第8話 初めての………
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよ〜」
引越しが終わって一週間前くらいたった
ここでの生活もだんだん慣れてきた
特に仕事がある訳でもないし
あの日以降SSDも外して寝てるし
何も問題は無い
「ヒロさんは?」
「まだ寝てるよ〜」
「ヒナ、起こしてきてくんねぇか」
このやり取りも慣れてきた
タキさんもハナさんも早起きだ
5時とかにはもう起きている
俺は6時に起きているが
問題がヒロさんだ
俺らが起こしに行かなかったたら
余裕で10時くらいまで寝てる
「起きてください!朝ですよ!」
「うーん、、ふぁい、」
すっごく眠そう
しかしこいつを使えば
「ヒロさん、眼鏡です」
「ん、ありがと」
眼鏡をかけた瞬間
スイッチが入ったようにキリッとする
眼鏡かけてなくてもキリッとしていて欲しい
「おはようございます皆さん」
「あっヒロくん起きた〜」
「お前は一人で起きれるようになれよ」
愚痴を言い合いながらも絶対的な信頼があるこの人達はすごく輝いて見える
(俺もこの人達と一緒に、、、)
って何考えてんだよ俺
別に俺は治安局から逃げれればいいんだよ
こんな犯罪者と一緒になんて、、
「ほら、全員席に着け。朝飯だ」
「はーい」
「準備がいいですね」
「運ぶの手伝います」
ここで生活するようになってなんだかんだで皆でご飯を食べる機会がある事に最近は思っている
朝と夜はほぼ確実に四人揃って食べる
昼は個人の予定とかがあるので一緒に食べる事は少ないが何回かは一緒に食べた
正直、犯罪者と食事とか考えると頭が痛い
けどこの三人とならいいかなって思ってしまう
「どうしたヒナ?口に合わなかったか?」
タキさんが心配そうな声で聞いてきた
そんなはずがないだろう
タキさんの作るご飯は超美味い
店出せるマジで!
「いえ!美味しいです。タキさんのご飯」
「そうか、それは良かった」
朝食を食べ終えたあと俺は地下の射撃訓練場に来ていた
もっと腕を磨いておかないと間違って殺してしまうかもしれない
そう思うとここに来て練習している
弾薬もタダじゃないからお財布が悲鳴あげてるけどそれでも後悔はしたくない
パァン! パァン!
「精が出ますね」
「ヒロさん」
「最近よくここに来てますよね」
「ヒロさんも?」
「えぇ、私には銃を扱うしかないので」
そういえばヒロさんはここにある全ての銃器が使えるんだっけ
「それにしてもヒナ、人形の足や手にしか
当たっていませんね」
「そこを狙っているので」
「なぜです?」
「それは、」
「人を殺したくないからですか?」
「分かりますよね」
「当然、しかし貴方が殺す気がなくても
向こうは貴方を殺す気できます。
生半可な覚悟では死にますよ」
そう言ってヒロさんは訓練場から出ていった
「分かってるわ、そのくらい」
ピロン!
メールが届いた
【柊真人くんへ至急社長室に来てくれ】
社長からのメールだった
なにやら緊急の案件のようだ
社長室に入るとタキさん達もいた
結構しっかり社長と話し込んでいる
「救援信号はこの辺りからですよね」
「ここら辺だと、セーフティハウスにいるかな?」
「そこまで行けてたら通信がくるだろ」
「何はともあれ非常事態なのは変わりない。君達には救援に向かってもらうよ」
なんだか物騒な話になってた
救援ってただ転んだとか、足くじいたとか
だよね?
「おっ来たか」
「社長!ヒナちゃんも行かせるつもりですか!?」
「ヒナはまだ実践に慣れていません。いきなり治安局は彼には無理です」
「そうだぜ!俺達だけでもどうにかできる!」
「ダメだ。経験がないだと?それなら今ここで経験を積め」
「でも!」
「ハナ、やめろ」
ヒロさんに言われてハナさんはそれ以上何も言わなくなった
「それじゃあ、すぐに救援に向かってもらうよ」
そうして俺達は社長室を出て救援信号が出た場所に向かった
「ヒナちゃん、あまり無理しないようにね」
「そうだぜ、絶対に俺達より前に出るなよ」
「貴方は見ているだけでいいですから」
三人が俺の心配をしている
なんとか安心させてあげないと
「大丈夫です。俺だって練習してますし」
そう言うと皆が少し笑ってくれた
目的地点付近には治安局がいた
ガチガチに武装した人達が大量にいる
何かを探しているようだった
そしてその人達の中で一際俺の目にとまった
人がいた
治安局局長一ノ瀬修が指揮を執っていた
「なんだ?アレ?」
タキさんがそう呟いた
タキさんの目線の先には普段見ない
謎の局員がいた
真っ黒のパワードスーツみたいなものを着ている
「なんでしょうアレ?」
「新しい人?」
「なんにせよ、用心することに越したことはないですね」
この周辺に救援信号を送ってきた本人がいるはずだがコレだと探すのは難しいし危険だ
「せめて詳しい位置が分かれば」
「ここまで近づけば特殊回線が繋がるだろ」
「そうですね。繋げてみましょう」
特殊、回線?
