第81話 二つ名




 水の1の月、3の週の陽の日。

 ミカは学院から比較的近い森に行って、いくつかの採集をして来た。

 先週ギルドから貰ってきた定額クエストのリストを見て、とりあえず近場でいい採集物がないか試してみたのだ。

 ただ、近いと言っても学院から三キロメートル以上離れており、第三街区を抜けた遥か先に森はあるのだが。


「どれもいまいちだったなあ。」


 夕方というにはまだ早い時間、王都の大通りをギルドに向かって歩き、今日の成果を振り返る。

 移動の距離に関しては文句はない。

 これまでメインで採集していた赤蜥蜴石の岩場に行くよりも遥かに近い。

 だが、単価が赤蜥蜴石ほど高くないし、採集も容易ではない。

 その辺にいくらでもあった赤蜥蜴石と比べると、いちいち探さないといけないのは手間がかかる。


「これは、そろそろ定額から卒業か……?」


 そろそろ、本格的に依頼書のクエストをメインに考えるべき時が来たのではないだろうか。

 移動の距離はそれほどネックにはならない。

 人に見られないようにする、という制約はあるが、ミカには”飛行”がある。

 例えば、今日行った森に行ってからクエストの場所まで”飛行”し、帰って来る時も森まで”飛行”で帰ってくるようにすれば、バレるリスクは相当減らせるだろう。

 乗り合い馬車で一日程度、五十キロメートル前後なら、今のミカならば日帰りでクエストをこなしてくることが可能だ。

 というか、そういう前提でクエストをこなしていかなければ、これまでのようには稼ぐことができそうにない。


「そうなると、討伐系か?」


 ぱっと行って、ぱぱっと片付けて、ぱぱぱっと帰って来る。

 害鳥の時のように、探す必要のない討伐系に絞る方向で考えた方がいいかもしれない。


「討伐系なら望むところだ、ってのはあるけど……。」


 大丈夫だろうか?

 一抹の不安がよぎる。


 やはり、ミカの一番のネックは経験の少なさだ。

 行って、速攻で片付けて、即帰る。

 言うほど容易いことではない。

 依頼書の討伐系なら、その時々でどんな獣や魔獣と戦うことになるかは、どんな依頼が出ているか次第。

 経験を積み重ねていけば、どんな魔獣討伐の依頼が出ていても、依頼達成までの算段が立てられるだろう。

 だが今のミカでは、行って実際に戦うまでは、その魔獣の本当のところは分からない。

 いくら事前に話を詳細に聞いていても、だ。

 話を聞いただけで「これなら倒せるね」などと考えるのは油断以外の何物でもない。

 経験に裏打ちされたものでなければ、結局は実力とは言えないのだ。


「……それでも、やるしかないなら…………やるしかないよな。」


 ギルドに着き、採集物の引き取り窓口に向かう。

 そうして採集物を預け、空になった雑嚢を肩にかけてカウンターから呼び出されるのを待つ。

 今、どんな依頼が出ているのかが気になり、ミカは掲示板に向かった。

 掲示板の横にはギルド職員が立ち、いくつかの冒険者パーティが話を聞くために並んでいるようだった。


(早速試してくれたのかな?)


 先週、ギルドの混雑解消のための案を、いくつかチレンスタに提案してみた。

 どこまで効果があるかは未知数だが、無策でいるよりはマシだろう。

 そういえば、心なしか先週よりも冒険者の数が少ないような気がする。


(まあ、そんなのは日によるんだろうけど。)


 曜日や月末月初など、利用者数にも傾向があるだろうが、その中でも当然増減がある。

 先週がたまたま多かったとか、今週がたまたま少ないとか。

 ミカとしては、今後はこのギルド支部が拠点になるので、できれば混雑は少しでも解消してもらいたいが。


 ミカが掲示板の前に行こうとして、その前の人だかりにどうやって割り込んで行こうと考えていると――――。


「ミカくぅ~~~~~んっ!」


 ドカッ!


