第77話 クレイリアの想い




 水の1の月、2の週の月の日。

 憂鬱な一週間の始まりだった。


「はぁ~~~……。」


 朝っぱらから溜息をつき、とぼとぼと校舎に向かう。

 レーヴタイン組の皆には先に行ってもらい、ミカはなるべく朝のホームルームぎりぎりに教室に入るようにしていた。

 クレイリアの、あの悲しそうな視線に耐える時間を少しでも減らすために。


「いつまでこんなことが続くのかね……。」


 クレイリアがミカにこだわることを止めれば、とりあえず今の様に逃げ回る必要はなくなる。

 だが、先週の様子を見る限り、もうしばらく時間がかかりそうだった。


 ミカが教室の近くに行くと、何やら教室内がざわざわと騒がしかった。

 普段、教室の子供たちは割と静かだ。

 侯爵家の令嬢がいることで緊張しているのだろう。

 クレイリアの後ろに控える護衛騎士たちも異彩を放っている。

 クレイリア周辺の異様な雰囲気に圧され、教室の子供たちは少し委縮しているのだ。


 ミカは教室に入ると、ぎょっとして立ち止まった。

 目の前にクレイリアが居たからだ。

 クレイリアは普段、教室の一番奥、一番後ろの席に座っていた。

 後ろに控えるの護衛騎士のことを考えれば、一番後ろ以外は周りの迷惑になるからだ。

 だが、そのクレイリアが今日は教室の一番前の席。

 それも出入り口に一番近い席に座っていた。

 教室中の子供たちは、そんなクレイリアを見てざわざわと騒いでいたのだ。

 普段その辺りに座っていた子供たちは、どこに座ればいいのか分からなくなりオロオロしている。


「おはようございます、ミカ様。」


 クレイリアがにっこりと微笑み、ミカに挨拶をしてくる。

 驚き唖然としていたミカだが、その声で今の自分の置かれた状況を理解し始めた。


 ヴィローネともう一人の護衛騎士は、素知らぬ顔でクレイリアのすぐ後ろに控えている。

 

 そのことに意識が向きすぎて、ミカは咄嗟に挨拶を返すこともできずに逃げてしまった。

 クレイリアを無視するようにそのまま教室の中に進み、レーヴタイン組の居る辺りの、空いている席に向かう。


 ミカがクレイリアに挨拶を返さなかったことで、護衛騎士の一人が剣呑な空気を纏いミカに声をかけようとしてきた。


「おい君、クレイリア様が挨拶をして――――。」

「よいのです……。」


 クレイリアは護衛騎士に声をかけると、そのまま俯いてしまう。


(距離を置けって言ってきたのは侯爵家そっちだろう! もっとちゃんとクレイリアをコントロールしてくれよ!)


