蝟皮様

蝟皮様

こんばんは、今日はよろしくお願いします。


コーヒー飲めます? わかりました。


アイスコーヒー2つお願いします。



んぐっ ふぅ


じゃあ話しますね。


これは僕が小学校高学年の頃に体験した話です。


当時は水曜日に学校が早く終わり、友達と近所のため池によく釣りに行ってました。


バスや鯉などが釣れ、その大きさで競いあっていたんですよね。


その時のことは、今でもよく覚えています。


晴れの予報だったが、実際は曇りで風が若干吹いており、太陽の光が薄かったです。


夕方5時頃、辺りが段々と暗くなっていき、そろそろ帰ろうかという頃だったですかね。


釣り道具を片付けて、入口に停めている自転車に向かおうとしていた時でした。


友達の1人が、あれなに?と僕ともう1人に聞いてきたんです。


僕たちには何があるのか分からず、どこ?と聞くと、林の中の竹藪の中にこっちを見る人間の顔がありました。


その顔は若い男性の顔の様に見えるし、若い女性、はたまた老婆の様にも見えるこの世には存在しない様な顔でした。


その顔は小刻みに左右に揺れ動き、こちらを見ていました。


普通ならここで逃げるのが逃げ出すのが、正しい判断なのでしょうが、小学生特有の変な気が大きくなり、それに向かって石を投げ始めたんです。


するとその顔は避ける様に林の中に消えて行きました。


友達の1人が追ってみようと言い出し、僕ももう1人も行こう、と追い始めました。


幸い竹藪はそこまでキツくなく、小学生でもガンガン入って行けるほどでした。


3人揃って、手に石、木の棒を持ち薮の中に入って行きました。


入ってすぐそれの姿が見えました。


その姿を見て、大きくなっていた気はダンゴムシの様に小さくなりました。


それは手足が異常な程細長く、色白い、いや真っ白に近い灰色でした。


お腹は胸板が薄く、下腹部がビール腹の更に膨れた様な状態でとても歪でした。


特徴的だったのは、それの背後にハリネズミの様な棘が見え隠れしていたことです。


今思うと、生殖器官の様な物が無かったと思います。


その歪なそれの姿に僕たちは、入って来た薮を急いで戻りました。


それは僕たちを追うことはなく、代わりに横に異様な程に長い口をにぃっと開き、笑って居たと思います。


その顔に更に恐怖が膨れ上がり、今まで走った事ないような速度で自転車まで走り、帰路に着きました。


この時も、後ろから追いかけられる様な恐怖がありました。


家に着くと僕はその話を、まだ帰ってない父母の代わりに同居している祖父母に話しました。


不思議な顔をしてて、ナナフシみたいな体の変なのに追いかけられた、と。


すると祖父母の顔は、孫の話を聞くときの優しい表情から、真剣な、子供の僕からすると怖い表情になっていました。


そいつをどこで見た、そう祖父が聞いてきて、〇〇のため池だよ、と言うと、祖父はまた出たか、と前回も似たような事があったと話ました。


祖父はポツポツと話し始めました。


それの名前は蝟皮様と言い、ハリネズミの様な背中を持つ、一種の化け物だそうです。


若い男性や女性の元に現れ、男性は無惨な死に方をし、女性は襲われ記憶が無くなった後、誰が父か分からない子を孕むそうです。


蝟皮様はどこからともなく現れ、被害者に大きな恐怖を与え、命を奪う生き物です。


その日は部屋のカーテンを締め切り、部屋の前には祖父が立ち、祖母が町内会の人を呼び厳戒態勢が引かれました。


他の友達の家も同じ様な状態だそうです。


部屋にはおまると、糞尿を回収する袋がありましたが、そこで用を足すことは一度もありませんでした。


ビビりすぎて肛門が引き締まっていましたね。


蝟皮様に対する、恐怖などはありましたが、不思議と午後九時頃、泥の様に床につきました。



まだ少し、、長いですよ?アイスコーヒーでも頼みましょうか。


ふぅ、じゃあ続けますね。



部屋の外から、騒いでいる父母祖父母、町内会の人の声で目が覚めました。


時計を見ると、午前3時を指していたと思います。


耳を澄まし聞いてみますが、何も聞こえなかったのを覚えています。


