第15話 天才の力量


「デトラート......デトラートォオオオオオ!!!!!」


なんだ!?

急に吠え出したかと思えば、アイツの内側からみるみるエネルギーが飽和している。

やはり、コイツは何かおかしい。

まるで

間違いない。

そのエネルギーの根幹にあるものはとにかく邪悪なものだろう。

自惚れるな......!

気を引き締めて、戦え!


「ダイドロット......どうやら名のある剣士のようだ。

その剣士の強さに敬意を表し、僕も全力で迎え撃ってやろう......!」


僕は相手の気迫に負けず劣らずの姿勢でダイドロットに拳の照準を合わせる。

相手は強者だ。

あの強力な剣技を超えない限り勝ち目はない。

記憶の片鱗にある師匠の言葉に従うとするならば、勝算と知性を常備しろ、か。

さて、この厄介な男に対する勝算は?

どう攻める? どう守る?

どう戦う? 腕の見せ所だな。


「うぅう、がぁあああああ!!!!!」


正気を奪われた剣士はジリジリと詰め寄り圧を強める。

これだ。

この謎の気迫、相手の精神をすり減らすほどの威圧、高い技能を集約した剣技、これらの力が一般の人間に再現できるわけがない!

コイツは、剣の天才だ......!


ダイドロットは力みをふんだんに込めた右腕から剣を通してパワーのある斬撃を僕に向かって見舞う。

当然、その破壊力満載の攻撃をまともに受けるなど愚の骨頂であるため、僕は回避に全力を注ぐ。

平面な地形ゆえに条件は完全に平等に思えるが、武器えものを持っている奴と僕とじゃ完全にリーチに差がある。

現状不利なのは僕の方だ。

これを覆すものがなければ、到底ヤツに一撃を見舞うことはおろか反撃を叩き入れることさえできないだろう。

本気のコイツは、さっきのガンナットとは比べ物にならないレベルの実力者......そう考えよう。

それに見合うだけの相手だ。

当然、油断はならない。


僕はダイドロットの巧みな剣技を一つ一つ、集中してブロックする。

刃の部分に触れると損傷するのはこちらであるため、僕側としては一つ一つの防御に創意工夫が問われてくる。

相手の呼吸、剣の軌道、距離感リーチ、タイミング、何もかもがベストである必要がある。

そこに勝機はある......!


掌底、裏拳、肘、膝、これらを巧みに使い、流す、流す、流す。

よし、リズムも掴めてきた。

ヤツの厄介な剣技やコンビネーションが対応できるようになってきた。

それを封じれば、今度は僕のターンだ......!

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