第34話 浴衣と祭りと浮かれ日和4
さて、我々ブラッドファミリーは無事に射的を終わらせて次の屋台に足を運んでいた。俺は射的でかなり神経をすり減らし、衰弱していたのだが、一方の橋田は相変わらず元気なようで目につく屋台に全ての飛びつくように向かっていった。くじ、輪投げ、金魚すくい、風船釣りと一通りのレジャーを楽しんでいたのだが、さてさて一体どこにそんな体力が存在しているんだ。何故そう思うかって?俺はもう輪投げら辺から既にヘトヘトなのだからな。
「いやー、大量ですなー。」
「たまにはこう言うのも楽しいですよね」
橋田とシロネさんはご機嫌ながらヨーヨーを手にぶら下げていた。そして、軽やかにステップをしながら橋田はヨーヨーを振り回した。
「くっそー、わたしには難しすぎるぞ」
大塚には並の縁日は難しかったようで、俺たちと同じように疲弊した様子であった。
「よーし、一通り遊び系をやったので、次はリンゴ飴でも食べにいきましょうか?」
「良いですね。賛成です」
橋田の提案に対し秋谷が先に賛同する。そして、他の皆も順番に橋田の意見に賛同した。まぁ、でもリンゴ飴は嫌いでない。しかもどっちかと言うと好きな方の部類に入るのだ。そうだ、リンゴ飴にも射的のような思い出がある。
小さい時の思い出。そこにはまたその少女がいた。まだ俺も小さな子供であったからうっかりドジを踏んでしまい、財布を落としてしまったのだ。りんご飴を買おうとしていた俺はそりゃあもう落胆し、涙した事だろう。しかし、そんな時。またあの少女が現れたんだ。その少女は俺に言った。「ふっふっふっ、こう言う時のために我が力があると言う事を忘れたのですか。安心しろ。わたしが見つけ出すから」と、その少女は自身ありげに話していた。そして財布をなんとか見つけてりんご飴を買って二人で笑いながら食べたのだ。だが、その少女の顔を思い出そうとしてもぼやーっとしていて分からなかった。でも二人で笑い合ったのだ。そんな合ったのかも不確かな記憶に俺は懐古的ムードになっていた。
そして、デジャブというべきか。俺の記憶に似た事が起こるのであった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
大塚は皆を呼び止め身体中を触っている。
「どうした大塚?」
「.......や、落としたかも」
この言葉に戦慄が走る。
「お前、まさか........」
「いや、まて。もう一回探してみる。わたしの気のせいかもしれないからな」
そう言って大塚は同じところを探す。しかし、無情にも無いものはないらしい。大塚は涙目になりながらもあたりをウロウロしていた。そんな時、橋田が大塚に告げる。
「ふっふっふっ、こう言う時のために我が力があると言う事を忘れたのですか?我が能力の「サーチ」を使えば一発でどこにあるかわかりますよ。」
「そうか、その手があったな!!流石リーダーだな。」
「良かったですねー大塚さん」
大塚は急に安心しきった顔になる。だが、問題が一つある。そのサーチ能力はあくまでもどこにあるのかを示す、いわゆるGPS的な役割を担っているわけだろ?ただ財布を落としただけなら良いのだが、もしも人為的な現象であるならばかなり面倒な事になる。
しかし、嫌な予感はよく当たるというのは本当らしいな。橋田がサーチを始めてからしばらくした時、あからさまに顔色が変わった。
「......あっ」
「どうした?橋田」
「これはまずいです。財布が動き回っています」
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