第35話 浴衣と祭りと浮かれ日和5

「なに、動き回っているって事は財布が勝手に動いているって事か?」

 そういうことでは無い。

 そして、大塚に秋谷が訂正する。

「つまりは、誰かに盗まれたって事です。」

 ただひとことシンプルに告げた。これを聞いた大塚はその場に崩れ落ちて落胆した。と、同時に項垂れた。

「な、なんだと.......この私が、財布を取られるだなんて。あぁ不覚だ!!不覚すぎる!!どのくらい不覚かって言ったら、猿も棒から落ちる的なやつだ。」

 いやいやいや........。

 ニュアンス的にもことわざ的にも間違っている気がするのだが。

「まて、大塚。落胆するのは早すぎるぞ。なんだって、この私がいるのだからな。我が混沌に塗れた魔法で必ずしや、財布を取り戻して見せましょう。なぁに、安心しなさい。我は黒のブラッドファミリーのリーダーだからな。」

 橋田は自信満々にドヤ顔を披露しながら胸に手を当て踏ん反り返っている。

 たいそうなことを言っているが、魔法でどうにかなるものなのか?

「流石はリーダーですね」

「でも、どうやって取り返すつもりですか?」

 秋谷がそう尋ねると橋田は自信満々に、

「ふっふっふっ、我が魔法のひとつ、【NAVI】を使いましょう。これを使う事で特定のものにピンを刺すことができます。Googleマップみたいなものです」

 それ可視化できちゃうの?

「なら、早く行ったほうがいいんじゃないか?乗り物に乗って行かれたら流石にまずいだろう」

「ムムッ、確かにそうなったらまずいですね。では、先を急ぎましょう」

 橋田がそう言い、俺たちはその、なんだ?【NAVI】に従い走っていく。不思議な事に本当にGoogleマップみたいな案内が見えるのだが、どうなっているんだろう。ってか、ここまで来たらもはやなんでもありだろ。

 そして【NAVI】に従って暫く走っていると、とうとうGoogleマップの赤いピン的なモノに刺された人物を発見した。その人物をよく見てみると、すごく怪しい黒いパーカーを深く被った不審者であった。どう見てもやばそうな事は明白である。

「どうする?直接ぶん殴りにいくか?」

 大塚は腕をブンブン回してやる気満々である。だが、やめとけ。

「いや、下手に干渉するのは危険です。もしも、相手が武器を持っていた場合、かなりまずい事になります」

「じゃあどうするんだ!?私の財布は永遠に囚われたままなのか?」

 焦りに焦っている大塚と比較的冷静なその他3人は、暫く考え込んだ。すると、秋谷が何か思いついたようで提案する。

「あの、提案があります」

「おっ、何か策があるのか?」

「そうですね。では温和にいきたいので有れば、偶然を装いましょう。」

「どういう事ですか?」

「つまり、様々な事象をこちら側が起こせば良いのですよ。だから、あくまでもたまたま取り返してしまったという筋書きで行けると思います。」

 なるほど、つまりは取り返した事に気づかれないようにやるって事か。なんか、この字面だけ見たら犯罪者みたいだな、俺たち。

「では、オペレーションレベル4、スタートです!!」

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