ベイビーと可能性と部長の人権
先輩
「あの子大丈夫かしら?」
同期
「楽できなくて残念でしたね。想像以上にハナちゃんの教育は大変そうです」
部長
「それで、ミサキ君の用事とは?」
先輩
「カケル君の仕事を引き継ぐ形で残業していたわけですけど、例の契約のことで問題が」
部長
「ああ、彼にもあれにはかなり関わってもらったからな。それで?」
先輩
「殆どの資料は印刷済みで問題なかったんですけど、重要な見積もりの資料だけが見つからなくて」
同期
「その資料がカケルさんのパソコンに保存されてるってことですか?」
先輩
「ええ、たぶんね。でもロックが掛かってるから私じゃ中を見れなかったの」
部長
「よし分かった。部長の権限でマスターキーを使うとしよう。情報部の許可を取ってくる」
先輩
「はい、お願いしますね」
同期
「⋯⋯⋯⋯」
先輩
「マキちゃん、どうかしたの?」
同期
「このパソコンにカケルさんを元に戻す手掛かりが残されたりしないかなって⋯⋯」
先輩
「それはちょっと⋯⋯願望が過ぎると思うけど」
SE:重そうな足音『ドタドタ』
部長
「ふぅ〜、これがマスターキーだ」
先輩
「はい、じゃあお願いします」
部長
「ああ」
SE:キーボード叩く音
SE:電子音『ピコン』
部長
「さて、データはどこに⋯⋯」
同期
「確か仕事のデータは右のフォルダに」
先輩
「カケル君のパソコンなのに詳しいのね」
同期
「ずっと一緒に残業してましたからな。先輩とは違うんです」
先輩
「ふ~ん」
部長
「儂よりマキ君に任せた方が早そうだな。よろしく頼む」
同期
「はい! 最近の仕事のデータはこの辺にまとめて⋯⋯」
SE:クリック音数回
同期
「このドキュメント⋯(クリック)⋯取引先の会社名、中身は⋯⋯見積もりデータ」
部長
「見つけたか!」
同期
「はい! あとは印刷!」
SE:エンターキー『ターーン!』
SE:コピー機の音 『ガーーガーー』ってやつ
部長
「これで契約の資料は問題ないな」
先輩
「はい。じゃあ、私はハナちゃんの教育に戻りますね。マキちゃんも業務に・・・・・・どうしたの?」
SE:キーボードを操作する音
同期
「検索履歴! パソコンの検索履歴なら悩みの解決手段を調べた形跡があるかもしれません」
部長
「それは、ありえるのか?」
同期
「わからないですけど、でも・・・せっかくカケルさんのパソコンにアクセスしたんです。可能性があるならやるべきです!」
先輩
「そうね、じゃあ見てみましょうか」
同期
「はい。履歴、出しますね」
SE:クリック音
先輩
「へぇ〜、『有給を取りたいと言う秘訣』『残業 給料でない 相談先』『カフェイン 成人男性 適量』……なるほどねぇ〜、確かにここのブラックさにストレスが溜まってるのかも」
同期
「先輩、もっと先に見る場所が有りますよね。『先輩 仕事 断わり方』……やっぱり先輩も原因の1つですね」
先輩
「そうねぇ〜、でも……あらあら、『20代 ハゲ予防』、ゲンジさんも原因みたいね」
部長
「こ、これは儂のせいなのか?だ、だがほ、ほれ、まだあるぞ……『巨乳の後輩 セクハラ回避 接し⋯か⋯⋯た』」後半しりすぼみな言い方で
「「部長」」と呆れた声を出す2人
「いやいやいやいやいや、これは彼の検索履歴だからな」
先輩
「おっぱい大魔神」
同期
「スケベ大王」
部長
「うう、儂も赤ちゃんになりたい」
SE:パァーーって天界から天使降りてきそうな音
ここから妄想
部長(バーコード頭)
「あ〜、あ〜」ちょっと悲しそう
先輩
「ゲンジさん、あなたの大好きなママ。ミキちゃんですよ〜」
SE:カランコロンみたいな音が鳴る玩具
同期
