第4話 主人公
スキルというのは自身で指定して発動させなければならない。
私は、スキルなんて吹き飛ぶくらいあの娘のメッセージが衝撃で何も出来ずにいた。
ストーリー通りにラスボスの悪魔アスタロト公爵が顕現した。
「リナ!しっかりしろ!ここを切り抜けるぞ!!」
「聖女様、早く浄化の魔法を...!」
勇者ロレンスの言葉と賢者ミロの指示に私は彼女の願いを思い出した。
彼女は私達を生かすために死んだ事を思い出した。
私は二人の声に返事ではなく浄化を発動させることで答えた。
私自身の傷も治した。
この戦いだけは、負けられないし、死者も出せないと思うと頭の回転が上がり始めた気がした。
「哀れな娘よ。」
アスタロト公爵はそう言って手を離す。
あの娘がぼとりと落ちた。
頭は潰れてあの娘の愛らしい姿はどこにもなかった。
「召喚は久方ぶりになる。少し遊んで帰ることにしよう。哀れな娘のお陰でお主らを殺す気にはなれぬからな。」
そう言って、アスタロト公爵は両手を広げた。
「あぁ、だが、弱すぎて死ぬのは我のせいではない。」
歪んだ顔は笑っているのだろうが、悪意に歪んだ顔に気持ち悪さが先立って恐ろしく見えてしまう。
戦闘が始まり、何とか死人を出さずに生き残った私達を満足そうに見つめ、月が隠れたほんの少しの暗闇の時間にアスタロト公爵は消えてしまった。
月が雲の隙間から優しく短剣を照らしていた。
あの娘が私を刺した短剣を大事に拾い上げる。
気づいてあげれなくてごめんね。
あの娘ともっと関わってもっと知ろうとすれば良かった。
後悔が溢れて涙が止まらない。
私はひとしきり泣き、皆に今日は村で休もうといった。
少し戻ることになるけれど、野宿して疲れが取れるとも思えないし、進みたくなかった。
それに、あの娘からのお願いを叶えなければ。
勇者も騎士も悲しみより、他の感情が強いようで、泣いてはいなかった。
賢者はあの娘の遺体に近づき祈りを捧げていた。
あの賢者が真摯に祈っているのを初めて見た。
賢者はあの娘を1年も教えていたのだ。悲しくないはずがない。
私は勇者と騎士を先に返し、賢者と二人であの娘を火葬した。
賢者は私を止めようとしたけれど、私が無言で見つけると、引き下がった。
そして、花畑に二人でより、彼女の遺品を掘り起こした。
私には守りの魔法が付けられたネックレス、ブレスレット、イヤリングが残されており、賢者には指輪と手紙、そして、魔法が刻まれたマナ水晶が十数点あった。
無言で私の物だけ取り出し、箱ごと賢者に押し付けた。
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