第77話 国を統一する
兄と国王の話を聞いても、わたしには何の話か全く分からず困惑する一方だ。
後で、兄に詳しく聞かなくてはいけない。
アナスタシアが救世主ってどういうこと? でも、救世主じゃないなんて。
すると、アーサー国王がわたしとテオの方を見た。そして、陛下はわたしの額の宝石をじっと見ると、ふっと力を抜いてほほ笑んだ。
「バイロンの息子、テオドア皇太子。ルイスの娘、ミカエラ王女、あなた方二人が無事で本当に良かった。アナスタシアがミカエラ王女を探していると聞いた時は耳を疑ったが、娘が初めて自分で行動を起こし、初めてやりたいことを成し遂げた。誰もがあきらめていたことをアナスタシアは、あなた方が生きていることを信じて行動した。カッサスへ戻れば、きっとバイロンはすぐさま行動に移すだろう。しかし、幼い頃から生き延びてきたお二人ならきっと困難も乗り越えられると思う」
「陛下は、わたしの父と面識があるのですか?」
テオが尋ねると、アーサー国王は頷いた。
「わたしたちは幼いころからの友人であり、隣国同士だったために、お互いの国を行き来したものだ。その理由は、三国は同盟と同時に平和であるためだった。しかし、残念だが、バイロンは小さい頃から違った。彼と一緒に過ごす時間が増えるたびに、バイロンは考えているようだった。どうやって隣の国の領土を奪って拡げられるか、他国の民をどこまで制圧できるかなど、バイロンは幼い頃から人の上に立ち領土を拡げるかしか頭になかったのだ。彼の子どもにもそれが受け継がれ、結局、ゴーレという化け物を生み出し、言ってはならない国が頂点にたち、この国々を配下に置いて統一させようとしている」
「国を統一……?」
初めて聞く言葉だ。
どういう意味なのだろう。
「一つの国家が中心に立ち、すべてを支配しようと考えているようだが、無茶な話だ。しかし、夢物語だと笑い飛ばせる内容ではない。現に、我々も手も足も出ないところまできている」
言ってはいけない国は本当に盤石なのだろうか。
こんなにみんなが嫌がっているのに。
なぜ、みんな、嫌って言えないんだろう。
まだ、15歳のわたしなんかには考えもつかない何かがたくさんあるのだろう。
テオはぐっと口を噛みしめただけで、何も言わなかった。
わたしたちは知らないことが多すぎるのかもしれない。それから、陛下は、エドワードにも声をかけた。エドワードが、明日カッサスへ出発すると説明をすると、陛下は安堵したように頷いた。
「必要な物があれば言ってくれ。なんでも用意する。君たちが無事にカッサスへ到着することを願っている」
アーサー国王の顔を見ていると、本当はアナスタシアを手放したくないのだろうな、とわたしは思った。
陛下が退出して、兄とエドワードが出て行った。
わたしとテオはその後を追って出て行くと、テオがわたしの部屋の前で立ち止まった。
部屋に入る前にわたしに言った。
「ミア、またこれから旅が始まるな」
その言葉を聞いて、わたしは目を輝かせた。
もしかして、テオは思い出したのだろうか。
すると、テオは苦笑して首を振った。
「思い出したわけじゃないよ。ただ、これからの旅は今までと違う旅になる気がしたんだ」
わたしはテオの言葉に頷いた。
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