「あ、抜け駆けはダメですよ。私が部長に相応しいママです。ほら、いないいない、ばーー」
後輩
「2人ともダメっす。いくら先輩達でもママの座は譲れないっす。は〜い、ゲンジ部長! でんでん太鼓っすよ」
SE:でんでん太鼓の音
部長(バーコード頭)
「あぶぶ、あばばば、あぶぅー!!」超ご機嫌
妄想終了
同期
「……う、……ちょう、部長!」
部長
「ハッ!!」
先輩
「だらしない顔で突然笑い出さないでください。あと、2人も成人男性の赤ちゃんがいたら手に負えないのでゲンジさんは育児放棄しますよ」
部長
「それは、つまり⋯⋯」
再び妄想
SE:雷の轟音とカラスとかの鳴き声
部長(バーコード頭)
「あ〜、あ〜」ちょっと悲しそう
先輩
「カケルく~ん、あなたの大好きなママ、ミサキですよ〜」
SE:カランコロンみたいな音が鳴る玩具
部長
「ママ、マ~マ⋯⋯うう、あうあう」目に涙を浮かべるくらい
同期
「あ、抜け駆けはダメですよ。私がカケルさんに相応しいママです。ほら、いないいない、ばーー。あっ、笑ってくれた」
部長
「うう、あぁぁぁぁぁ!!!!」泣き出す
後輩
「2人ともダメっすよ」
部長
「あう⋯⋯」希望の光!後輩天使!! そんな感じ。
ここ、一瞬溜める。『まるで部長を擁護する一言!』と思わせたい。
後輩
「いくら先輩達でもカケル先輩のママは譲れないっす。先輩!先輩! でんでん太鼓っすよ」
SE:でんでん太鼓の音
部長(バーコード頭)
「あ゙あ゙あ゙ぁぁぁ!!!」ギャン泣き
《間》
同期
「ああ、もう、あれうるさい!」
後輩
「そうっす! カケル先輩も嫌がってるっす!!」
先輩
「はぁ〜、口にガムテープしてロッカーに入れときましょ」
同期
「それいいですね」
後輩
「流石先輩っす!」
先輩
「ほら貼りにくいから黙りなさい」ここ冷徹
部長
「あ、あ⋯⋯」
構ってくれると思ったら怖い顔して近づいてきたので萎縮した。
SE:ガムテープのベリベリ音
部長
「むぅーー⋯⋯」
妄想終了
同期
「……う、……ちょう、部長!」
部長
「ハッ!!」
先輩
「今度は泣きそうでしたけどホントに大丈夫ですか?」
部長
「あ、ああ。ちょっとな」
同期
「正気に戻ってください。他にも手がかりがありそうなんですから真剣に探してくださいよ!」
《間》
先輩
「へ〜、こんなのもあるのね? 『後輩 仕事 教え方』カケル君もハナちゃんのことを気にかけてたんだ」
同期
「見たいですね。せっかく来てくれた初めての後輩でしたし、それにしても私のことで悩み事やストレスは無いみたいですね」
先輩
「あらそお?」
同期
「そうで⋯⋯あっ、『同期 お礼 食事 オススメ』『同期 食事 誘い方』これ⋯私のことですね⋯⋯」
先輩
「確かにそうね」
同期
「でも、コレは関係無さそうですね」
SE:しばらく画面をスクロールする音
同期
「う〜ん、これ以上手がかりは無いですね」
部長
「よし」
SE:柏手1本
部長
「とりあえず本日の業務を始めるぞ!」
同期
「ですね。土日に出勤なんて勘弁してほしいので」
先輩
「ハナちゃんは頼んだデータの入力、終わらせたかしらね」
SE:複数の足音
みんな解散
先輩
「ハナちゃん、データ入力はどお?」
後輩
「あっ、ミサキ先輩、今こんな感じで中々進まないっす⋯⋯」
先輩
「なるほどね~、じゃあハナちゃん。パソコンのこんな技を覚えましょうか。ちょっと席変わって」
後輩
「はいっす」
⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯
⋯⋯
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます