とある日の昼食
昼休み。私と美空は、机をくっつけて昼食の準備をする。私達が通っている学校では、食堂があるので、そこに通う生徒も多い。でも、私と美空は、基本的に親がお弁当を作ってくれるので、教室で一緒に食べている。
「はぁ……何で昼食の後に体育があるんだか……」
美空は、ぼやきながらお弁当を取り出す。
「ね。美空と違って、私は運動出来ないし、体育ってだけで憂鬱だよ」
「特に球技が出来ないのに、今はバスケだしね」
「見学したい……」
「まぁ、ちゃんとした理由がないと難しいでしょ」
「それは分かってるけど……」
そう言いながら、お弁当箱を開ける。私のお弁当は二段弁当になっていて、結構量がある。逆に美空のお弁当は、小さめであまり量がない。
「相変わらず、よく食べるなぁ」
「そ、そんなことないもん。逆に、美空は食べなさすぎだと思う」
「そう? まぁ、別に食べられない事もないけど、そこまで食べたいとも思わないし」
「そのおかげで痩せてるんだもんね。私も減らそうかな……」
「別に太ってるわけじゃないんだから、気にする必要ないと思うけど」
体重的には適正体重だけど、痩せ型の美空を見ていると、もう少し痩せてもいいのではと思ってしまう。
「あっ! その唐揚げ頂戴!」
「えっ、あ、うん。はい」
お弁当を差し出す私と口を大きく開けて待つ美空ですれ違いが起こった。美空は、私が食べさせてくれると思ったみたい。注目されていないとはいえ、周囲に人もいるし、食べさせるのは少し恥ずかしい。
でも、美空は、自分で取らず口を開けて待つだけだった。
なので、覚悟を決めて、美空に唐揚げを食べさせる。なるべく箸が美空に当たらないようにしたのだけど、美空の方は豪快に口に含んだので、箸が美空の唇に当たってしまった。
それを意識してしまうと、急に身体が熱くなる。このまま箸を使って食べたら、間接キスになっちゃうから。たかが間接キスされど間接キスだ。人によって考え方は違うけど、私は好きな相手とのものとなると、ちょっと意識してしまう。
「う~ん、さすが、おばさんの唐揚げ。そこらの唐揚げよりも美味しい」
「そ、それは良かった」
「そんじゃお返し。あ~ん」
そう言って、美空は卵焼きを箸で掴んで出してきた。がっつり掴んでいるので、どう食べようとしても箸に口が着いてしまう。
「どうしたの? うちの卵焼き好きでしょ?」
確かに、美空のお母さんが作る卵焼きは美味しい。だから、欲しいって気持ちはある。でも、さっき意識してしまったせいで、ちょっと躊躇いがある。
「ほら、は・や・く!」
美空がさらに突き出してきて、卵焼きが落ちそうになったので、慌てて口に含む。私が食べたのを見て、美空も箸を抜いた。
「……美味しい」
「そりゃ、うちの特製ですから」
美空は悪戯っぽく笑う。その笑顔が可愛くて、私に笑った。
そのままの流れで、楽しく会話をしながら、普通にお弁当を食べていった。自分が何を悩んでいたのか忘れて……
ただ、家に帰ってから、この時の事を思い出して赤面して悶える事になったのは言うまでもない。
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