第3話 1月24日18時00分 サロンカー
ところで、お腹が空いてきた。もう18時を過ぎた。
「あの、もしかして食堂車のディナーを予約してますか?」
「高校生には高嶺の花よね。パブタイムは行くけど、それまでは買っておいたおにぎりとかでしのぐわ」
あ、それならば。
「僕も同じです。よかったらここで一緒に食べませんか」
「いいわ」
二人とも部屋にいったん戻り、買っておいたおにぎりやサンドイッチを手に再度サロンカーに向かう。
空いていた窓側のカウンター席に二人並んで座る。誘ってはみたものの、どうお話したらよいのか。あ、自己紹介がまだだ。
「あの、僕は石山千里と言います。東京の高校1年生です」
「私は中島文乃。同じ高校一年ね。広島から来たの」
広島か。さっき彼女はお父さんが札幌にいると言っていたけれど、広島に帰るにはもちろん飛行機の方が早い。僕は札幌も大阪も縁がない。つまり、二人ともわざわざトワイライトを選んだ同志だ。
「今日のトワイライトを選んだのは、もしかして」
「そう!24時間超えだから!」
ということは、ダイヤ変更がなかったら出会っていなかったんだ。
同志とわかったからかどうか、話が弾んだ。彼女はやっぱり鉄道が好きで、高校に鉄道研究会がないのが残念なのだそうだ。
鉄研を創ろうかとも思ったけど、お父さんが転勤族で、自分も転校があるかもしれないので、そこまでできなかったとのこと。
「あ、そろそろ行かないと。シャワーの予約時間なの」
彼女が急に声を上げた。腕時計を見たら、もうすぐ19時。19時のシャワールームAを予約したのは、彼女だったのだ。
「あ、あの、僕も19時からシャワーなんですけど、15分くらいしたら行きます」
謎の気遣いをした僕を誰か褒めてほしい。その気遣いが効いたのか、パブタイムもご一緒する約束を取り付けることはできたけど。
パブタイム開始の21時30分の10分前に、僕は食堂車ダイナープレヤデスに並んだ。無事に列の先頭を確保でき、すぐに彼女、中島さんもやってきた。
パブタイム開始とともに僕たちは食堂車に招き入れられ、向かい合わせの席に座った。僕はステーキピラフ、中島さんはワタリガニのスパゲティを頼んだ。
目の前に座っている中島さんは満面の笑顔だ。
「中島さん、本当にうれしそうだね」
「文乃でいいよ」
「じゃ文乃さん、僕も千里で」
「千里くん、何がうれしいかわかってる?」
え?まさか僕と一緒に食事ができてうれしいとか?
「今回は三食ここで食べられるんだよ」
あ、そういうことか。ダイヤ変更により、本来札幌発ではやっていないランチ営業が、ビーフシチューセットのみだがあるのだ。
「うん、24時間乗っているんだから、三食は必須だね」
ディナータイムと合わせれば、四食も可能は可能だけれどね。
回りの大人たちはお酒を飲んで盛り上がっているけれど、僕たちは食事を終えて食堂車を出た。次の予定があるのだ。
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