まだ俺の知らないものがあるのかよ
「そういやヒナに特殊回線のパス教えた?」
「私は教えてないよ」
「私もです」
「俺も教えた覚えないが」
・・・・
しばらく場が固まった
「致し方ありません。戻ってる時間もありませんし、このまま行きます」
「ごめんヒナ忘れてた俺達の責任だ」
「ヒナちゃんは私達の後に着いてきてね」
そんなのでいいのか、俺だけ状況が分からないのか
うん!無理!怖い!
「ご心配には及びません。
マスター、私にお任せ下さい。」
「NAVI!任せるってどういう?」
「特殊回線なるものを発見、侵入します。」
「どうした?」
「いや、ちょっと、」
「やっぱり一人だけ仲間はずれは寂しい?」
「そうではなくてですねハナさん」
「それでは一体どうしたのですか?」
「侵入完了。回線を繋げます。」
「いや、その特殊回線とやらに入れちゃいました」
「「「なんだってー!!!!」」」
そうなりますよね
俺も何で入れたか分からないし
というか最近NAVIが勝手に行動するんだけど
故障かな?
「そこに誰かいるのか!」
「ヤベッ見つかる」
咄嗟に身を隠す
しばらくすると局員がさっきまで俺達がいた所まで見回りに来た
「動かないでくださいね」
「分かってるって」
「にしても」
「せ、狭い」
急いで隠れたから場所は適当なとこだけど
四人でこれは狭い
「気のせいか。疲れてるのかな」
局員が離れてく
なんとかバレずに済んだようだ
とりあえず外に出て身体を伸ばす
「ホントに繋がってるし」
「なんでだろ?」
「まぁ好都合ですね」
とりあえずはこのままなんとかなりそう
俺達にはやらないといけないことがある
犯罪者達の手助けなんて本当はしたくないけどやらないといけないんだ
「通信繋げてみます」
「繋がってくれよ」
〈、、、だ、、、げろ、、、黒、、つけろ〉
「なんて?」
「よく聞こえないですね」
「近づくしかないか」
「NAVI、音声分析は?」
「申し訳ありません。分析不可です。」
俺達は通信を繋ぎながら辺りを捜索する
だんだん音質が良くなってきている
〈く、な、に、ろ、黒、、、、きをつ、ろ〉
「結構聞こえるようになりましたね」
「この辺りかな?」
「よく探すぞ」
治安局に見つからないようにじっくり探す
けどやっぱ邪魔が大きすぎる
「NAVI、音声分析できるか?」
「はい。マスター、分析します。
分析完了しました。表示します。」
【くるな、にげろ、黒いヤツに気をつけろ】
「逃げろ?どういう事だ」
「ヒナ!どけ!」
ヒロさんの声が響く
反射的にその場から離れると
バァン!
銃声が響き渡る
それとほぼ同時に俺の横でドサッと何かが倒れる音がした
確認するとソイツはさっき見た黒いヤツだった
(し、死んでる、のか?)
死んでるか確認しようと倒れた人に近づこうとした時
どこからともなくさっきと同じ黒いヤツが
三人やってきた
「皆さんどうします?」
「危険な予感がするから近づきたくないわ」
「でも四対三だ。まだ勝てる」
「はい、落ち着いていきましょう」
確かにこっちほうが人数的に有利だと思うが何か胸騒ぎがする
「私たち三人で奴らと戦います。ヒナはそれの援護を!」
「了解、、で、、す、」
「おいおい、マジかよ」
「嘘でしょ!?」
「これは、少々良くないですね」
さっき撃たれたやつが起き上がっている
普通撃たれたら動けないでしょ
そんな事はどうでもいい
とにかくまずい!これで四対四
人数差がなくなった
それでいて相手の情報が全くない
俗に言うピンチってやつだ
「構えろ。来るぞ!」
向こうから一斉にこっちに向かってくる
それに合わせてタキさん達が走り出す
そして三人とも拳銃を取り出して
相手に向かって発砲する
何発か直撃したが相手が怯む様子はない
「クソ!硬ぇ!」
「なんなのあれ!」
「皆さん散開してください」
三人が別々の方向へ逃げていった
それを追うように向こうも散開する
一方、俺はその場から動けずにいた
相手の一人が俺に向かって走ってくる
(やってやろうじゃないか)
「来い!真っ黒野郎!」
「マスター、サポートします。」
最初は右足からの蹴り
次は左拳、右拳
膝蹴り、、、
(よし、見えてる!このまま!)
次は右ストレート!
このタイミング、この角度!
カウンター!
ガゴッ!
(えっ硬!なにこれ、岩?)
「マスター!避けて!」
ゴズッ!
