ヒーローよりカレー

@ashbell__

ヒーローよりカレー

 もし俺がヒーローだったら...

 なんてことを時々考えるんだ。

 ヒーローになってたくさんの人を救うんだ。かっこいい能力を授かって、困っている人を見つけ次第助けるんだ。

 アンパンマンみたいにパンチ一つで敵を倒してしまうようなヒーロー。

 スパイダーマンみたいに蜘蛛の糸を巧みに操る、正体不明のヒーロー。

 そんなかっこいいヒーローになれたらいいなって考えちゃうんだ。


 でもさ、もし俺がそんな力を手に入れてしまったら、その力に溺れてしまうのかな。その力で誰かを傷つけてしまうのかな。だってさ、そんなすごい能力なんか手に入れて、本当に誰かの助けになるような立派な人になれないと思うんだ。自分の保身を考えて、お金が欲しくて、何もしたくなくて。見ず知らずの人のために、世界の平和のために、一生懸命になれないに決まってる。困っている人を助けたいとは思ってるし、戦争がなくなればとは思ってる。でも、思ってるだけだ。何もしてない。何もできてない。今日自分が楽することばかり考えてる。そうして次第に犯罪に手を染めてしまうのかな。特別な力を使えばだれにもバレずに悪いことができてしまうと考えて、実行しちゃうのかな。それでも結局は捕まって、やらなきゃよかったなんて思うだろうな。自分はそうはならないと思っても、自分のことを一番信用してはいけないって点では、一番信用できるから。

 

 それでさ、ほんとうに大事になのは、能力なんてなくても手に入るような、なんでもない毎日だった気づくんだ。家族や友達が一番大事だって思うんだ。


 そんなことになるくらいだったらさ、はじめっからカレーでも作っとけよって話だろ。

 カレーならさ誰も悲しい気持ちにならないだろ?

 俺も、もちろんみんなも。

 カレーのおいしそうな匂いならさ、みんなを笑顔にできる。

 ぐつぐつ煮込まれてる音だけで心が躍る。 

 ヒーローはもう悪いやつにやられた人たちを救えないと思うんだ。

 天災にはどうしようもないと思うんだ。


 でもさ、でもだよ?カレーならどう?

 

 カレーなら被害にあった人たちを笑顔にできる。元気にできる。少なくともその日一日を幸せにできる。

 しかも、そんな状況にない人たちも笑顔にできる。

 今日の給食。おなかのすかせた学生。薄給のサラリーマンたちの何でもない日が少しうれしい日になる。

 


 だからさ、ヒーローよりカレーの方がよっぽどヒーローしてるじゃん。

 

 はたから見たらたいしたことしてないように思うかもしれない。

 野菜と肉を切って、炒めて、煮込む。それだけ。

 けど、そのたいしたことないことに喜びを感じるんだ。それだけのことで頬っぺたが吊り上がってしょうがないんだ。

 カレーが僕達を助けてくれる。


 そう思うと、六日連続カレーでもおいしく感じる気がする。




 寿司くいてぇなぁ,,,



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒーローよりカレー @ashbell__

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