第5話 1月25日9時20分 クイズ大会
9時ちょっと過ぎに、サロンカーへ向かう。9時20分からは、車掌さん主催のクイズ大会が開かれる。サロンカーに今度は文乃さんもいた。やっぱり会えるとうれしい。
「千里くん、おはよう。よく眠れた?」
「おはよう文乃さん。昨日はありがとう。ぐっすり眠れたよ」
気恥ずかしくてなかなか寝付けなかったとは言えない。
車掌さんがやって来て、クイズ大会が始まった。
第1問、トワイライトエクスプレスが運行を開始した年は?
僕も文乃さんも手を上げたが、賞品は一番早く手を上げた人へ。答えは1989年。
第2問、それでは運行を開始した月は。
文乃さんは手を上げたが、僕はそこまで覚えていなかった。残念ながらこれも文乃さんは賞品を逃した。答えは7月。
第3問、それでは、と車掌さんが言いかけたところで、文乃さんが元気よく手を上げた。
「問題の途中ですが、どうぞ」
「7月21日!」
「正解!」
おお、文乃さん、やったね。運行開始日まで覚えていたんだ。
「私の誕生日なの」
トワイライトと同じ誕生日とは!それはすごい、すごいよと、僕はまた文乃さんの手を握りしめてしまった。
そのあとは結構わかりやすい問題が続いたけど、元気なおじ様おば様たちがつぎつぎと賞品をゲットしていった。トワイライトというと主に鉄道ファンが乗るものだと思っていたのだけれど、どうやらそうでもないらしい。みんなに愛されていたからこそ、25年以上運行を続けることができたのだろう。
クイズの出題は終わり、最後の希望を託したジャンケン大会で、僕は奇跡的に勝ち進んでいった。賞品はサロンカーにかかっていた、車掌さん3人のサイン入りの安全運行祈念絵馬。
そして、決勝戦で僕は散った。
ああ、ここまでだったか。文乃さんが慰めてくれたのと、準優勝者も車掌さんのサイン入りの乗車証明書がもらえたので、負けても悔いはない。ないったらないよ。
クイズ大会が終わり、僕たちはまた部屋に戻った。僕の部屋は進行方向右側だから、すれ違う列車が見えるよとお誘いしたら、文乃さんは来てくれた。だめだよ、そんな甘言に簡単に乗っちゃ。
485系の快速くびき野(国鉄色!)や特急はくたかと計算通りにすれ違ったので僕は面目を保ち、文乃さんも喜んでくれた。
ただ、このトワイライトもそうだけど、みな廃止が近い列車なので、ちょっとしんみりしてしまう。
「でも、だからこそこうして見てあげなくちゃ」
どうもこの年代は女の子の方が大人びているみたいだ。
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