第9話 UMAっていないって思ってるからこそのロマンよな
それからしばらくは、大学行ったり、敷地内で運転の練習したりの日々だった。
怖いもので豪邸暮らし、不思議住人、高級品に囲まれた暮らしに慣れてきてる。
俺は下界に帰らねばならないのに。
そうそう、後の二人にはいつ会えるのかな?って思ってたら、一人には会えたよ。
庭でドSに教官してもらって自動車乗ってたら、奥まった場所に離れがあって。
ドSが「今日なら良いか」とか言って紹介してもらうことになった。
本邸にいっぱい部屋あるのに何故離れを使うのか?
「雪音さん、起きてるか?」
和風のお家の引扉を開けるとめっちゃ寒かった。
「あらぁ、響子ちゃん。おひさぁ?」
「雪音さん、この子が舜さまだ」
「まぁ~!蘭ちゃんににてないのねぇ?かーわいい」
真っ白な着物を来て、真っ白な髪で射干玉色の瞳は俺の心の内を見られそうで怖い気がする。
透き通るような白い肌をしてて、生命力の塊な姐さんやドSにはない儚さを感じる。
「舜ちゃん、私は雪音。蘭さまにお家を作ってもらって楽隠居な雪女でぇす♡」
ん?雪女?
「雪女はおとぎ話・・・」
「まぁ~!昔は私以外にもいっぱいいたし、普通に人間と結婚もしてたのよぉ」
普通に!?
昔はって貴女はいくつ・・・。
「だから純血種がいなくて絶滅危惧種だけどねぇ」
コロコロ笑う雪音さんが俺の腕を抱き、イタズラに息を吹きかけてくる。
・・・寒い。冷たい。
「うふふ、私は暑いところ苦手だからこのお家は業務用冷凍庫みたいに作ってもらったのよぉ~」
えーと、マグロとか吊るすようなでかいヤツですか。
「蘭ちゃんのおかげで快適に暮らしてるのよぉ~。だから早く帰ってきてくれると良いわねぇ?」
そう言いながら俺の頭を抱きしめた。
役得!の前に凍えそうなんだけど。
「温かい飲み物は出せないからぁ、水風呂入る?」
なんで!?
「水の方が少し温かいとこある」
うそだぁ。
「雪音さん、今日は顔見せに来ただけだから、今度本邸に食事においで」
「あらぁ。そうねぇ、あずきちゃんに会いたいわぁ」
凍死しちゃいそうになったので秘書置いて先に出た。
春なのにお別れですか~。
ちょっと魂が空に向かいそう。
「軟弱ですねぇ」
あの冷気を耐えるのはカニ漁くらいの難易度。行ったことないから比べられないけど。
冷気にやられてしまった俺は、ドSに「ポンコツ」言われながら助手席に詰め込まれて、屋敷に戻った。
ほぼ引きずられて部屋にポイ捨てされた俺に、双子が「あずきちゃんからにゃん」って言ってぜんざいとほうじ茶を持って来てくれた。
あったまる・・・。
雪女っているんだね。あんな寒くできるならスキー場とか経営したら儲かりそう。
最近の雪不足って雪女が絶滅危惧だから??あれ、雪男はいないのか?
海外だっけ?
って、そもそも妖怪がいるテイで考えちゃってる。ヤバ。
「雪音ちゃんはねぇ、新潟美人にゃ」
「違うですにゃん!岩手ですにゃ」
ぽちぽち。検索しちゃう。
「雪女は東京の青梅・・・」
「にゃー!ロマンが砕け散ったにゃ」
「東京も昔じゃ田舎だったですにゃ」
日本各地に伝承があるから雪女は複数いるのらしい。
知らず街中で一緒にかき氷とか食ってたりしそう。
ぜんざいで体があったまったけど、ゆっくり体を温めようと風呂に入ることに。
でっけぇ風呂を独り占めって気分いいよなぁ。
生まれたままの姿になって体の汚れをザッと流して湯船に入れば。
骨まで凍りそうだった体がジュワッと溶ける。
「あー、俺は雪山に住める気がしないなー」
いつか石垣島とかでのんびりしたい。
それか、雪と台風がない地域がいい。
夕食は、鮭の入ったシチューだった。
基本的に猫な双子が喜ぶ魚がメインで出て来て、たまに俺と秘書にお肉メニューが追加される。
ミズメさんはシカや猪を丸ごとだからな。
雪音さんは何を食べてるんだろう。食事をご一緒できる日は来ない気がする。
でも昔話では旦那さんと普通に暮らしてたから何か方法はあるのかな。
双子が俺にドテラを出してくれたので着る。季節的にはすでに初夏だけど今日は芯まで凍ったので気分的に寒い。
食後に双子とあずきちゃんの接待でお茶を飲んでたら、秘書がタブレットを持って入って来た。
「蘭さまじゃなくて、オオクズから連絡が入りました」
ん?オオクズって大城戸をもじった?
親父、ドS秘書にめっちゃ嫌われてるやん。
「行方不明じゃなかったの?」
「ネットがつながる場所にいなかったようで『あー、すまんすまん』と悪びれずに話してます。蘭さまの代わりに舜さまがお相手ください」
えー!!いきなり十年くらい会ってない親父と何話せって言うの?
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