強烈な蹴りが腹にはいった
そのまま後ろに飛ばされ地面に横たわる
「ゴホッ!なんだこれ?血か?」
おそらく今俺は血を吐いた
吐血ってやつかな
ドラマとかアニメでしか見たことないな
初めての経験だそして最後の経験になるのかな
「おっと、あぶねぇ。すぐ後ろは死か」
もう後ろには下がれない
前には黒いヤツ
これは詰みかなホントに
「それでも、諦めないぞ」
ヤツが走ってくる
この状況からの打開策を考えないと
早く!早く!なにか思いつけ!
(ダメだ!間に合わない)
「やああああああ!」
横からハナさんがやつに向かって体当たりをした
体当たりされたヤツはそのまま落ちていった
下は見ないでおこう
「ハナさん!大丈夫ですか!」
聞いてはみたけど明らかに大丈夫ではない
身体中傷だらけで血が流れている
そんな状態でも俺を助けるなんて
「ハナさん!支えます」
「はやくここから離れないと皆死んじゃう」
ハナさんも十分危険な状態だ
早く治療しないといけないのに
「ホントに勘弁してくれ」
「ちゃんと殺したと思ったのに」
俺達の前にヤツがいる
そして後ろにもさっき落としたヤツがいる
「不死身かよコイツら!」
「逃げてヒナちゃん!」
そんな逃げる暇なくヤツらに捕まる
「ウグッ!く、、、首が、、、」
「ヒナちゃん!きゃぁ!」
ヤバい!息が!
何か、何かないか!
力が強すぎる離せない
身体に力が入らなくなる
抵抗する力も抜けてく
「ヒナちゃん!痛い!」
手を下ろした時、気付いた
これなら!どうにかできるかもしれない!
さっきコイツらが撃たれた時キズひとつつかなかった
それはこの装備のアホみたな硬さが原因だ
おそらく普通の拳銃弾だと防がれる
けど俺の銃はソレとは違う!
(くらえ!)
パァン!パァン!パァン!
ヤツの胴体に三発撃ち込んでやった
手が俺の首から離れる
「ゲホッ!ゲホゲホ!」
「ヒナちゃん!まだいるよ!」
ヒナさんを抑えてたヤツが俺の右腕を掴んで上にあげた
ゴキィ!
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
痛い!すげー痛い!
鳴った、腕から鳴っちゃいけない音が鳴った
銃も落としたし
このまま殺されるのか?
「ごめんねヒナちゃん。私が不甲斐ないせいで。でも安心して」
いつの間にかヒナさんが俺の銃を持って
ヤツの頭に銃口を向けていた
「死ね」
パァン!
「ヒナちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫、、、じゃあないです」
「これ使って折れた所を固定して」
そう言って服を一枚脱いで渡してくれた
汗と血で濡れて少し気持ち悪い
でも固定しないと
「他の人たちは?」
「お前ら無事か!」
「とりあえず合流出来ましたね」
ヒロさんとタキさんも怪我をしてはいるが
無事そうだ
「治安局の奴らがここに向かってきている」
「逃げますよ」
「救援信号を送ってきた人は?」
「おそらくもう死んでる」
「ほら、二人とも早く背中に乗れ!」
そのままタキさん達の背中に乗って
拠点に帰ってきた
そのまま医療部に治療を受けた
タキさんとヒロさんは軽傷で済んだけど
俺は右腕と肋骨の骨折、喉が少し壊れてるらしい
ハナさんは身体中傷だらけで出血多量で
危ない状態だったらしい
今日は医療部に泊まりらしい
………
……
…
「ここは?」
気づいたら真っ黒な世界に独り
いや二人、俺と俺?俺の背中が見える
「おい、誰だお前?」
「あ?何言ってるんだ俺?」
そう言ってこっちを振り返るソイツは紛れもない俺だった
そしてソイツの手には銃が握られていた
そして足元には血を流している何かがある
「お前!そいつを殺したのか?」
「お前?違うだろ俺。殺したのは俺だよ。そうだろ?」
「俺は!殺して」
「殺したさ!その赤い手を見てみろよ」
「えっ!?」
手を見てると
確かに俺の手は赤く汚れていた
そして手にはいつの間にか銃が握られている
「そんな!ホントに俺が!」
顔を上げると俺はいなかったその代わりに俺の足元に死体が血を流し続けていた
「ははは、ははははははははは!」
「殺した!俺が!殺したさ!俺が!うぅ!」
あぁあああああああああああああああ!!!
………
……
…
「あぁああああ!!」
知らない天井だ
「ヒナちゃん、どうしたの?」
包帯でぐるぐる巻きのハナさんが様子を見に来た
「ハナさん、、」
何故だか分からないけど涙が止まらない
情けなく泣いているとハナさんが胸を貸してくれた
「怖かったでしょ。いいよ泣いて」
そのままハナさんの胸の中で俺は泣き疲れて寝てしまった
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