「ぐはぁ!?」


 後ろからタックルを喰らった。

 何事かと見ると、ユンレッサがミカに後ろから抱きついていた。


「ちょっ、ユンレッサさん!? いきなり何???」


 ミカが驚いて目を白黒させていると、ユンレッサが「うあーーんっ!」と泣き出す。

 訳が分からん。

 周りの冒険者も何事かと、ざわざわと騒ぎ出す。


「……ぐすん……ミカくんがチレンスタさんに提案してくれたの、すごかったの。 カウンターの仕事がすごくやりやすくなったよぉ……。」


 べそをかくユンレッサから話を聞き出すと、どうやらそう言うことらしい。


 チレンスタはミカの提案を聞くと、すぐに支部長を説得しに行った。

 渋る支部長を強引に黙らせ、効率化案を強行したそうだ。

 翌日の月の日は休みの職員を休日出勤させ、『よくある質問FAQ』を作成、掲示。

 情報インフォメーション担当として、生き字引のおばちゃんを掲示板の横に配置した。

 火の日には新体制で臨んだが、最初は勿論混乱があった。

 現在も情報担当のおばちゃんの所に冒険者が集まり過ぎて、掲示板を見るのに邪魔になってしまいトラブルになるなどの問題が発生しているが、場所を移動させる方向で検討中。

 カウンターに並ぶ冒険者が一割ほど減り、一件あたりの対応にかかる時間も、時間のかかる説明を省くことで大幅に減らすことに成功したそうだ。


(話を聞きたいだけの人が一割もいたのかよ! そりゃカウンターが混むさ!)


 元々利用者数が少な目の陽の日は多少混雑が減った程度ではあるが、平日に関しては顕著に効果が表れたそうだ。


「……もう押し寄せる冒険者にカウンターごと圧し潰される夢を見なくて済むわ…………本当にありがとうね、ミカ君。」


 そんな夢見てたのか……?

 同情というより、もはや憐みの目でユンレッサを見た。







 副支部長室。

 ミカの前にはチレンスタとユンレッサが座っている。


 ユンレッサは先程、新たに追加された依頼書を掲示板に張りに来たらしい。

 だが、夢にまで見てしまうほど逼迫した業務を改善してくれたミカを発見し、感情が昂ぶり過ぎて泣き出してしまったそうだ。

 ユンレッサが泣いていて仕事にならず、他の職員が依頼書を張るのを代わってくれた。

 もはやノイローゼ寸前と言っていいかもしれない。

 ミカの提案は、ユンレッサの精神崩壊ぎりぎりのタイミングだったようだ。


「いやぁ、ミカ君には本当に感謝しかない。」


 チレンスタがミカに紅茶を勧めながら礼を言ってくる。

 どうやら、チレンスタが支部長を強引に黙らせてまで効率化案を強行したのは、ユンレッサのことがあったからのようだ。


「日に日に元気のなくなっていくユンレッサを見ているのは、私も辛いものがあってね。 何とかしてやりたいと思っていたのだが……。」


 ミカに心配かけまいとユンレッサのことは話さなかったが、チレンスタにとっても藁にも縋る思いだったようだ。


(そうでなければ、俺がカウンターの中で業務を見たいと言っても、許可しなかったかもしれないな。)


 ミカはユンレッサをちらりと見る。

 まだ完全には泣き止んでいないが、だいぶ落ち着いてきたようだ。

 少し見ない間に、ユンレッサはかなり情緒が不安定になっていた。


(サーベンジールにいた時のユンレッサとは大違いだな。)


 ミカのことを過剰なくらいに心配し、いっぱい叱られた。

 少々口煩いところもあるが、早く元気なユンレッサに戻ってほしいと思う。


(でも、今月から転属したなら、先週の時点では一週間しか王都で勤務してないよな?)