 こんなイレギュラーばかりになれば、ミカだけではもはやどうにもならない。

 ミカだってこんな態度を取りたくないのだ。


 少し離れた席に座っていたリムリーシェが、ミカの所にやって来る。


「ミカ君……。」

「分かってるっ……。 分かってるから…………言わないでくれ。」


 ミカが苦し気に、呻くように言うと、リムリーシェは何も言わずに席に戻っていった。







 重苦しい学院の授業が終わり、ミカは王都内の探索に出掛けていた。

 最近は平日はこうして南東の大通りに面した区画を歩き回っている。


 王都には八本の大通りがあるが、その大通りに区切られた区画には番号がつけられている。

 北にある区画から時計回りに1区から8区まで。

 つまり南東の大通りに面した区画は、3区と4区ということになる。


 そうして歩き回ることで、ついに鍛冶屋街とでもいうべき一画を3区に見つけた。

 第二街壁にかなり近い一帯に鍛冶屋が集まり、その近くに武器屋や防具屋がいくつもあった。

 試しに覗いてみると、そこはまるで各々の武器や防具の専門店といった感じだった。


 剣だけを扱う店、戦斧だけを扱う店、ナイフだけを扱う店といった具合だ。


「うはぁ~……。」


 思わず感嘆の息が漏れる。

 ニネティアナが『良い物が欲しければ鍛冶屋に行け。』と言った理由が分かった。

 こういう専門店があるなら、本当に自分に合った物を見つけられるだろうし、作ってもらうこともできるだろう。


 ミカに物の良し悪しは分からないが、ここにある物がすべて、質についてはかなり高い物ばかりなのは分かる。

 値段はそれなりに張るが、一線級の冒険者が持つに相応しい物が並んでいた。


「すげぇ~……。」


 目の前にある、ごついナイフを食い入るように見る。


「かっちょえ~……。」


 ミカの手では大き過ぎて持てないようなサイズのナイフ。

 ナックルガードもついた、見た目が超ミカ好みのナイフだった。

 こんなので斬られたら、ミカの手首くらいは簡単に落ちそうだ。


「お値段、金貨八枚。」


 八十万ラーツ。

 ミカの持っている鋼のナイフですら十万ラーツだ。

 大きさがぜんぜん違うし、おそらく材料もいい物が使われているのだろう。


(これで戦うって、めっちゃ憧れるんだけど! こういうのを、さり気なく使ってるのって格好いいよなあ。)


 今のミカでは、こんなの買ったら周りに自慢して回りそうだ。

 だが、こういう物を何でもないことのように扱う冒険者こそが本当に格好いいのだ。

 いつもこれ使ってますが、それが何か?みたいな。


 思わずにやにやして眺めてしまうが、残念ながら手が届かない。

 しかも、何が悲しいかと言えば、そんなナイフを手に入れてもミカには使いこなせない。

 ミカの主力は魔法だ。

 ナイフはあくまで保険で、「あれば使うこともあるかも?」程度でしかない。


「どっかで、ナイフ術みたいなの教われないかな。」


 冒険者にはナイフを使う者が多い。

 メイン武器としてではなく、サブ武器として扱う人も入れると、結構な割合になると思う。

 みんな、どうやって武器の扱いを知るのだろうか?

 もしかして我流?


「こういうのも、そのうち覚えたいなあ。」


 学院でやらされていた”型”は、おそらくナイフではない。

 渡されていた棒もナイフには長すぎるので、別の武器であるのは間違いないと思う。


 そう考えると、学院生で気になる点が一つある。

 一部の学院生なのだが、短剣ショートソード小剣スモールソード鎚矛メイスなどを携行しているのだ。

 制服のローブに隠すように持つ人もいれば、堂々と見えるように佩いている者もいる。

 最初は驚いたが、どうやら学院では普通のことのようで、入学生以外ではそれを気にする人がいなかった。

 もしかしたら、レーヴタイン領の学院で教えていたのは、これらの武器を扱うための”型”なのかもしれない。


(軍人になどなりたくないが、戦闘術みたいなのは是非教えていただきたい。)


 勝手なことを言ってる自覚はあるが、それが偽らざる正直な気持ちだ。


 ミカが店の外に出ると、空がだいぶ赤くなっていた。


「やべ、長く居過ぎた。」


 今のミカなら、門限までに余裕をもって帰ることができるが、慌てて駆け込むようなことはできれば避けたい。

 【身体強化】で四倍に強化しているので、走っていて誰かにぶつかったら怪我をさせかねない。

 ミカは適度に急ぎつつ、気をつけながら裏路地を走っていった。







 正門に着き、ミカは軽く息を整える。

 正門前の第三街区には人の行き来があるが、門限が近いためか学院生は一人も見えなかった。


「ここまで来れば、とりあえず大丈夫だな。」


 西の空は赤く、東の空は暗い。

 そして、その中間の空は綺麗なグラデーションを描き、美しい紫の色が見える。

 ミカは空を見上げながら、寮に向かって歩く。


「…………ミカ様……。」


 ミカが歩いていると、後から呼びかける小さな声が聞こえた。

 何気なく振り返ると、そこにはクレイリアがいた。

 学院に植えられた木の陰から、悲し気な表情のクレイリアが姿を見せる。


「なっ……!?」


 ミカは驚き過ぎて、その場で固まってしまった。


(――――な、んで、こんな所にクレイリアが!?)


