第9話 王城の跡地
知恵の洞窟最奥、『
「ガンナット様! 例の武神、やはり洞窟内にもいないようで」
「......しかし、前代未聞だな。
我々が攻め入ること自体、本来ならイレギュラーなこと。
だが、
「はい、どうやらアメトスがいないこと自体、現地の悪魔たちも相当訝しんでるようで。
本当に突然、何の前触れなく消えたのではないでしょうか?」
「ふむ、我々の戦力を聞きつけて尻尾を巻いて逃げ出したか。
所詮、伝説は伝説だったというわけだ。
実に、残念だ」
「武神の捜索は如何いたしますか?
洞窟内はあらかた見て回りましたが......」
「無論、続行だ。
奴を炙り出すまで続けろ。
必ず、近くにいるはずだ」
「はっ!」
「......我々の地位を脅かす希望の灯火。
スター・タリズマンの残した希望。
あの方のために、必ずやその芽を摘んでおかねばならぬな」
ーーーーー
僕らが今いる場所、それはマドノワ広場から遠方にある王城の跡地だ。
どうやらドゥートス曰く、この王城の周辺に例の情報屋らしき人物の手がかりがある可能性が極めて高いとのこと。
僕らは依然として漠然とした手がかりを模索したまま、気づけば王城内で遭難に近いような状況に陥っていた。
いやいや、普通王城って迷うもんだっけ?
なんか想像以上に複雑というか、それに加えてあり得ないくらい広いんだが?
【広いのはそのはずだよ。
なにせ、人々の多くはこの王城を寝ぐらにして生活していたという話もあるくらいだからね】
王城を、寝ぐらにしていたのか!?
しかも国民が!?
なるほど、地底ならではの衣食住の事情というわけなのか。
【そうだね。
かつてこの地帝国を統括していた神、地底神ルドガリアは民に優しく人望の厚い人物だったらしいからね。
民とも仲が良かったとか、そういう歴史はよく耳にするよ】
地底神ルドガリア?
ルドガリア地帝国を牛耳ていたのか?
なんていうか、カッコいい名前の神様だ。
僕もルドガリアって名前が良かったな。
【ルマも十分いい名前だろ?
それに、君の本当の名前はルマじゃなかったと思うよ?】
へ?
ルマじゃない? 本当の名前が?
一体どういうことだ?
【僕の知る限りだとルマって名前はたしか"愛称"だったはず。だから君の本当の名前は違うはずなんだ】
そうなのか。
じゃあ何で教えてくれなかったんだ。
普通教えるものだろ。
【いやいや、知ってたらとっくに教えてるよ。
僕だって君の名前は知らないんだ】
なん、だと......?
それは、本当なのか?
言われてみれば、たしかにそうかもしれない。
嘘をついてる......ようには思えないな。
気のせい、なのか......。
「......」
しかし、例の情報屋に関することだが、本当にいるのか?
この暗闇の地底世界に?
【疑うのはいいけど、どっちみち情報が不明瞭なんだ。
偶然見つけられる可能性を探るのもいいけど、今は選択肢を確実に潰していくことが先決だ。
焦らず、まずは一つずつ、着実に、だよ】
この状況で焦るなって?
困ったな。それは無理な相談だと思うが......。
【大丈夫。いざとなったら僕が助けるから。
その代わり、大きな代償がついちゃうけど】
助かる手段あるのかよ!
おい、その話詳しく聞かせろ!
【......】
「......」
き、聞かせてはくれねえのか?
どうして? 出し渋る意味あるのか?
【これは最終手段、本当に困り果てた後での最後の切り札だならね。こんなところで使うカードじゃない】
なるほどね。
つまり訳あり、と。
ここから先の戦いにおいて、もしや重要なカード、切り札になりうるものだということなのかな?
【君にしては察しがいい。
その通りだよ。
悪いけど、この切り札を使えるのはたったの一度きり。
本当に、最後の可能性に賭けたい時のみ発動するべきものだ。だから、すまない】
いいって、気に病むな。
僕はいつ、弱音なんて口にしたんだ?
これからの冒険、僕の想像を超える未知との戦いに備えるんだろ? だったら楽しまなきゃ損じゃねえか。
僕は僕のままでいる。
だからお前も、いざという時僕をしっかり支えてくれ。
お前、悪い奴じゃなさそうだしな!
【......信頼してくれるのか?】
ああ。今は信頼できると実感してるよ。
お前は僕の頼れる相棒になる。
出会って最初はそう思わなかったけど、一緒にいて確信したよ。
お前となら必ず、太陽の王を倒せる!
【それを口で言ってくれたら、本当に完璧なんだけどな......】
いつかきちんと言葉で話すよ。
僕の考えは人々から見れば異質そのものだ。
きっと、異常者の考えとして捉えられてしまう。
だから言葉で発する量を制限してるのさ。
【屁理屈述べてさ、本当は喋るのが苦手なだけだろ?】
うるさい。
一応当てはまるから正論パンチはかますな。
僕はこれから多くの敵と戦うことになる。
その時、一人でも多く味方が必要になる。
どうかその時は、頼む。
【わかったよ。
無口なパートナーのために僕が一肌脱いであげるよ。
太陽の王、必ず打ち倒すよ】
ああ。
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