第11話 四月一日の嘘



 僕は間違えた。


 吐いていい嘘と吐いてはいけない嘘を理解してなかった。


 僕にとって、サユはとても大切な存在だった。


 幼い頃から一緒に遊んで、僕が学校で孤立気味でも話しかけてくれる存在でもあった。


 それなのに、僕は彼女に吐いてはいけない嘘を吐いてしまった。


 彼女の楽しそうに笑った顔も、彼女の嬉しそうに微笑む顔も、辛そうに泣いているのに笑う顔も、全てが僕の胸を締め付ける。


 エイプリルフールなんてなければよかった。


 全てはエイプリルフールのせいだ。


 僕の嘘も、彼女の嘘も、全てはエイプリルフールのせいだ。嘘つきの罰を受けたんだ。


 四月一日の嘘の罰なんだ。


 サユは嘘を吐いて傷付き、僕は彼女を慰める資格がない。嘘を吐いた罰だ。


 いいや、それすらも詭弁だ。


 僕が吐いた嘘がきっかけに僕が彼女を傷付けたのだから、全て僕の罪であり、受けるべき罰は僕に対してだ。


 それなのに、サユを傷付けて泣かせてしまった。


 そんな僕に彼女をどうにかしようとすることはできない。


 僕にはもう彼女が笑った顔を見る資格はない。


 ……そんなの、そんなのは、僕は、僕は。


「……嫌だ」


 視界が歪む。頬に生温かく伝う何かが顎下まで流れた。


 僕はこうやって涙を流す感情を知っている。


 僕にとって大切な存在だった人も同じように涙を流していた。


「そうか。……そうだったんだ」


 ……ああ、僕はサユが好きなんだ。


 エイプリルフールの嘘で告白して、それが嘘だと言ってから気がつくなんて……。僕はなんて愚かなんだ。


 ……バカだ。僕は愚かでバカで、気が付いた時には後悔している。


 でも、エイプリルフールについた嘘だ。


 エイプリルフールは四月一日には嘘を吐いて良いという風習なんだ。


 四月一日の嘘は許されるんだ。


 僕は駆け出した。誰を追いかけて?


 そんなのは決まっている。

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