 クレイリアは俯き、胸の前で手を抱き、痛みを我慢するような、涙を堪えるような表情をしていた。

 クレイリアの姿を茫然として見ていたミカだが、すぐに我に返る。

 周りを見回すが、護衛騎士の姿がない、

 あり得ないとは思うが、まさかクレイリアは一人なのか?


(誘拐事件はたった一年前のことなんだぞ!? 何やってんだよ侯爵家の騎士たちはっ!)


 侯爵に距離を置けと指示されているが、さすがにこれは無理だ。

 このまま放っておいてクレイリアの身に何かあれば、そっちの方がまずい。

 ミカは慌ててクレイリアに駆け寄る。


「クレイリア様っ! このような所に、どうして!? 護衛の騎士たちはっ?」


 ミカが焦って尋ねるが、クレイリアは小さく首を振る。


「一人で来ました。 ミカ様と、どうしてもお話がしたくて……。」


 思い詰めた表情のクレイリアは、そう言って口を噤む。


 クレイリアが一人で行くと言ったところで、行かせてもらえる訳がない。

 おそらく、屋敷を抜け出したのではないだろうか?


(まずいまずいまずい、どうすればいい? どうすりゃいいんだよ、こんなの!?)


 ミカの方がパニックになりそうだった。

 今できる最善は何だ?

 このまま放っておくのは論外。

 いくら距離を置けと指示されてても、それは通常時の話だ。

 非常時には、非常時の対応が求められる。

 こんな時にまで、通常時の指示にこだわるのは愚の骨頂だ。


(今できることは……。)


 ミカは頭をフル回転させる。

 ミカのできることなど高が知れている。

 今考えられる現実的な対応は二つか?


 ・クレイリアを屋敷まで送る。

  ただし、ミカには第一街区に入る手段がない。

  第一街壁まで着いたら、また方法を考える必要がある。


 ・学院に連絡

  学院に残っている教師に丸投げしてしまう。

  そうすれば、後の責任は学院に移る。

  第一街壁のこともミカが考える必要はない。


 もし教師が残っているなら、学院に丸投げしてしまうのが良さそうだ。

 そう方針を定め、ミカは優しい表情を作る。


「クレイリア様、今日はもう遅いですから、学院の教師にお屋敷まで送ってもらいましょう。」


 ミカがそう言って道を引き返そうとしても、クレイリアは俯いたまま動かなかった。

 胸に抱いた手は真っ白になるほど強く握られ、引き結んだ唇が微かに震える。


「……そんなにも……。」


 クレイリアが、震える声でぽつりと呟く。


「…………それほどまでに、私は……ミカ様に嫌われてしまったのですね……。」


 その頬に、堪えきれずに涙が伝った。


 そんなクレイリアの姿を見ても、ミカは言葉に詰まってしまう。

 ここで「そんなことはない」と言うのは簡単だ。

 だが、その後は?

 そんなことはないと言ったところで、やって来るのはまたクレイリアから逃げ回る日々。

 それならばいっそ、ここでそういうことにしてしまった方がいいのではないか。

 そんなことを考えてしまった。


「私は……お恥ずかしいのですが、友人というものがいないのです……。」


 クレイリアは震える声で、話し始める。

 同じ年頃の子供が周りにおらず、護衛騎士や使用人はいても独りぼっちだったこと。

 魔力の才能があることが分かり、これで同じ年頃の子供たちと会えると喜んだこと。

 だが、父である侯爵に許してもらえず、サーベンジールの魔法学院に通わせてもらえなかったこと。


「……愚かだと笑ってもらっても構いませんよ。 私が誘拐された時、『学院に通う子供たちとお話ができる』。 そう言われて誘い出されたのです。 笑ってしまいますよね? ……自分でも、何て馬鹿なんだって思います。」


