世界と私(俺)と ⑤

「ルミア、お前ぼっちなのか」


「ぼっちって言わないでよ・・・。」


ルミアは涙目になりながら俯く


「ご、ごめん。とりあえず話聞くから、なんで友達がいないんだ。」


さらに、泣きそうに・・・。


ひっく ひっく


訂正、泣いてしまったが泣きながら話をしてくれた。


「私、去年編入したんだけど

その時の編入生が私だけで、もうクラスはグループが出来てたのよ。」


「ん。でも編入生だったら、

なんだかんだでクラスメイトから声をかけられるんじゃないのか。」


向こうの世界にいた高校生の頃、自分も転校をしたことがある。その時の経験からなのだが、初日は色々な人が声をかけてくれたと思う。


「普通ならね、でも私は違ったのよ。」


「私は、クラウディア家の人間だから・・・。」


「クラウディア?暗殺一家何かなのか。」


なるほど、それなら誰も話かけないのは無理もない。きっと幼い頃から――。


ドン!バサッ!


ルミアはすごい勢いで机に手をつき、立ち上がる。


「あ、あなた、まさかとは思ったけどクラウディア家も知らないの?!」


「ああ、知らないよ。暗殺者じゃないとすると、武器商人の娘か何か?」


「武器商人、惜しいわね。ちょっと違うわ。」


座り直し、首にかかっていたペンダントをテーブルに置いた。


「私、いや私たち家族は代々、コレを作っているのよ」


「有名なアクセサリー会社かな」


「あなた、まさかコレも知らないの?」


「知らないよ!そういえばさっき魔法を使う時に持っていたな」


俺は、ふとあることを思い出す。


(そういえば、ルミアがさっき魔法を使った時詠唱していなかったな。

あの時は、確かこのペンダントをとって・・・。)


ペンダントをよーく観察してみると、宝石の内部に僅かながら、魔法陣らしきものが見えた。


「マジックアイテム?かな。」


「正解、と言いたいところだけど少し違うわ。私たちが作っているのはロッドと呼ばれるものでーー。」


そこで一旦話を中断した。

一呼吸置いて質問される


「そもそも、あなた魔法はわかるわよね・・・?」


「わかってるよ」


よかった。とルミアは話を続けようとするのだが、少し割り込ませてもらう。


「だけど」


「だけど。何かしら?」


「俺、魔法てか魔力ないから魔法使えないんだけど。」


「えっ???」


10秒ほど沈黙のち


「うそでしょぉぉおおおお!」


ルミアが絶叫した。


「嘘じゃない。俺は、魔法が使えないんだが・・・」


「そんなことあるわけなじゃない!!」


ルミアは声を荒げる。


「どんな人間だって魔力があるわ。個人差はあるけれど。魔力あるってことは、魔法が使えるの。」


「だから、その魔力がないんだよ。」


「えっ?!」


ルミアは驚きのあまり、声が出ないらしい。

泣いたり、叫んだり、黙ったりと忙しい奴だ。

今のうちに残りのサンドイッチも食べてしまおう。


もぐもぐ もぐもぐ ごくん


「サンドイッチ美味しかったよ。この、マスタードが特にいい味を出してた。」


「サンドイッチ美味しかった。じゃないわよ!魔力がない?なんで、そんな嘘をつくのよぉ」


嘘じゃないんだけど。

そう思いながらなぜ、ルミアがそこまで俺を信じないのか尋ねてみることにした。


「なぜ?なぜって、あなた私より魔力量が多いじゃない。」


「なんでわかるんだよ。」


「私の眼は生まれつき、魔力がみえるのよ。何故だか分からないけどね。私の眼には貴方から、ものすごい量の魔力が溢れ出している様に見えるけど。」


魔力と言われてもピンとこないが、どうやら前の姿男の時にはなかった魔力がこの姿だとあるらしい。


しかし、いくら魔力があっても・・・。


「どっちにしろ、使えないよ。誰にも魔法教わったことがないからな。」


「教わったことがない?!なんでよ。」


「何でって言われても。誰も教えてくれなかったんだからしょうがないだろ」


正確には、教えてくれなかったのではない。男の時に微塵も魔力がなかったので、教わる必要がなかったのだ。ルミアに言っても信じてもらえないだろう。


「いままで、どうしてきたのよ・・・。初等部の演習のカリキュラムも基礎魔法は・・・」


そこまで、言うとルミアははっとした。

俺はルミアの言いたいことがなんとなくわかってしまった。


「まさかとは、思うけど貴方」


「その、まさかだよ。」


「「学校にいったことがない」」



ルミアの顔から血の気が引いていく。さらに独り言をつぶやき始めた


「魔力量は私より多いから、問題ないとして問題は基礎的と応用、時間は限られているのに。まずは、現代魔法、古式まほ......。」



何やらブツブツとつぶやいているが最後の方は聞き取れなかった。


「別に、編入しなくてもいいよ。そもそも編入するとも言ってないぞ」


ドンっ!


またもや、ルミアが立ち上がる。

そして、人差し指を俺に向けながら


「分かったわ。特訓よ!」


俺も分かったことが1つある。


「そうと決まれば、部屋に戻って座学からね。」


コイツ、人の話を聞かないタイプの人間だ。

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