第46話 アメリアたちの帰還




 要塞に戻り、ソフィーたちが作ってくれた昼食を頂きながら、みんなの顔が生き生きとしているのを見て、わたしは嬉しかった。


 魔法を習うのが楽しい。

 そんな声が聞えてくる。


 みんなは昼食を済ませると、自分たちで見つけた魔法の本を夢中で読んでいた。

 そんな中わたしは、グレイスが早くケイン国へ帰りたがっていることを知り、自分のことばかり考えていて申し訳なかったと反省した。


 これからの魔法についてはジェイクに頼んで、わたしは兄であるジュリアン・リンジーに会ってみたいと思った。

 テオはどう思っているだろう。


 ふと、テオの方を見ると、彼はすぐにわたしの視線に気づいてそばに寄ってきた。


「ミア、どうした?」


 わたしはグレイスのことを話した。


「実は俺も気になっていたんだ」

「テオも一緒にケイン国へ来てくれる?」

「もちろんだ」


 テオが一緒に来てくれると聞いてほっとした。


「よかった」


 その時、わたしとテオは結界が解除される気配を感じて立ち上がった。


「どうされました?」

 

 すぐにグレイスがわたしたちの異変に気付いた。


「結界が解除された。もしかしたら、ジェイクが戻ってきたのかもしれない」


 テオが言って、わたしたちは南の森へと急いだ。

 案の定、ジェイクが二重でかけた結界が解かれていた。見ると、アメリア、ジェイク、そして、見たことのない男性が立っていた。わたしはすぐにその男性が、ジニア国の国王であると分かった。

 威厳のある佇まい。上等な布で作られた洋服、彼を取り巻く騎士たちで一目瞭然だった。

 グレイスがまっすぐ国王の元へ向かい膝を突いた。


「陛下」

「君がグレイスだね」


 ジニア国の国王は笑顔になり、ひざまずいたグレイスに手を差し出した。


「ありがとう。君には苦労をかけたね。ウォルターは幽閉した。奴の臣下も同等の罰を与えた。君には本当に感謝している。伝令を飛ばし、アーサー王には伝えておいた。これで、君の使命も完了だよ」


 いつも冷静なグレイスが涙ぐんでいた。そして、涙を拭いて小さく首を振った。


「ありがたきお言葉です。陛下。しかし、ミカエラ様とテオドア殿下を無事にケイン国へお連れする。あと少しの旅をつつがなく努め上げることが、わたくしの使命でございます」

「俺もできる限り尽力する」


 国王が頷いてグレイスを立たせる。


「叔父上、あ、違ったわ。スタンリー国王陛下。ここでの話し合いは危険だから中へ入りましょう」

「そうだな」


 わたしは、アメリアとスタンリー国王とのやり取りを見ながら、交渉は無事に成功したのだと思った。

 アメリアがわたしを見て、ニコッと笑った。

 その間、ジェイクが解除した結界を戻していた。


 ジニアから多くの兵士と騎士たちが要塞に入り、アメリアとジェイクが戻って来て、要塞の中は大勢の人で溢れかえった。


 テオがわたしの隣に立ち、こっそりと話しかけた。


「ミア、アメリアたちうまくいったみたいだな」

「ええ」


 わたしは隣に立つテオに少しドキドキしながら頷いた。


「ここを出ていくのね。もう、アメリアには会えないのかな」

「そんなことはないよ。平和になれば、みんなと会える頻度も多くなるはずだ」

「うん……」


 そうだ。前を向いて行かなくては。


「ミア、こっちへ来て」


 アメリアに呼ばれて、わたしたちはスタンリー国王に挨拶をした。


「スタンリー国王陛下はわたしたちの要求を受け入れてくれたわ。本当にありがとうございます。陛下」

「君たちが戻って来てくれて本当に嬉しいよ。アメリアがいなくなってから、ジニアは傾きかけていた。君たちはジニアを救ってくれた。本当に感謝している」


 スタンリー国王は、ウォルター殿下を止めることができなかった自分を責めていた。せめて、助けられるだけの人民を南の城へ匿っていたのだと言った。


「アメリアから詳しく話を聞いたよ。君は救世主なんだね」

「あの、わたしは救世主というより、ただのミアのほうがしっくりくるんです」

「ただのミア?」


 スタンリー国王が不思議そうな顔をする。そして、アメリアの顔を見てほほ笑んだ。


「君たちは何だか似ているな」


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