 その事実に思い至り、ミカは慄いた。

 王都のギルドが極端にブラックな職場なのか、ユンレッサが極端にメンタルが弱いのか。


(一緒に転属してきたロズリンデはまったく変わってなかったけど……。 いや、ロズリンデあの人は参考にならんか。)


 ロズリンデのようなタイプは、どこに居ても自分のペースでやっていける。

 上役のチレンスタの目の前で、内示を暴露できるメンタルの持ち主なのだ。

 ロズリンデあれを基準にしてはいけない。


 チレンスタは混雑解消に手ごたえを感じているのか、機嫌良くミカに話しかける。


「もう一つの、初心者講習の方も今準備中でね。 さすがにこれは、すぐに実行と言うわけにはいかなかったが、今月中に始める予定だ。」


 どうやら冒険者たちの多少の混乱を覚悟の上で、ミカの言う通り週一プランで行う予定らしい。

 ミカは気づかなかったが、ギルドの入り口にはすでに告知の案内が張られているという。


「待ち時間が減って、冒険者からも基本的には歓迎されている。 細かな問題が多少あるが、それらも解決に向けて対応を検討中だ。」


 待ち時間の長さが冒険者にとっても一番の不満だったようで、時間が短縮されることで概ね好評なのだとか。


「これまでは待たされる時間の長さに、利用する冒険者たちもイライラしていてね。 ちょっとしたことでトラブルになることもあったんだよ。」


 割り込んだ、割り込んでないなどのトラブルは日常茶飯事で、そうしたイライラが職員に向かうこともあったようだ。


(ユンレッサがメンタルをやられた一番の原因はそれか?)


 ごつく、強面の冒険者に鬱憤をぶつけられたら、ユンレッサが多大なストレスを抱えてしまっても無理はない。

 まだまだサーベンジールよりも混雑している状態のようだが、待たされる冒険者の限界を超えない程度には収まってきたようだ。


 ミカはチレンスタに、効率化の簡単なコツをいくつか伝えた。

 今行っている一つの作業を切り分けて考え、分業にしたり、一連の流れで纏めたり、動線を考えた配置の方法などなど。

 コンサルト業のような専門的なアドバイスではなく、ミカにとっては当たり前のようなことばかりだ。

 それでもチレンスタは真剣に話を聞き、いろいろと質問をしてくる。

 ミカはそれらを、一つひとつ丁寧に説明する。

 気がつくと、一時間近くも話し込んでいた。


 ユンレッサもすっかり落ち着いたようで、ミカの話を驚いたような表情で聞いている。

 チレンスタは話が一段落すると、ソファに寄りかかり、ふぅー……と息を吐く。


「……確かにこれなら、私が予算をぶん捕りさえすれば、早いうちに稼働させることができそうだな。」

「予算に余裕があるのなら、他にもカウンター業務から切り離せそうですね。 今はとにかく、カウンターの混雑解消を第一に取り組むべきですから、何とかチレンスタさんには頑張ってもらわないと。」


 今度はチレンスタが過労で倒れてしまいそうだが、是非とも効率化を最後まで完遂してもらいたい。

 なにせ、ミカがこれから六年もお世話になる支部だ。

 毎回毎回、長々と待たされてうんざりするくらいなら、こうして多少の知恵を貸すくらいはどうということはない。


(俺の快適な冒険者ライフのために、頑張ってくれたまえ、チレンスタ君。)


 自分の使わない施設がどれだけ混雑しようが知ったことではないが、冒険者ギルドはミカがほぼ毎週利用するつもりだ。

 一日でも早く、快適なギルドに生まれ変わっていただきたい。


 ミカはすっかり冷えてしまった紅茶で喉を潤す。

 その時、バーンと部屋の扉が開かれた。


「やっほー、ミカ君。 カード届けに来たよー。」


 入って来たのはロズリンデだった。

 ミカは先週の失敗を踏まえ、この部屋に通される前にギルドカードを職員に預けてきたのだ。

 処理しておいてね、と。

 その場でチレンスタが了承してくれたので、職員も素直に引き受けてくれた。

 帰りに返してもらおうと思っていたが、ロズリンデが届けに来てくれたようだ。


「ロズリンデ、仕事はどうした!」

「今日はもう上がりでーす。 ミカ君たち話が長いんだもん。 迎えに来ちゃった。」


 迎えに来た?

