第47話 スタンリー国王の話



「アメリアは王女らしいところなんてないし。俺の兄もそうだったよ」


 スタンリー国王は昔をなつかしむような顔で言った。


「アメリアが召喚されていなくなってしまった後、兄のミハイルは流行り病で亡くなった。それから、俺が跡を継いだが、兄は平和を望む優しい人だった」


 アメリアがふと悲しそうな顔をしたが、すぐにパッと明るい声で言った。


「叔父上……。ミアたちの話を聞きましょ。二人は、ケイン国に戻らなくてはいけないし。私たちがいない間、ここはどうなっていたのか教えてくれる?」


 わたしとテオが今の状況を話すと、スタンリー国王は少し驚いた顔をして言った。


「兄の考えていたことと同じだ。ミハイルは国民たちに魔法を教えるつもりでいたんだ」

「そうだったのね……」


 アメリアが考え込む。


「ジェイク、あなたの意見は?」

「ああ。面白いと思う。それで? 状況はどうなっているんだ?」

「俺とミア、そして、グレイスとで残った方々に伝えられることは伝えました。あとは、ジェイクとアメリア姫に任せます」

「お前も言うようになったね」


 ジェイクが、テオの肩を軽く小突いた。

 テオが恥ずかしそうに笑う。すると、グレイスが静かに言った。


「ジニア国の方々はとても優秀です。我々がいなくとも、指導できる人材がたくさんおられます」

「それは頼もしいね。その者たちを呼んでくれるか?」


 スタンリー国王の言葉で、ジェニファー、アティカス、そして、ファビオとその他にも狩りに出た人や野草やハーブを採りに行った数名が呼ばれた。


「息子のウォルターが皆をひどい目に合わせてしまい、大変申し訳なかった。わたしの力不足でこのジニアを滅ぼすところだった。すまなかった」


 国王が頭を下げる。

 わたしは唖然としてそれを見ていた。もちろん、みんな驚いて手を横に振った。


「おやめください陛下。陛下だけが悪いんじゃありません」

「本当なら、国民に謝らなくてはいけないのだが……」


 そう言いかけてスタンリー国王は苦しそうな顔をしていたが、呼ばれた人々を見ながら、ジェニファーに目を止めると、アッと声を上げた。


「君は……、もしかして君の姓はガウリではないか?」


 ジェニファーは陛下に見つめられ、びくっとした。


「は、はいっ。陛下、わたしはジェニファー・ガウリです」


 その時、いつも元気いっぱいのジェニファーの顔が青ざめたのにわたしは気づいた。

 ジェニファーの手が震えている。


「国王様、わたしは……」


 スタンリー国王は、ジェニファーの様子を見てハッとした。


「執務室があるからそちらへ移動しよう。大丈夫、君が心配することは何もない」


 スタンリー国王は震えているジェニファーに優しく声をかけた。

 国王が歩きだし、みんなが続いて部屋を出た。後をついていくと、ジェニファーがわたしの腕にしがみついた。


「ミカエラ様、少しこうしていてもいいですか?」

「もちろんよ」


 わたしは、ジェニファーの肩を抱き寄せた。震えていた体から少しだけ力が抜ける。


「一緒にいるから」

「はい」


 ジェニファーは少しだけ微笑んだ。

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