第2話 プロローグ②
リッジウッド山脈と呼ばれるとても険しい山々のふもとに広がるPエリアは、一面にキイチゴの低木が育っているのどかな場所で、あまり何かがあるといったわけではなかったのですが、山からの湧き水のおかげでラズベリー共和国いち美味しいと噂されるラズベリーをたんと味わうことができていたため、P人たちは自然の中で満ち足りた暮らしを送っていました。
そういうわけでP人たちはあまり都会には出ようとはしない性分の人が多く、フランボワーズまでの直行の鉄道がなくRエリアかEエリアを経由しなければいけないことも相まって、あまり他のエリアの人と比べると移動的ではありませんでした。
ほかに山脈を隔ててレシーティア王国とも接してはいましたが、険しい山々のため行き来がほとんどなかったことに加え、鉄道もあるにはありましたがRエリアをまたぐ遠回りルートしかなかったため、自由に行ける相互条約が二国間で結ばれているのにもかかわらずP人は隣国のことを知らずにいました。
P人たちは穏やかで平和を好み、おいしいラズベリーときれいな水が豊富にとれる自分たちの里を心から愛し、それを守っていこうとするとても心優しい人々でした。
しかしながら、ほかの人たちがP人たちにも同じように心優しくあるかと言われると必ずしもそうとは言えないのが現実の厳しいところで、またそれにはPエリアの抱える都から遠いこと以上にある問題が関わっていたのでした。
それはどちらかといえばプライドの問題で、元来P人はあまり気に留めない気質だったのですが、他の、特にR人にこうもよく言われてしまうとあまりいい気分にならないような類いのものでした。
それはR人の口癖にさらに続くフレーズになっていて、「ラズベリーの中にRは三つも入っているんだぞ、ラズベリーの中のPは読まれもしないんだぞ」というものでした。
全くひどい言われようでしたが、ラズベリー共和国のエリアの名前において発音されないのはPだけであったので、存在しているにもかかわらずからかわれてしまうことが多々ありました。
そして人口も面積も態度も大きいR人たちは都でも存在感があったため、他のエリアの人たちも大きく声を上げてその言い方はやめようということもあまりせず、もちろんほかのエリアにも平等の意識を持つ心の広い人々はいましたが、Pエリアの人々はその出身というだけで不遇な目に遭うことがよくありました。
これではPエリアの人々が自分の町から出たがらないのも無理はありません。
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