今思うと、友達が蝟皮様に襲われ、亡くなった連絡だったと思います。


その死に方は、二十四年生きてきて一番惨い死に方でした。


腹と喉が裂かれ、内臓と目玉が外に出ていたそうです。


異様だったのは、手と足が潰されていて、舌は抜かれ、出ていた目玉の内一つが消えていたそうです。


うっ、、ああ、大丈夫です。

続けますね。



もう一度寝ようとすると窓の外からサーっと引っ掻いてる様な音が聞こえてきました。


その音を聞いた時点で布団に潜り込めば良かったんですよね。


僕は締め切られていたカーテン、少し開いってしまったんです。


そこには部屋の中を覗こうとする、蝟皮様の顔がありました。


目と目が合ってしまい僕は急いで、カーテンを締め、布団に潜り込み扉の外に居る祖父に、蝟皮様が居る、と伝えました。


なに?!と言う祖父が下に居る町内会の人に出たぞ!と言うと数人が慌てて外に出ていく音がして、外からいたぞ!という声がしたかと思うと、その数秒がぱぁんと破裂音にも似た音がしました。


猟銃だったと思います。


その破裂音が鳴った後、ガタガタと壁から屋根に連れて音がなりました。


そして二回目の破裂音。


するとゴトンゴトンと鈍い音が響いたかと思うと、階段をかけ上がる音がしてきました。


蝟皮様を仕留めたという知らせでした。


もう外に出ていいぞ、と言う言葉と一緒に外に出ました。


そして、僕は約数時間ぶりに外に出られました。


外に出ると道路に、無様に転んでいる蝟皮様の死体でした。


蝟皮様の顔は死んでいるのは確かなのですが、どこかニヤリとした顔で死んでいました。


そこからは警察が来て、死体を回収、友達が1人死んだことを聞きました。


どうしようない自責の念に駆られた事を覚えていて、今でも後悔しています。


その1週間後、友達のお葬式があり、出席した人は数十人おり、愛されていたんだなと知りました。


そこからは、時が全てを解決してくれました。


強い自責の念は段々と薄れ、日常生活を送れました。


そこからは中学校、高校、大学と普通の人と変わらない生活を送りました。


これが僕が経験した蝟皮様の話です。



実は僕、貴方に申し訳ない事をしたなと思っているんです、、


話してない内容が実はもう一つあるんです。


蝟皮様に襲われた女性は、父が分からない子を孕むと言いましたよね?


それが一人、僕達より三個上の女性が襲われて、子を孕んでいたんです。


その子は、父が分からないと言って、愛されない訳でもなく、愛されながらその女性に育てて貰っていました。


ですが、中学校から高校に入るとき、人を一人手にかけてしまったそうです。


その後、少年院に入ったそうですが、入って一年経たないくらいで、脱走したそうです。


実はその、同じ部屋の受刑者は、殺されていたそうです。


殺され方なんですが、それが友達と同じ様な殺され方だそうです。


それから月日が経ちましたが、その子供は行方不明だそうです。


これは、、、僕の仮説なんですが、蝟皮様に襲われた女性が孕むのは、蝟皮の子供なのではないでしょうか?


成長した子供が蝟皮様となり、それが続いていく。


つまり、蝟皮様は今でも何処かの林に隠れて、誰かが来るのを待っているのではないでしょうか。



ふぅ、ん?この話の何が悪かったか?


ああ、もうひとつ伝えれて無かったです、、


蝟皮様の話って言うのは感染症の様に広がっていき、聞いた人が襲われる、と祖父から聞きました。


襲われるのを避ける為には、他の人に伝えなければならないそうです。


つまり、、そうゆうことです。


悪いことをしたなとは思ってます、、


でも、避けるにはこれしかなかったんです、




誰だって自分の命が大切でしょう?






にぃ






すいません。

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蝟皮様 @taika2totomi

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