第7話 地底領
地下世界。
そう聞くだけで心が躍る。
暗闇の中に広がるであろう巨大な空洞の中で、一際目立つ溶岩の滝とか、未知の鉱物で形成された鉱石の山、そして地底に住まう生き物。
その何もかもが生まれて初めての経験だ。
とてもフレッシュな経験をできるに違いない!
......そうだ、ここは坑道だ。
おそらく、何かしらの好物が取れていた時期があったはずだ。
それならば、この先に見える世界に何か期待はしていてもいいよね?
僕はハラハラ感と期待を胸にして、新たな舞台への一歩を踏み出す。
きっと、広大な地底空間が広がっているんだろう。
地底なのに、広いの間違いなしだ。
きっと、楽しいんだろうな。
見よ、僕を待ち受けるこの広大な、空間を......?
ドン!
血液坑道を通り抜け、地下世界への扉を開く。
正確に言うと、この地下世界のことは地底世界と呼ぶようだ。
僕はワクワクに包まれた顔でその広大な地底空間の天井を見渡す。
まるで星空のように美しく輝き地面を照らすその風景は、僕の想像を遥かに上回るものだった。
【早く行くよ。この地底空間を抜けるよ】
いや、え?
なんでなん?
僕、ほんとに、そうなるとはね、微塵も思わなかったというか。
実はというと、僕は一ミリも期待などしていなかった。
全て自分に言い聞かせるための言い訳だった。
それがなんだ。
本当にデカい世界が目の前にあるなんて。
そんな天邪鬼、聞いてねえよ!
ひっくり返すなよ! 逆にビックリするわ!
【何してんの。よくわからないことやってないで、早くこっち来なよ、ルマ】
ああ。
そうだ、僕は今、太陽軍から逃亡しているんだった。
しかし、これからの算段を聞く限りじゃ、僕らを主体とした国の奪還をやるとかなんとか。
そんなこと、本当に実現できるのか?
無謀じゃないのか?
あの、太陽軍相手に。
【弱気だなあ、君は。
大丈夫だよ、君にはそれに立ち向かえる力と勇気が備わってる。だから心配しなくていいんだよ】
そうなのか?
というか、はじめてまともな助言を言われた気がする。
君ってたしか悪魔だよね?
なんで僕のこと励ましてんの?
【いやいや、今はパートナーでしょ?
君のことを支える大事な契約者だよ?
それに僕、悪魔のイメージほど悪魔してるわけじゃないし】
そうか。
まあたしかにそんな感じだった気もするな。
しかし、それにしても不思議だ。
この地下空間、星空のような美しさで地面が照らされているが、それにしても明らかに広い。
言うなれば、僕が逃げ延びてきた悪魔の森と匹敵するほどの規模ではないか?
こんな地下空間、どうして野放しにされてるんだ?
【昔は野放しにはされてなかったよ。
ここは《ルドガリア地帝国》っていう、地底領と呼ばれていた場所だ】
ルドガリア、地帝国?
カッコイイ名前だな。
その国って一体どんな国なんだ?
この地底世界を牛耳るようなドデカい国なのに違いない。
【ルドガリア地帝国は《現代悪魔》と呼ばれるものの始祖が建国した国だとされている】
現代悪魔?
悪魔に現代も過去もあるってのか?
驚きが隠せないよ、その話。
【適当に考えてないかい?
というか、もうそろそろ僕と会話で話してくれてもよくないかい?
いい加減、僕の一方的な会話にはウンザリしてきたよ】
「......」
そうだな。だが、たしかに無言なままなのはダメだ。
きっと、さっきの言葉はそういう意味なんだ。
僕は、変わらなくちゃならない......!
「え、えっと......」
【え、喋れるの?】
「......僕に喋るなと?」
【いやいや、大歓迎だよ。
ちゃんと話そ? せっかくだし話くらいはさせてよ。
君の本音はわかるんだからさ】
そうだな。
コイツに隠し事をしても、話さないスタンスを貫いてもお互いメリットがない。
やむを得ない、腹を括るか......。
「あのさ、非常に言いにくいんだけど、君って本当に悪魔?
僕のイメージする悪魔ってさ、もっと邪悪なイメージがあるんだけど」
【......そうだよ。
でも、邪悪なイメージってのは多分、君の生まれ育った環境によるものかな。普通、世間一般における現代の悪魔は歩み寄る秩序そのものだって言われてる。
君はおそらく、非道な悪魔が蔓延る国で生まれたんだね。なんとなく予想がついちゃう】
歩み寄る秩序の象徴、ねえ......。
もし本当に僕が生まれ育ったのが非道な悪魔とやらが蔓延していた国だとして、それは一体どんな国だ?
情報がねえからいまいちパッとしねえ。
【......心当たりならあるよ。
君の因縁の敵とも言える男が腐敗させた国の中に、おそらく紛れているのだと思う】
因縁の敵?
一体誰のことだ、それは?
【世界最強の軍事力で現代を支配している総帥だよ。
君が戦わなくてはならない相手、太陽軍の総帥、太陽の王だ......!】
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