第10話 四月二日の告白



 君は僕の言葉を聞いて何を思っただろう。僕はそれを知るすべを知らない。


 でも、君が僕の言葉を聞いて小さく口角を上げて頷いたのはわかった。


「……うん。知っている」


 小さな声で君は呟く。


「知っている。知っているよ」


 何度も“知っている”という君に僕は胸を締め付けられる。


「知っているよ。嘘だってぐらい。エイプリルフールだったもんね」


 君の瞳に涙が溜まっていくのを僕は気が付いた。


「知っていて、私も嘘をついたの。ケンゾウの嘘を知らないって嘘をついたの」


 溜まっていたものはこぼれ落ち、頬をつたって流れる。


「嘘つきの罰だね」


 涙なんてもう気にすることがないように君は笑った。


「……ごめん」

「……いいの。大丈夫だよ」


 辛そうな笑顔を見せる君に僕はなんと声をかけていいのか。一体、何を言えば君が辛くなくなるのか。僕はわからずに黙り込んだ。


「……またね」


 君は黙り込んだ僕の言葉を待たずにブランコから降りると、さっさと公園を出ていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る