第9話 四月二日の告白



 デートの帰り道。僕は帰り道にあった公園の前で立ち止まる。サユは不思議そうに振り返る。そんな彼女に僕は訊いた。


「少し話していかないか?」


 僕は視線を公園に一度だけ向けると彼女もどこで話したいのか察したようだ。僕に笑みを浮かべると頷いた。


「うん。いいよ」


 彼女の笑顔は僕のことが好きだから向けている。両想いだと勘違いしているから向けているのかもしれない。


 夕日が沈みかけ、陽射しが斜めから差し込む。オレンジ色の公園は、奇しくも昔にサユと来たことがあった。変わらない位置に置かれたブランコに彼女を座らせると正面の防護柵に腰を掛けた。


「今日は楽しかったね」

「ああ」


 楽しそうに言った彼女は僕の反応で不安そうな表情に変わる。


「ここで昔によく遊んだよね」

「……懐かしいな」


 不安を紛らわすために思い出すように周りを見回す彼女に僕は嘘を告白するきっかけを探していた。


 君を傷付ける。

 間違いなく君を泣かしてしまう。

 嘘で好きだと言ったと知れば、君は傷ついて泣いてしまう。

 わかっているから打ち明けることが出来ていない。


 ならば、最初から嘘を吐かなければよかった。そう言われるだろう。でも、僕は間違いを犯してしまったのだ。


 後戻りはできない。

 引き返すことは無理なのだ。

 取り返しは付かないことだったんだ。


 エイプリルフールと言い訳を作って、僕は君に嘘を吐いて、君を傷付ける原因を作った。


 だから、僕が今。僕が胸を刺すような痛みを感じるのは見当違いなんだ。


 僕が傷付いているような気持ちになるのは間違っている。

 ……被害者ヅラもいいところだ。


「聞いてほしいことがある」

「……また?」


 僕の表情が硬いのだろうか。サユは真剣に僕を見つめる。


「僕が君のことを好きだと言ったのは、嘘、なんだ」

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