 そう言って、自嘲気味に笑う。

 だけど、そこでミカに出会った。


「殺されるかもしれない。 もう二度とお父様にもお母様にも会えないかもしれない。 どんなひどい目に遭うのかと、不安と恐ろしさに潰れそうになっていました。」


 荷馬車に長い時間閉じ込められ、床板が一枚一枚外された時は「殺されるかもしれない」と恐怖で震えが止まらなかった。

 だが、そこに現れたのがミカだった。

 最初は年下の女の子だと思った。

 クレイリアを誘拐した賊の、小間使いでもさせられているのかと。

 だけど、その女の子はクレイリアを助けに来たと言う。

 そして、クレイリアを背負ったまま、すごい速さでヤウナスンまで走り切ってしまった。

 その時に気づいた。


「もしかしたら、この子は魔法士なの? 私と同じで【神の奇跡】を習っているのかも?って。」


 その子は耳が聞こえないらしく、クレイリアの聞きたいことに答えてもらうことはできなかった。

 だけど、


「お友達になれないかな……。」


 そんなことを、ミカの背中で思っていたのだという。


 ヤウナスンでは、ミカの耳が聞こえないことでトラブルになってしまった。

 街の中に入ってもいいという兵士の言葉がミカには通じず、必死に兵士たちを威嚇していた。


「あの時は本当にどうなるかと、どきどきしてしまいました。 もしも本当に魔法士だったら、兵士たちが大変なことになってしまいます。 私も必死になって、兵士たちに近づかないように説得したのですよ?」


 その時のことを思い出しているのか、クレイリアは可笑しそうにクスクスと笑う。


 無事にレーヴタイン侯爵の屋敷に戻り、クレイリアを助けてくれた女の子が実は男の子だと知って本当に驚いたという。

 そして、屋敷で再び会えた時に、再会を約束した。


「また、王都でお会いしましょう。」


 その約束を胸に、一年間頑張って来た。

 クレイリアの表情が歪んだ。


「……ミカ様に、今の私を見て欲しくて、頑張ってきました。 つらい時も、大変な時も……王都で会えるミカ様に、一番頑張った私を……見て、欲しくて……。」


 クレイリアは唇を震わせ、言葉を詰まらせミカに訴える。

 自分を見て欲しい。

 ミカと会う日のために、こんなに頑張ったのだ、と。


 クレイリアの想いが突き刺さる。

 ミカの態度が、どれほどクレイリアを傷つけてきたか。

 ミカは唇を噛んだ。


「……私には、友人がいないので分からないのです。 私の何が、それほどまでにミカ様を……怒らせてしまったのか。」


 俯いていたクレイリアが顔を上げ、ミカを見る。

 その顔は涙でくしゃくしゃになっていた。


「……私の、至らない所は……直します。 だから……。」


 クレイリアの頬に、大粒の涙がぽろぽろと零れた。


「……だから……嫌いに、ならないで……。」


 クレイリアが泣き崩れる。

 その姿は、ただの一人の女の子だった。

 侯爵家の令嬢だとか、そんなことは関係ない。

 ミカが傷つけ、それでもミカに嫌われたくないと、泣きながら訴えている。

 ただの女の子なのだ。


(これがっ……こんなのが……あんたの望みなのか、侯爵っ……!)


