第36話 浴衣と祭りと浮かれ日和6
さて、大塚の財布を取り戻す為に奮闘している我々だったが、秋谷の作戦により偶然のたわもので財布を取り返す事になったのだが、俺はかなり不安だ。まず秋谷が話した作戦は俺と橋田が歩いている時に偶然男にぶつかる、男がよろけている間にシロネさんが心配そうに近づきその間に大塚と秋谷が犯人から財布を抜き返す。そんなトントン拍子な作戦なのだが、そもそも相手を転ばす場合には結構な勢いでぶつからないと意味がない。割と重要な役割を担ってしまったがやるしか無い。
俺は男と向かい側の道から歩いている。そして、どんどんと近づくにつれ俺の心拍数が上昇する。
「落ち着いてください、助手。失敗したら明菜が可哀想ですよ。まあ最悪、我の魔法で燃えかすも残らないくらいには焼き払いますから」
「やめて、怖い事言わないで」
「ふっふっふっ、我の魔法はどんな生物でもあの世に屠れますからね。」
橋田が調子が良い事を言ってる間に男は5m付近にまで近づいた。俺はここで足を捻り、男の方に寄りかかった。今だ。
「うわぁ、すみません」
そう言いながらわざとらしく、俺と男は共に転んだ。漫画とかでよくみる感じのコケ方をイメージしてくれたらわかりやすいと思う。
「いてて、なんだ?」
男が予想通りの反応をしたところで次はシロネさんの番だ。俺はあくまでもキッカケを作るだけの割合だからな。
「大丈夫ですか?」
シロネさんがそう問いかけると男がニヤニヤしながらシロネさんに注意を向ける。
「あぁ、ははい。大丈夫です。ぐふふ」
それにしてもここまで下心含んだ笑い声もも珍しいな。単純なやつで良かった。
「あの、お茶でも.......」
ナンパするなんて、大した余裕だな。
そして、秋谷と大塚が近づいてきて男性のポケットを弄る。スリというよりかは盗人の気分だ。やはりこういうキッカケを狙って犯罪を犯すのだろう。そして二人は目的を果たした後、そそくさと何処かに消えていった。
そしてシロネさんもその場から立ち去る為
「すみません、彼氏いるんで」
と、不審者に対して一蹴した。
その後、俺たち一同は速攻で撤収した。犯人は呆気に取られて辺りをただひたすらにキョロキョロしていた。
「やったな、成功するとは思わなかったな。」
無事成功し再度集合した俺らは戦利品を漁った。ええっと、秋谷は大塚の財布、そして大塚は......よくわからない財布を五つぐらい持っていて喜んでいた。なんだ。
「見ろ、大量だ!!私の財布が二倍に増えたのだ」
大塚は自慢げに周囲に見せかける。俺たちは思考停止した。皆が財布を取られていたらただのハッピーエンドで終わるのだが、俺たちは取られていないよな?実際、俺のポケットには幸い、財布の膨らみを感じる。
「あの、それは?」
「大丈夫だ。財布だ。」
シロネさんが問うと大塚はアホヅラで答えた。いや、大丈夫じゃねえよ。まじかよコイツ。いらん事しやがったな。つまり、あれだろ他の盗まれた人の財布を俺たちが取り返してしまったって事か。
なるほど。色々と笑えない話になってきたぞ。
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