 何のこと?とミカが呆けていると、ロズリンデがミカの腕を引っ張る。


「それじゃ、食べに行きましょ。 お姉さん、美味しいお店見つけちゃった。 ユンレッサ、先に行ってるから。 この前のお店ね。」

「ちょっと、ロズリンデさん!?」


 ロズリンデは強引にミカを立たせると、そのまま引きずるようにミカを部屋の外に連れ出す。

 副支部長室からユンレッサとチレンスタの声が聞こえるが、ロズリンデには届いていないようだ。


(ほんとにマイペースだな、この人。 ほとんど誘拐やぞ、これ。)


 ミカは無駄な抵抗は諦めて、ロズリンデに素直について行くことにした。







 そうして連れて来られたのは酒場だった。

 すでにほとんどの席が埋まり、ミカたちが着いたのは最後に空いていたテーブル。


「……………………ロズリンデさん?」

「何、ミカ君。」


 ミカはジト目でロズリンデを見るが、そんなことを気にするようなロズリンデではない。

 入店と同時に赤酒という果実酒のような酒を一杯空け、現在二杯目を美味しそうに飲んでいる最中である。

 ちなみにミカの前には、緑っぽいよく分からない果汁ジュースが置かれている。


「さすがに学院生のうちに酒場にいるのはまずい気がするんですが。」

「そうなの? 学院の規則なんて、私知らないし。」


 いや、俺もそんな規則があるかは知らないけど、普通だめでしょ。

 ……だめだよな?


(この世界の法や常識では、そういえばどうなってるんだ?)


 ミカに酒を飲ませようとしたディーゴが、ニネティアナにどつき回されていたから、おそらく飲酒の年齢が定められていると思うんだけど。

 まあ、それは今は置いておくとして。


「それで?」


 ミカはロズリンデに問いかける。


「随分強引なお誘いでしたけど、どんな意図が?」


 さすがのロズリンデでも、今回のはちょっと強引すぎる。

 これまでにも一緒に食べに行ったとかなら、まあ分からなくもない。

 だが、これまでにそんなことは一度もない。

 ただの冒険者とギルド職員。

 話の流れで「今度食べに行こう。」なんていうなら分かるが、こんな強引な連れ出しに理由がない訳がない。


「そんな大袈裟なことじゃないわよ。 ただのお礼よ、お・れ・い。 あ、お兄さ~ん、赤酒おかわり~。」


 通りかかった店員に追加の酒を注文する。

 ペース早いな、おい。


「お礼ですか? 何の?」

「ユンレッサが元気になったお礼。」


 そう言って、ロズリンデがウィンクする。


「いやぁ~、王都のギルドが炎上してんのは聞いてたけど、ここまでひどいとはさすがの私も思わなかったわ~。 知ってたらバックレてたわよ。」


 ロズリンデが届いた酒と、シチューとパエリアのような物を受け取る。

 取り皿に分け、ミカの前に置いた。


「さ、今日はお姉さんのおごり。 こないだの非番で、結構勝っちゃった。」


 そう言ってサイコロを振るような仕草をする。

 おいおい、この世界にもクラップスとかあるのか?

 まさかチンチロリンじゃないよな?


(まあ、適度に遊ぶ分にはいいのか……?)


