第7話 ここはRシティ
駅はとっても忙しなくて、ホームをゆっくり歩いていたピーターが端にある改札口までつくまでの間に彼が乗ってきた電車はすでに彼方へと去り隣のホームにはもう次の電車がやってきていました。
彼は次の電車に乗ってきた人の波に飲まれながら改札を出ましたが、そこはまだ広い駅のなかで、彼はただただ圧倒されるだけなのでした。
時間は彼の好きなように使えたので、せっかくならばと駅のなかを探検してみることにしましたが、ほかの人はみな目的地がわかっているかのようにずけずけと進んでいっているので、ふらふらしているだけの彼は幾度も人にぶつかりそうになるぐらいでした。
そうこうしているうちに食堂のようなお店を見つけたので、おなかの空いてきた彼は入ってみることにしましたが、ここでも人々は何を頼むかもう決まっているようで、ジョイフルメドレーティーラテゼンブミルクハチミツサンシュウエクストラホットひとつ、のようにまるで呪文かのようにすらすらと流れていくのでした。
やっとのことでお昼ごはんにありつけたピーターは、セットに付いてきた紅茶にジャムが2種類添えられているのに気がつきました。
すこし暗い赤をした方のジャムは彼が毎日採って食べているラズベリーであることが一目にわかりましたが、うちの裏庭の朝採れには敵ってないなと思いました。
もうひとつの明るい赤をしたジャムはあまり見覚えのないものでしたが、さっき電車の中でプルメリアさんに教えてもらったイチゴの実と同じような色をしていたので、きっとそれだろうと思ってまずジャムだけ食べてみることにしました。
「あっ、これ美味しい…」
ラズベリーより甘味が強めのイチゴはジャムにするとより濃厚な味になって彼の舌を虜にしたのでした。
せっかくなので一口ずつしっかり味わって口に運んでいると、知らぬ間に周りのお客さんはみな入れ替わってしまい、それどころかお昼の営業時間も終わりかけていました。ということは彼ももう動き出した方がよさそうです。
「ごちそうさまでした」
とつぶやいてから席を立ち、駅の建物を抜け出そうと歩き出しました。
なんとか外に出ることができたピーターを待ち受けていたのは、Pエリアのどの町も勝てないくらいの建物と人でごった返している情景でした。
建物の背こそ高くないものの、空き地が見えないほどに立ち並んでいて、しかもそのどれもに人が次々出たり入ったりしているのでした。
「うわあ…こりゃすごいや」
思わず息をのんで立ち尽くしてしまいましたが、駅前でずっと立ち止まっていると通行の邪魔になってしまいますので、太陽が出ている間ぐらいはぶらぶらと観光してみることに決めて、大きな期待と少しの不安を抱えて歩き出したのでした。
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