第6話 四月一日の嘘



 エイプリルフールについた嘘を打ち明けられなかった。嘘を打ち明けるタイミングを無くしたまま、サユを自宅のマンションまで送り届けた。


 情けない。どころか最悪だ。


 嘘を吐くだけでなく、騙したままサユと次の日に遊ぶ約束までしてしまった。


 帰り道に嬉しそうに微笑む彼女が『明日、映画に付き合ってほしい』と言わなければ何もないままだった日だ。


 僕の想定では嘘だと言えなくても、次の日に適当に嘘だとメッセージを送れば済むと思ってしまっていた。


 しかし、そうもいかなくなってしまった。


 彼女が涙を流してまで言った言葉が頭の中に反響して忘れられない。


 胸を締め付けるように罪悪感は残り、反響音で頭が痛くなるように感じる。

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