第7話 魔法使いジェイク




「テオとお前は似ていないな」


 ジェイクは乾燥させたダンデライオンのった根を細かく挽きながら、出し抜けに呟いた。

 休憩中、ダンデライオンのハーブティーを作ろうとしていた。


「ダンデライオンは魔法の力を高めてくれる効果もあるんだ」


 それで、ダンデライオンを見つけてはその根っこを抜いて、乾燥させていたのね。魔法使いとあって、ジェイクは物知りだ。



 あれから、わたしとテオは、ジニアへ向かう一行に加わり旅を続けていた。

 空は常にゴーレが旋回していたが、回避する方法を知ってから襲われる心配はほとんどなくなった。しかし、進むにつれ、ゴーレに襲われて、焼け落ちた村は増える一方で、加わる人々も増えていた。


 しばらく大きな町はなく、その間もわたしはジェイクを師匠と呼んで、魔法を学んでいた。アメリアの言う通り、信じられないがわたしは魔法が使えた。



 ジェイクはいつも唐突だ。

 ぼんやりしていると聞き逃してしまい、三歳児であろうとも、聞いてない、と容赦ない。


「あい、ちちょー」

「ちちょーじゃなくて、師匠だ」


 ダンデライオンの根を細かくしてしまうと沸かしていたお湯をポットに注ぎ抽出し始めた。


「飲んでみるか?」


 進められて一口いただく。

 うん、根っこの味、と思いながら味わった。

 ジェイクも残りのティーをゆっくり飲みながら、


「それで、さっきの話だが。テオと本当にきょうだいなのか?」

 

 と、ストレートに聞いてくる。


「う……」


 返事に詰まる。

 わたしだってそれを知りたい。

 けれど、聞くのが怖かった。

 テオはまだわたしがドレンテであったことを知らない。話していなかった。

 テオの年齢ですら、まだ、知らないのだ。


「テオはガードがかたい。自分の話をしないからな。人を信用していないのか。身分を隠そうとしているんだろうな」

 

 初めて会った時、テオは、目的地ジニアがものすごく遠い場所であることを知っていた。つまり、地図を知っているということになる。

 そして、自分がいた場所も理解している。


 ミアに魔法が使えるという話をしても、あまり驚いていなかったし、ラテン語が読めると聞いても反応はあまりなかった。

 つまり、それらも理解していた、ということではないだろうか。


 テオとミアのお母さんが殺されたと言っていた。

 もし、二人がきょうだいでなければ、どちらの母が殺されたのかも、考えると胸が痛い。


 わたしはまだ、真実に向き合う準備ができていないのか。

 でも、テオに黙っているのは心苦しかった。

 嘘なんて、つきたくない。


「よる、きいちぇみまちゅ」

「そうか」


 ジェイクはうなずいて残りのハーブティーを飲み干した。


「さて、片付けをして出発するか」


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