第14話 地底剣士と悲劇の男
呼び起こしてはいけないモノ、それは石の内側に内包された剣王のエネルギー。
かつて剣王として恐れられていたダイドロットは、ルドガリア地帝国の名のある英雄の一人として、地底剣術の王として君臨していた。
剣の天才。
それが彼の最初の呼び名だった。
生まれつき全身が石の表皮に覆い隠される病に罹っていたダイドロットは、幼少期にその病を治すべくルドガリア地底神の元を訪れ、病の治療に専念した。
が、病は治らず、生まれつき抱えた病はいくらか弱体化させるもその弊害の一部は彼の体には宿ったまま、幾年かの年月が過ぎ去った。
彼は地底の中で塞ぎ込み、家に引き篭もっていた。
彼は自分に自信が無かった。
自分の呪われた体質で受けるイジメが辛かった。
地底でもその気味の悪さにコソコソ陰口を言われていたのを彼は聞いていた。
彼の心は大きな傷を負っていた。
そんな時、彼が目にしたものが、例の男の剣術だった。
かつて世界中に呪いを振り撒いた禍の男、そしてその時代の象徴の一人として数多くの功績から人々に認められた傷の力をその一身に蓄えた悲劇の男デトラート。
その男こそが彼の人生を変えた転機をもたらした。
「「凄い.......! 彼は一体何者なんだ......!?」」
男の剣技、それは俺の心を虜にした。
男の何気ない、巧みな剣術。
繊細で美しさのある剣の軌道。
彼の持っている全てに興味を持ち、気づくと俺は剣技に没頭していた。
ここが俺の原点だった。
俺はその剣技に魅入られ、そして剣技を誰よりも追求した。
ルドガリア地帝国の剣術は粗末にもレベルが高いものとは言えないものだったが、それでも俺は剣士としての才能には縁のある人間だったらしく、その才能で徐々に頭角を現していった。
そして俺の剣技はいつしかルドガリア地帝国一のものとなった。
名声も手に入れた。
他国からスカウトされることもあった。
だが、ルドガリアへの恩義からそれらは断らせてもらった。
俺が剣士になってからは今までの不幸が嘘のように幸福三昧の日々だった。
妻や子供にも恵まれ、俺の所帯はいつしかルドガリア地帝国最大の成功者とまで呼ばれるまでに至った。
それはとても心地よかった。
子供や妻に自慢できる父親であることを見せられるのは何よりも誇りだった。
しかし、そんな幸福な日々にも突如終焉は訪れる。
俺が尊敬してやまない存在、かつてこのルドガリアの地を訪れた例の男が再度ルドガリアの地を訪れたのだ。
それも、英雄タリズマンを引き連れて。
俺は感動せずにはいられなかった。
興奮せずにはいられなかった。
俺はその喜びを家族に伝え、家族総出で彼らを出迎えた。
彼、デトラートは俺の
だからこそ、特別な存在に思えてならなかったのだ。
そう、あの時までは......。
俺が剣王として王城に招かれた日の夜、街中で騒ぎが起きた。
何が起きたのだと顔を出してみると、そこには暴走するデトラートの姿があった。
彼はまるで漆黒の魔物のように豹変し、そして街中全てを闇で覆った。
それが、全ての
俺は自分の原点に裏切られた。
そして、家に戻ると最愛の家族を失っていた。
気がつくと俺は、その裏切り者から何もかも奪われていた。
自分が住む国も、街も、誇りも。
俺は、許すことができなかった。
憎むことしかできなかった。
そんな時、
「ぐァアアアアアア!!!!
離せッ!!!」
邪悪な靄は僕の全身をくまなく包むと、まるで金縛りにでもあったかのように僕の体を動かなくさせた。
そして全身の自由が無くなると、僕はそのまま石になっていた。
全て......全て、アイツの、せいだ......!
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