 仕事のストレスをギャンブルで発散というのはよく聞く話だ。

 多くの場合、よりストレスを溜め込む結果になるが。

 それも含めて楽しめているなら、ミカがとやかく言うことではないだろう。


「まあ、それでさ。 ユンレッサがテンパっちゃって。 随分と思いつめてたって訳。」


 ロズリンデもパエリアのような物を、自分の皿に乗せて食べる。

 ミカも「いただきます。」とだけ言ってシチューを食べた。

 やや酸味が強く、ハヤシソースの様な感じだった。

 パエリアと一緒に食べると、かなり美味い。


「私も飲みに連れ出したりしてたんだけどだめでさぁ。 でも、こないだミカ君がチレンスタさんにいろいろアドバイスしてくれたでしょ。 あれで本当に助かったのよ。」


 ミカはロズリンデの話を聞きながら、シチューとパエリアをぱくぱく食べる。

 一日中森の中で採集に駆けずり回っていたのだ。

 少し腹に入れないと落ち着かない。


「ユンレッサも、改善案を出してくれたのがミカ君だって分かったら、少し元気になったみたい。 で、実際に効果もあったもんだから、そりゃもう感激しちゃってね。」


 それが、今日のタックルに繋がったようだ。


「第二支部の職員の中では、ミカ君はもうちょっとした有名人よ? ”二つ名”持ちに一歩近づいたわね。」


 ロズリンデが赤酒を飲みながら、楽しそうに言う。


 二つ名。

 一流の冒険者は、大抵この二つ名というのを持っている。

 個人を表す代名詞というか、あだ名のような物という感じがするが、冒険者ギルドにおいてはほぼ名前と同等に扱われるという。

 この二つ名を認定するのが、実は冒険者ギルドなのだ。

 冒険者の名前が分からなくても、二つ名で指名依頼を出すことができる。

 「ヤロイバロフ」という名前が分からなくても、「”朱染しゅぜん”に頼みたい。」と依頼を出せるのだ。

 あだ名などは似たり寄ったりの物が、国中を探せばいっぱいいるだろう。

 だが、二つ名は国中のギルドでも重複することはない。

 過去に同じ二つ名がいた、ということはあっても、ヤロイバロフが健在のうちは絶対に”朱染”が他の誰かに使われることはないのだとか。

 そして、ギルドカードも更新して、二つ名は情報として埋め込まれるし、なんと券面の名前の後ろにも刻まれるのだという。

 ヤロイバロフ ”朱染”

 という感じに。

 ギルドカードを出すのも恥ずかしくなるので、絶対にやめて欲しいと思うのは俺だけだろうか?


 ロズリンデの話を聞き、ミカはぷるぷると首を振る。


「そんなの、欲しいと思ったこともないです。」


 すごいなあ、とは思うが自分がそうなると思ったこともない。


「あら、冒険者だったらやっぱりそういうの目指さないと。 英雄譚が作られるような。」

「いやですよ、そんなの。」


 恥ずかしい。

 俺は気楽に気ままに冒険者がやりたいんだ。

 英雄に憧れる部分は確かにあるが、なりたいと思ったことなんて一度もない。


 そんな話をしていると、息を切らしたユンレッサが店に入って来た。

 ミカが手を挙げると、ユンレッサは驚いた顔をしてズンズンとテーブルに歩いてくる。


「ちょっと、ロズリンデ! ミカ君がいるのに酒場ってどういうことよ! まさかここじゃないだろうって、他のお店に行っちゃったじゃない!」

「私はちゃんと『この前のお店』って言ったわよ? そんなのいいから、ほらあんたも飲みなさい。 ちょっとミカ君に活を入れてあげて。」

「……何で僕が活を入れられるんですか?」


 ロズリンデは自分の分と合わせて、二杯の赤酒を店員のあんちゃんに注文する。


「ミカ君、二つ名が欲しくないんですって。 そんな志の低いこと言ってる子には、ちょっとお姉さんお説教しちゃうわよ!」

「ちょっとやめなさいよ、ロズリンデ。 ミカ君が困ってるでしょ。」


 もしかして、ロズリンデは絡み酒なのだろうか?

 注文したお酒が届き、ミカはユンレッサと乾杯する。


「ミカ君、今日はごめんね。 急にあんなことしちゃって。 驚かせちゃったわよね。」


 ミカは首を振る。

 まあ、確かに驚いたといえば驚いたんだが。


「気にしないでいいですよ。 王都こっちに来てから、すごく大変だったって聞きました。 今日話したこととかもやっていけば、もう少し改善できると思いますから。」


 大丈夫ですよ、とユンレッサに笑いかける。


 その後、ロズリンデがユンレッサに絡み始め、ユンレッサはいつものことなのか軽く受け流し、ミカは久しぶりの居酒屋の雰囲気を大いに楽しんだ。

 そして、門限があることを思い出した時には、すでに全力で走らないと間に合わないような時間になっていた。




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