第6話 指輪

騎士アーロンの部屋のドアをノックする。


「..どなたですか。」


「リナよ。渡したいものがあるの。」


しばらくして、ドアは開いた。

アーロンは疲れた顔で少し笑った。


「クマが酷いな。」


「あなたもね。」


私は指輪を渡す。


「あの娘の遺品の中にあなたへの贈り物があったの。あの娘がいつ作ったのかは分からないけど、ミロが調べて問題ない事は確認しているから安心して。」


彼の視線は指輪に釘付けだった。


「...あの時の、約束...覚えていたのか...」


そう言って、あの娘が身につけていた指輪をポケットから出す。


「どうしてあなたがもってるの?」


驚いてそう聞くと、アーロンは寂しそうに言った。


「1週間前に、預かって欲しいって言われたんだ。自分にはやはり分不相応だって言ってしばらく預かって欲しいって。」


「その時にはもう、命令が下されていたのかもしれない。」


力無く笑うアーロンがぼやける。


「あの娘と長い間一緒にいたのに、何も知らなかった。何も。」


アーロンが私を慰めようと手を伸ばしたが、私はその手に無理やり指輪を握らせた。


「これ、持って帰ってくれる?」


私の言葉に動揺しながらも頷き、走りさろうとした私を引き止めた彼はあの娘の指輪を渡した。


「ミアの遺品はリナが持ってるべきだ。」


「あ、ありがとう。邪魔してごめんなさい。」


「リナ!」


私はあの娘の指輪を握りしめ、逃げるように自室へ戻った。

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