世界と私(俺)と

世界と私(俺)と ①

長い光のトンネルを抜けるとそこは、広い公園だった。

ブランコに滑り台、砂場のある、THE公園と言う感じの場所だ。


「戻って、来たのか・・・。」


いつもより視界が低い気がするが、気にせずにあたりを見回すと、遠くの方に高層ビルが見えた。アルデシヴェは高層ビルなど存在しなかった。と、いうことはー。


「戻ってこれた!!」


嬉しさのあまり、子供のように両手を挙げ飛び上がる。

ぽよん ぽよん


「痛っ!」


なぜだろう、胸のあたりに痛みを感じる。おそるおそる視線を、自分の胸へとおとす。そこには、脂肪の塊、つまりおっぱいがあった


「なんじゃこりゃぁー!」


とりあえず、揉んでみる。

ぷにっ。ぷにっ


「柔らかいし、気持ちいい。」


いや、こんなことをしている場合ではない。今度は自分の股間に手を伸ばす。触ってみると、そこにはあるべきはずのモノがない。


「ま、まさかとは思っていたが俺」


深呼吸


「女になってるんですけどっ!!」



10分後ーーー。


冷静になり自分の容姿を確認するため公園の公衆トイレへと向かう。そこで問題が起こった。


「どっちに、入ればいいのか」


そこには男性を示す、青のマーク。

女性を示す、赤のマークがある。


「今は女みたいだし、こっちでいいのか?」



少し考え、女子トイレに入る。

別に、女子トイレに入りたい願望があったわけではない。本当に!本当だぞ!


「あった!」



鏡を見つけ、自分を見る。

そこにはジャージ姿の顔立ちの整った少女が写っていた。

赤い瞳に、腰まで伸ばした銀髪。

何より驚いたのは、胸の大きさだ。


「これが、俺か・・・。」


声は、若干高くなったみたいだが元の声とあまり変わっていなかった。

そもそも、元の声が男にしては高かったので、よく女と間違えられることがあった。

身長は、かなり低くなっているみたいだ。鏡の位置が低く何とか腰まで写っているが、150cmあるかないかぐらいだろう。


「なんで、こんな姿に」


これでは、元の世界に戻ったのに家族に会えない。会えないわけではないのだが、こんな姿で会いに行っても、「あなた、誰?」となるに違いない。


「はぁー。」


考えても仕方ないので、とりあえず公衆トイレを出る。


「それにしても、ここはどこなんだろうか?」


確かに、アルデはないことは(高層ビルという文明的なものがあるので)分かるがそれ以上の情報が何にもなかった。


「公園を出て、散策するしかないな

日本ならいいけど、外国だったらやばいな。言葉通じるかな・・・。」


がさ


「ん?なんだ茂みの方から音が」


がさ がさ


それに、こっちに近づいて来ている様な気がするのだが。


がさ がさ がさっ


茂みから謎の物体が飛び出して来た。赤色でドロドロしている。


「スライムじゃねーか!」


なぜ?俺は戻って来たんじゃないのか。それともーー。


どか!

あれこれ考えていると、スライムから体当たりを食らった。


「この野郎、やりやがったな。スライムごときが俺に喧嘩売るなんて。バラバラに切り刻んでやる!」



刀を構えようと腰に手を当てる。

しかし、そこに刀はなかった。


「え、まじで?なんで。」


次の瞬間、スライムが体にまとわりついてきた。


「なんだよ!これぇ」


スライムの粘液は徐々に服を溶かしていく。しかも、動きがだんだんいやらしくなって。


「そこは、ダメ!絶対ダメ!」



スライムの触手(?)が下半身にふれる

ズボンは完全に溶けて残るは下着。


「あっ、ちゃんと下着は女ものなんだ・・・。」


「って、そんな場合じゃない!やばい。誰か助けて!」


ジタバタともがくが振り切れない。

いつの間にか、俺は瞳に涙を浮かべていた。


「童貞も捨てて無かったのに、女になって始めてを奪われるなんて」


どうとでもしてくれと、抵抗をやめると、粘液が下着を溶かし始めた。

気持ちいいのか、やっぱり初めては痛いのだろうか?

そんなことを考える。視界に何かが映る。女の子だろうか。


聖灯ライト




女の子が叫ぶと、次の瞬間にはスライムが消滅し、俺は地面へ落ちる。

あれは、魔法?

詠唱なしで発動させている様に見えたのだが。


「大丈夫?」


下着姿の俺に話しかけてくる。

なぜか、意識が朦朧として視界のピントが定まらない。


「ありがとう。助かった」


意識がどんどんと薄くなっていく。

薄れる意識の中、質問をする


「ここは、どこだ?」



「アルデオージュだけど」


アルデ?俺は日本に戻って来たのではなかったのか。

そもそも、アルデシヴェに高層ビルなど――。


そこで、意識が途絶える


「ちょっと、しっかりしてよ。何この熱!早く病院に!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る