぉ、ということは西側ウエストリアの出身で?」

「はい、よくわかりましたね!」

「まぁ、ある程度わかりますからね」

先程の女が紅茶を差し出す。

「どうぞ。」

「あ、ありがとうございます」

先程は驚いて気づかなかったが、彼女は少女だと分かった。が、顔はローブで隠れていた。

「レディ、私の分は?」

「ありません。これが最後の茶葉です」

「それを買いに頼んだはずなんだけれど?」

品切無かったれです。」

レーンハルトは少しばかりの申し訳無さを感じた。

そのうちに男と少女の会話は終わり、少女は男の後ろにまわり、待機した。

「それでは、改めて自己紹介を。

 私は……まぁ、『探偵』と呼んでいただければ 

 そして後ろの彼女はレシファ。私の助手を務めて

 います。」

レシファが小さく頭をさげる。

それにつられレーンハルトも頭を下げた。

「それでは……依頼内容をお伺いしましょうか」

「は、はい。依頼したいのは僕の恋人を探してほし

 いんです。」

「恋人が欲しいなら恋人相談所に……ん゙ん゙っ、冗談

 です。」

レシファの目線殺気を感じたのか、探偵は言葉を取り下げた。

「い、いやそういうことじゃなくてですね……

 僕の恋人のアミーシャがいなくなってしまって」

「浮気かなにかしでかしたわけでもなく?」

「はい……」

レーンハルトはカバンから小さな紙切れを取り出し、探偵とレーンハルトの間に存在するテーブルに置く。

「ある日突然いなくなって……その時にこの紙があ

 ったんです」

探偵はそれを取り、紙切れをまじまじと見つめる。

「他の探偵にいっても門前払いで。ここしかなく

 て……な、なにか魔術かなにかのせいならなんと

 かならないかなって……」

「……ふむ。わかりました。その依頼、お受けしま

 しょう。依頼料は内容次第ですが、よろしいです

 か?」

「は、はい!ありがとうございます!」

「それでは契約書にサインを」

探偵は棚から契約書と羽ペンを取り出し、レーンハルトの前に差し出す。

羽ペンに少し戸惑いながら、レーンハルトは契約書にサインを書き終える。

それを探偵は取り、確認し終えると契約書をレシファに渡す。

「確かに受理しました。早速ですが、明日貴方のお

 宅にお伺いさせていただきます」

「はい、わかりました!」

少し会話を交わし、レーンハルトは去っていった。

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魔術探偵 〜助手:死神のノート〜 MasterMM @Mastermm

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