第8話 ギルドに行ってみる

 あまりあてもなく歩き出したピーターでしたが、ひとまずどこか泊まれるところを探さなくてはいけなかったので、駅前に立っていた地図の看板を思い浮かべながら南に向かって中心街を進んでいきました。


 2ブロックぐらい行くと、噴水のある広場に突き当たったので、ここと駅の間が一番のメインストリートだろうな、と彼は思いました。


 そして思った通り、その広場の周りには食堂や宿屋がいくつもあって、今晩は満室だの空きあり〼だのといった看板がそこかしこに掲げられていました。


 料金表を見ると彼の手持ちでもどうにかなりそうな金額ではありましたが、この後のことを考えると少しでも節約しておきたいのが本当のところでした。


――――――――――


 幸いなことに、広場の中央の噴水のところにギルドがあって、人手募集中初心者も可との張り紙が入口のところにぺたりと貼ってあったので、ほんの少しでも足しになればいいなと思った彼は中に入ってみることにしました。


「いらっしゃい、見ない顔だね少年」


 と受付の人に声をかけられたので、彼は思い切って聞いてみることにしました。


「この街に来たばかりでまだ何もわからないし経験も技能もないんですけれど」


「それでもいいさ。今の時期はラズベリーの収穫が特に多くなるから単純作業で良ければ少しの小銭稼ぎはできると思うぞ。ほれ、とりあえず登録だけはしておくといい。身分証明書は何かあるか?」

 と、ラブレースと書かれた名札を付けた受付係は答えてくれました。


「それなら毎朝家でやってたので自信あります。学生証でいいですか?」


 そういってピーターが申込用紙に名前を書くと、学生証を見たラブレースさんの表情が曇りました。


「お前さんP人なのかい」


 とつぶやくと、「こいつはだめだな…」などと言いながら手元に持ってきていた“ラズベリー収穫アルバイト依頼一覧”を手繰り始めました。


「何がだめなんですか」ピーターは無邪気に尋ねました。


「何て言うか、その…」さっきは威勢の良かったラブレースさんの声が小さくなりました。


「ほら、あんまり大きな声では言えないし、このギルドの見解としては同じ共和国市民に差はねえって考えなんだが、R人の中にはP人のことがあんまり好きじゃねえやつもいるって話だよ」


「どうしてなんですか」

 思わず彼は聞き返していました。


「おいおいずいぶんのボンボンなのか少年よ、」

 とラブレースさんはツッコんでから、


「どうしてもこうしてもないが特にこの街の人はプライドが高いんだよ。ちっとは嫌なこと言われるかもしれんが我慢するんだな」

 と言って彼の申込用紙を取り上げました。


「まあそれでも良ければ明日の朝5時半ぐらいにここに来てくれれば割り当てる日雇いアルバイトぐらいはあると思うぞ」


「ありがとうございます、頑張ります」

 と言って立ち去ろうとしたピーターはもう一つ聞いておくことがあったと思いなおしました。


「食事つきの宿屋のおすすめとかあったりしますか」


「そうさなあ…。」

 ラブレースさんは少し腕組みをしながら考えて、


「あそこの端のリンゴン亭なら門戸が広いはずだぞ。」と教えてくれました。


「ただしほかの客がうるさいかもしれんが」

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