 握り締めた拳が震え、噛みしめた奥歯がぎりっと鳴った。

 こんなことのために助けたんじゃない。

 傷つけるために、クレイリアを助けたんじゃない。


 すでに日が落ち、真っ暗になった空を見上げ、大きく息を吐き出した。

 まるで自分の胸の中に溜まっていた、もやもやのすべてを吐き出すように。

 ミカはクレイリアの前にしゃがみ、震える肩にそっと手を添える。


「クレイリア……。」


 そうして肩を優しく撫で、泣き止むのを待つのだった。







 クレイリアが落ち着くのを待って、ミカたちは正門前に移動した。

 さっきまで居た場所は真っ暗過ぎて、相手の顔すら見えなくなってしまった。

 あれではロクに話をすることもできない。

 正門前も薄暗いが、第三街区の街の光が少しだが届く。

 ロータリーの向こう側からは、ミカたちがいることを判別するのは難しい。

 その程度の光だが。


「クレイリア様のことを嫌ってるとか、そういうことはないんです。」


 ミカはクレイリアにどう説明しようか頭を悩ませながら、とりあえず誤解を解くことにする。


「……それでは、私に直して欲しい所があるわけではないのですか……?」


 直して欲しいところ……?

 あるよ?

 そりゃ、いっぱいある。

 いや、いっぱいは言い過ぎだが、直して欲しい所はばっちりありますよ?

 そんなことを考えてしまい、ミカが言葉を詰まらせると、途端にクレイリアの目から涙がぽろぽろ零れる。


「……やっぱり、それで嫌われてしまったのですね…………ぐす……。」

「違います違いますっ!」


 ミカは慌ててクレイリアを慰める。


「友人と言っても、直して欲しい所の一つや二つ、誰にでもあるものです。 ですが、それで嫌いになったりはしません。」


 まあ、実際はそれが原因で距離を置くこともあるけどな!

 今は余計なことは言わないでおこう。


「そう……なのですか?」

「そうです。 そういうものなんです。 だから、そんなに思いつめないで。」


 ほんと、頼むから。

 女の子に泣かれるのは本当に困る。


「それでは、ミカ様は私のどこを直して欲しいと思っているのですか?」

「え? どこって……。」


 その『ミカ様』ってやめません?

 そう言いたいが、さて言っていいものか。

 でも、これは言ってもいいんじゃないか?

 侯爵家の令嬢が、平民に様付けとかおかしいもんな。


「その『様』ってやめませんか? ミカ、でいいですよ?」

「ですが、ミカ様はミカ様ですし。」


 誰が決めたんだよ、そんなこと。


「友人同士では、普通『様』は付けないんですよ。」

「まあ、そうなのですか!」


 クレイリアが手をポンと叩き、大袈裟に驚く。


「それではミカ様も、私のことはクレイリア、と。」


 そうクレイリアがニコニコしながら言う。

 いやいやいや、それはまずい。勘弁してくれ。


「いえ、クレイリア様を呼び捨ては、ちょっと……。」

「ですが先程は、クレイリア、と。」


 え、呼び捨てにしちゃった?

 いつ?

 ミカが冷や汗を掻いていると、クレイリアが悲しそうな顔になる。


「友人は『様』をつけないとおっしゃられながら、私には『様』を付けるなんて……。 やっぱり、私とは友人になりたくないのですね……ぐす……。」

「そんなことはありません!」

「……ですが……ぐすん……。」


 クレイリアが泣きそうになっている。

 なっている……?

 本当に?

 嘘泣きなんじゃないのか、これ。

 何となく怪しい感じを受けつつも、確認のしようがない……。


「……クレイリア。」

「はい、ミカ!」


 ミカがクレイリアを呼ぶと、即答で返事が返って来た。

 しかもめちゃめちゃいい笑顔なんだけど。

 ミカがジト目で見ると、クレイリアがペロッと舌を出す。

 可愛いな、おい。

 ちょっとはしたないけど。


 そうして、クレイリアと少しだけ打ち解け、屋敷まで送ることにした。


(はぁ……、どうやって侯爵を説得するかな。)


 少なくとも、こんな強硬手段に訴えるくらいには思いつめていたのだ。

 そこを突いて、侯爵から譲歩を引き出すしかない。

 最近のストレスにプラスして、侯爵の説得を想像するだけ胃が痛い気がしてきた。

 胃の辺りを摩っていたら、「お腹が痛いのですか?」とクレイリアに心配されてしまった。




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